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すばるの世界

 怒鳴り声。






 飛んでくる物。








 皿の割れる音。










 そして、血と痣の色――それが、すばるの世界だった。











 冬の冷たい風が窓の隙間から忍び込み、古い家の中に沈むような寒さを運んでくる。


 だが、その寒さよりも、家の中を支配するのは恐怖だった。


「お前は本当に何をやってもダメだ!」


 低い怒声が台所に響き渡る。


 その声の主は、すばるの父親だった。


 彼は怒りを抑えるどころか、逆にその感情をすばるに向けて発散するようだった。








「言っただろう!成績を上げろって!こんな簡単なことがどうしてできないんだ!」




 父親の手に握られていた皿が、すばるの目の前をかすめて壁に叩きつけられる。



 破片が床に散らばる音と、父親の荒い息遣いが耳を刺した。


 すばるは縮こまるように体を小さくし、ただその場に立ち尽くすことしかできなかった。






 その時、彼の前に立ちはだかったのは母親だった。


「やめて!この子は悪くないの!」


 母親の声は震えていたが、その背中は小さなすばるを守るように大きく見えた。


 父親は舌打ちをしながらも手を下ろし、荒々しい足音を立てて部屋を出ていった。



 しかしその代償として、母親はまた新たな痣を体に刻むことになる。




 すばるは何もできない自分が悔しくて、拳を強く握りしめた。





「ごめんなさい……僕のせいで……。」





「いいのよ。すばるは何も悪くないから。」





 母親は笑顔を作ろうとするが、その瞳はどこか遠くを見ていた。






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