2.0 『奴隷商』
ナーコも『貸奴隷』となった。
だが、俺のそれとは待遇がまるで違った。
個人部屋が与えられ、食事も栄養のあるものを、賃金はかなりの額が予定されている。
毎日、朝から晩まで『マナ』の扱いを勉強していた。
酒場の扉を開くと、ナーコは二人がけの小テーブルに座っているのが見えた。
黒く長い髪はそのままに、服はこちらの世界のものだろう。
肩を出し胸元の空いた光沢のある黒いブラウス、スリットの大きく入った長めの白いスカート。
――ちょっと露出多すぎないか? もしかして俺のために選んでくれたとか……? ついに俺の異世界生活が始まったか?
下心に顔をニヤつかせながら辺りを見渡す。
酒場は木製で温かい雰囲気、詰め込めば五十人程度は入れそうな賑やかな酒場。
よくアニメで見たような光景。
赤い髪を逆立て、筋肉を自慢するように上半身を裸にした、荒くれ冒険者風の男。
胸が大きく、革性のショートパンツで露出の多い、弓を担いだ青髪の女。
そんな憧れが眼前に広がり、みんな木製のジョッキを片手にバカ騒ぎしている。
――アイツらも奴隷か? 身元がハッキリしてるようには見えねーしなぁ……
ナーコが俺に気づいて笑顔で大きく手を振ってくる。
「あ! ハルタぁお疲れ~! こっちこっち! ここだよー!」
ナーコの席に向かって歩き、椅子にゆっくり腰を下ろす。
「お疲れさん、待った? 時間より少し早く来たつもりだけど」
「全然だよ、私が早めに終わっただけ! もーさぁ……つっかれちゃってさぁ……!」
ナーコはそうやって、椅子からダラっと両腕を垂らし愚痴を言う。
俺はそれを聞いて少し苛立った。
――なにが疲れただよ、お前は部屋で練習してただけだろ……こっちは臭い便槽の汲み取りを何時間もやってきたんだぞ……!
そんなドス黒い感情を押し殺して、笑顔を繕う。
「まぁ最初なんてそんなもんだろ! 素質あるって言われたんだし大丈夫だよ、ゆっくり行こーぜ! 俺なんて『無し人』だぜ?」
そうやって、自分の気持ちを誤魔化しつつ励ました。
俺はこういうやつだ、なんとなく相手が嫌がりそうな事を避ける。
なんとなく、相手が求めていそうな事を言う。
これがあの父親の暴力によって培われた、とてもじゃないが主人公に似つかわしくない性格。
ナーコはそれを聞いて不思議そうに掌を天井に向ける。
「素質かぁ……魔術の素質……そんなのホントにあるのかなぁ……」
掌を見つめながら、そうやって落ち込んだように呟いた。
――こんなナーコ珍しいな……。
そう思った俺は少し前のめりになって焦りを見せる。
「な、なんかあった……?」
俺は空気を読んで、気遣うように声のトーンを落とした。
ナーコは空元気を出すように笑いながら掌をクルクルと回しながら言った。
「いやぁ……アハハ~……出ないんだよねー……なーんにも!」
俺もその手を見やるが、ナーコの真意に気づけず質問を続けた。
「え……? 出ないってどういうこと? マナがあるんじゃなかったのか?」
ナーコが俺の言葉を受けて、手を下ろすと両手を突き出してこう言う。
「マナはね~、あるらしいんだよね~。でも魔術が出ないの、なーんにも出ない! 火も水も風も、な~んにも出ないんだ~」
この言葉で前の世界のゲーム設定が思い浮かび、腰が浮いた。
「それあれじゃないのか!? なんかこう……! 光とか闇とか! この世界では確認されてない属性とか! そういうやつ!」
ナーコも意図を理解してくれたんだろう。
笑みをこぼしたが、それはすぐに苦笑いに変わる。
「あはは! その気持ちわかるな~! 私も最初そう思ってさ~! でも違うみたい、マナが出てない。マナはあるけど出せない。よくいるらしいよ~そういう人」
俺は興奮して乗り出したがすぐに否定された。
『よくいる』ってのは俺達にとっては絶望的な言葉だ。
俺も『無し人』と最初に言われた時は、もしかしたら『虚無の力』とかそういうんじゃないかと期待した。
そして、俺は今後のナーコについての不安が過った。
「それ……どうなるんだ? そもそも最初っから高待遇じゃん、先生もついてさ! 投資されてるって事は放り出されたりはしないんだろ? リーベンさんからしたら損しかない!」
ナーコは言い出しづらそうに、少し俺から目線を外したが、優しく諭すような表情を見せて口を開く。
「まぁ~、ほら……もしマナが出なくても取り返せるらしいんだよ。ほらほらぁ……なんとな~くこの服見たら気づかない? 私は魔術が出来なくてもお金が稼げるみたい」
そう言いながら手を広げて、自分の服を見せた。
肩を出し、胸元が開いた、光沢のあるブラウス。
――娼婦か……!
「そ、そんなの……!! そんなの絶対にダメだッッッ!!!!」
俺は立ち上がり、大声でナーコを見て叫んでしまった。
椅子が勢いに負けて倒れて、大きな音を立てる。
全員が静まり返ってこちらを見ていた。
――そんなのダメだろう! そんなのって無いだろう! せっかくあの現実から解放されて、憧れていた『異世界』に来たっていうのに、そんなのあんまりだ!
俺はきっと恐い顔をしていたんだと思う、手が震えている。
嫌だった、ナーコにそんな仕事はさせたくなかった。
「ちょ……ちょっとハルタぁ……」
ナーコが周りを見て落ち着かせようと俺に声をかけたその時。
「どもーッッ!! おっつかれさまでーーーーッスぅ!!」
酒場の扉が音を立てて開き、静寂した空気に、元気の良い女の声が響き渡った。
目をやると、金髪の美少女がニッコニコの笑顔で片手を上げながら立っていた。
長い髪を左側だけ結んで、肩の前に垂らし、毛先が少し巻かれているサイドテール。
年齢は俺より少し下に見える、身長は小さく150センチぐらいだろうか?
ホルターネックにノースリーブの白いセーター、縦のラインが入って膨らんだ胸の大きさを強調している。
黒のミニスカートはフリルが大きくうねり、細い腰が際立つようなボリュームがあった。
少女は頭をポリポリかきながら、静まった酒場を見渡して呟く。
「あっれぇ? どーしたんスかぁ? この空気ぃ?」
その少女を、荒くれ冒険者風の男たちが手招きする。
「おいタロット……! こっちだ……! ちょっと来い……!」
タロットが荒くれ達の座っているカウンターに駆けていく。
「ちょーっとちょっとぉ……! なーにがあったんスかぁ……!」
飲み友達だろうか、仲がいいんだろう。
この子も奴隷なのか?
「いや俺達もわっかんねーよ……! 突然アイツが大声あげたんだ……!」
「へぇ~~~……痴話喧嘩ッスかねぇ……?」
小声でコソコソ話をしている。
――それ聞こえてんだよなぁ……!
突如、俺の胸を激痛が襲ってきた。
「痛゛ッッッて………!」
「ちょっ……ハルタどうしたの……!?」
立ったまま胸を押さえた俺を、ナーコが驚いたように心配してくれたが、その痛みはすぐに収まった。
そして周囲の異様な空気の一端が自分にあることに気づいた俺は、「ごめん……」とナーコに謝って椅子を直して座った。
「アハハ……いいよぉ! でも怒ってくれたのはちょっと嬉しかったかな~!」
両肘をテーブルに乗せて、俺を見ながらニヤニヤしてからかってくる。
逆に俺が元気づけられる始末だ、情けない。
周りがまたガヤガヤと活気を取り戻した。
俺達の席だけが重い空気を纏っている。
そんな中でも、声の大きい荒くれ風の冒険者とタロットの会話が聞こえてきた。
「ソコのにーちゃんは、最近この街に来た『無し人』らしいぜ! お前励まして来いよ! 『無し人タロット』!」
冒険者がタロットの小さい背中をバンバン叩く。
――あの子も『無し人』……? あんなに元気で友達もいるのに……?
そしてタロットの自信に満ちた声が聞こえる。
「ふっふーん、いいッスよ~? まっかせてくださいよ~!」
すぐに、コツコツと後ろから足音が近づいてきた。
――おいおいおいおい、マジか? マジで来るのかよ勘弁してくれよ……!
ナーコを見ると、目線はすでに俺の後ろに移っていた。
「おっふたっりさ~ん♪」
『無し人タロット』が俺の横からヒョコっと顔を出してきた。
面白いおもちゃを見つけたようなニヤケ顔でこっちを見やる。
金色の大きな瞳に吸い込まれそうな感覚になった。
――近い……! 近いって……! 顔が近いんだよ……! 顔ちっさ……! 目でっか……!
すぐに荒くれたちの声が聞こえた。
「おい……! アイツすげーなマジで行ったぞ……!」
――そう思うなら止めろって……!
タロットは当たり前のように近くの椅子を引いてくると、ニヤニヤ笑いながら俺たちのテーブルに肘をついた。
「な~に険悪な空気になっちゃってるッスかぁ? このタロットちゃんが相談のっちゃいますよ~?」
俺たちの空気お構いなしの物見遊山なテンションで聞いてくる。
俺は他人に話すわけにもいかず、目を逸らしながら謝った。
「いや……ごめんこっちの話だよ、空気悪くしたのも謝るよ……」
それでもタロットは引き下がらず、服を掴んでくる。
「え~! 教えてくださいよぉ! 誰にも言いませんからぁ♪」
駄々をこねるようなタロットに少し苛立ち、振り払おうとするが。
「だから関係ないって……!」
「ちょっとまってハルタ!」
ナーコがそんな俺を制止した。
「話してみよっか! なんかわかるかも!」
ナーコはにっこりと笑ってみせてそう言った。
それを聞いたタロットが笑顔になって目を輝かせている。
「あっは~♪ そーこなくっちゃ~! エルザさーん! こっちにジュール三杯よろしくッス~!」
酒の名前である事を察して、俺が止めようとしたが。
「あ、まって俺たち故郷では未成年で……」
「まぁまぁ、硬いこと言わないでくださいよぉ! もぉ! この国のお酒は十五歳からッスぅ♪」
そう言いながらニヤニヤと俺の肩に腕を乗せて、顔を近づけるタロット。
――だから顔が近いんだって……!
それを見たナーコが頬を緩めながら。
「いいんじゃないハルタ? わたしたちもこの国に馴染んでいこーよ! お酒って初めて飲むなぁ…….」
タロットに少し元気をもらったのか、ナーコは笑って『異世界』を受け入れていた。
◇ ◆ ◇
面倒にならない範囲で俺たちの事を話した。
『異世界』とかそういう話を曖昧にしつつ、俺が『無し人』ということ。
ナーコはマナが『上位』なのに魔術が出せないこと。
そして……このままあと五日間魔術が出せなかった場合……。
教育費がそのまま借金となり、娼婦として『売奴隷』にされることが、ナーコの口から初めて語られた。
――そうか借金……!!! ヤッドさんの言ってた事か……本当にやばいことになってたんだ……!!!
ナーコは俺の不安な表情を察したのか、補足するようにこう続けた。
「責任は私だよ? 『大部屋』の奴隷になるか、十日間教育受けて魔術を習うか選ぶ権利があったもん。ちゃんとリスクも説明されてた。私は魔術が使える事に賭けた、それが今なんだ〜」
――なるほど、リーベンが一概に悪いってわけでもないのか……
タロットはそこまで聞くと、テーブルに乗り出してナーコを覗き込んだ。
「ふーむふむふむ、なるほどッスね~! ほんとに出ないんスかぁ?」
ナーコは諦めたようにテーブルに手を置いて返事をする。
「出ないのよ~、ぜーんぜん出ない!」
「これっぽっちも?」
「うん、これっぽっちも」
「ふ~~~ん」
二人はそんな話をしていた。
でも俺は少し居心地が良かった。
俺はここに来てから『無し人』として扱われて辛かったが、今横にいるのは『無し人タロット』
元気にニッコニコ喋るこの子の存在が大きか感じた。
俺はなんとなく雑用して『異世界』で生きていくことを受け入れようとしていた。
だからなんというか、希望というか、『無し人タロット』という目標が出来た気がしたんだ。
そんな事を考えていると、タロットが一つの提案をして来た。
「ちょっとここでやってみてくださいよ、アタシに向けてでいいッスよぉ?」
それを聞いたナーコが不安げな表情になった。
「え、タロットちゃんに? それって危なくないのかな……?」
「へ? だって出ないんスよね?」
タロットの返事はもっともだった。
――そらそーだわな。
「でも万が一が……」
「ナコちゃんは優しッスね~! だいじょぶだいじょぶ~♪」
タロットはニッコニコしながら、ナーコの手を掴んで自分の胸に押し付けた。
弾力のありそうな胸に目がいってしまう。
「なーに見てんスかぁ?」
タロットはジトっと俺を見て責めてくる。
――しまったバレてたぁ……!
そしてナーコからの視線も突き刺さった。
「ハールータぁ?」
――こわいこわいこわいこわい!!!!
すぐに俺は話をそらすように苦笑いした。
「ま、まぁいいんじゃないか? 一回やってみたら?」
「うーん……ならちょっとだけ……」
「ふふーん♪」
タロットはニコニコしながら、急かすように掌を自分の乳房に押し付ける。
さすがのナーコも動揺して見えた。
――こんなの見ちゃうだろ……!! 俺のせいじゃない!!
ナーコが大きく息を吸い込んで
「ふんッッッ!!!!」
目をギュッとつぶってチカラを込めたように声を出す。
が、何も起きない。
ナーコの掌を自分の胸から離して、ジロジロと観察するタロット。
「そのままそのまま~? そのままッスよ~、そのままッス~♪」
身を乗り出すタロットを見ると、ノースリーブの背中が大きく開いていて、肩甲骨のラインがとても綺麗に映った。
なかなか終わらせてもらえないナーコも訝しんだ表情を浮かべている。
「まだ……かな……?」
「まだまだまだまだッス~♪ がんばれがんばれ~?」
ナーコは汗を垂らし、タロットはそんな顔を見て楽しんでいた。
俺もさすがに見ていられずにタロットを止めようとしたが……。
「お、おいもういいんじゃ……」
「まだ全然だめッス~♪ まだまだがんばるッス~、タロットちゃんを信じてくださいよぉ!」
ニッコリとこちらを微笑むと、暇そうに自分のサイドテールをクルクルいじっている。
「あ、そーいえばハルタローたちはもうヤッたんすかぁ?」
必死に頑張っているナーコをよそに関係ない話をするタロット。
あまりにも突拍子もない質問に苛立ちながらも答えた。
「いや……俺達はただの幼馴染だからそういうんじゃ……」
俺が少し引き気味になると後ろから荒くれのヤジが飛んでくる。
「おいタロットー! あんまりからかうんじゃねーよー!」
――そうだもっと言ってやれ!
タロットは頑張るナーコを無視して立ち上がると、冒険者たちと話し始めた。
「え~、いいじゃないッスか~! ここ酒場ッスよ? 色恋話楽しいじゃないッスかぁ~!」
「おいにーちゃん、テキトーにあしらっとけよ~! コイツ他人の事からかって楽しんでるだけだぞ~!」
突然話を振られて戸惑い、ナーコと冒険者たちを交互に見て相槌を打った。
「あ、あぁ……」
「ちがうッスよぉ! もぉ!」
タロットは冒険者たちに頬を膨らませている。
そしてナーコを見ると掌を突き出したまま汗だくになっていた。
それを見た俺は頭に血が上り、タロットに突っかかろうとしたが。
「おい、いい加減にッ……!」
「ハルタ大丈夫だから、私はタロットちゃんを信じるって決めた……! 出る……! こんなに言うなら絶対出る……!」
すぐにナーコに遮られる。
ナーコは息を切らせながら、このふざけた少女を信じると言った。
「じゃあせめて水飲んで……!」
ナーコに水を渡そうとすると、タロットがスッとそれを取り上げた。
「だめッス」
全く意味のわからないタロットに不信感を抱き、俺はナーコを止めた。
「なんで……なにが目的なんだよ……! もういいよ、ナーコやめよう……!」
「いい……! 信じる……! ここまで言うんだからぜったい出る……!」
それでもナーコは息も絶え絶え、タロットを信じると決意が固かった。
「わーい! ナコちゃんは偉いッスね~♪」
--さっきの奴が言ってた揶揄うってこのことか?
そう思った瞬間にナーコがバタッと倒れた。
テーブルに突っ伏して、椅子から崩れ落ちそうになっている。
期待に応えられなかったナーコが、タロットに申し訳無さそうに声を絞る。
「ごめんタロットちゃん……! もうムリ……ッ! やっぱりわたしは……ッ!」
そんなナーコをニヤニヤと見下ろしながら、新しいオモチャを買ってもらった子供のような声をあげる。
「あっは~♪」
「お前いい加減に……!」
俺の言葉を無視して、ニッコニコの笑顔で、テーブルに頬をつけ、突っ伏すナーコに覗き込んで話しかけ始めた。
「ナコちゃんムリっすか!? なにがムリッスかぁ!?」
「だから……マナを……」
「もう出せないんスかぁ?? もう出せないんスよねぇ???」
覗き込みながら息切れするナーコのほっぺたを、人差し指で凹ませるタロット。
「ならマナは出てたんスよぉ♪」
そこまで聞いてナーコも俺もようやく理解できた。
「タロットちゃん……も~……わかりづらいよぉ……」
ナーコはガックシとおでこをテーブルにつけた。
◇ ◆ ◇
「ん゛ん゛っ……!」
タロットは咳払いをすると、偉そうに人差し指を立てて続ける。
「つまり、マナが出せなくなったって事は『出てた』ってことッス!」
俺は頬杖をつき、タロットを見やって口を開く。
「あのさぁ、俺ほんとにお前のこと恨みそうだったぞ……」
タロットがその目線にはニッコニコの笑顔と返事で答えてくる。
「あっは~♪ ちゃ~んと悪役できてましたぁ? 得意なんスよ~?」
俺の肩に手を回してズイッと顔を寄せニヤリと笑った。
――だから近いんだよ……!
「でもこんなんじゃ出てないのと一緒じゃないの?」
ナーコは首を傾げながら聞いた。
そしてタロットは人差し指を立てて、マナについての説明を始める。
「んーっと~、マナには貯蔵量と放出量があるんスけど~。ナコちゃんの場合、貯蔵量は『上位』でも、放出量は『下位』なんスよね~、そんでこの放出量を広げるのが結構大変ッス」
「出来なくはないってことか?」
「はぁ……じゃあ順番に行くッスね~」
溜息をつくと、ものわかりの悪い生徒を相手する教師のような表情を浮かべた。
そしてナーコは元気を取り戻し、背筋を正して返事をした。
「はい先生!」
――そりゃそうなる、娼婦ギリギリで突如降って湧いた希望のタロット様だ。
タロット授業が再開した。
「貯蔵量が無い人は『無し人』、こればっかりはどうにもならないッス、無いものは無い。これはいいッスか?」
「はい先生……」
これに俺は肩を落とし返事をした。
横からナーコが「まぁまぁ」と背中をさすってくれる。
タロットは握り拳を作ると、自分のお腹に押し当てた。
「でも、例え貯蔵量が『下位』でも有るなら少しは増やせる、たくさん食べれば胃がおっきくなるのと同じッスね~♪ でも結構大変ッス」
この説明に、ナーコがテーブルに手をついてタロットに身を乗り出した。
「タロットちゃん! それとってもわかりやすい!」
「いや~♪」と照れ笑いをするタロット。
ほんとにわかりやすいから困る。
そしてタロットは掌を前に突き出した。
「そんで次に放出量、これは穴ッスかね~? これも開いてる人と開いてない人がいるんスよ」
俺はふと感じた疑問を投げかける。
「空いてない人も『無し人』なのか?」
「いやーそこまでじゃないッスけど~、開けるのは本当に大変っていうかぁ。うーん、よっぽどの何かが無いと開かないッスね~! 一生開かない人のが多いッス」
ニッコニコしながらタロットは、人差し指と親指で輪っかを作り、逆の人差し指でそこにズボズボと抜き差ししている。
――おいやめろそーゆーの!
そしてナーコも疑問を口にした。
「少しは穴が開いてれば大きくできるの? 私も『上位』の放出量になる?」
それを聞くと顎に手を置いて悩むそぶりをして答え始める。
「穴開けるのと似てるッスね〜、なんかこう……ドカーンッ! ってことがあったら広がるかもしんない、ってカンジ?」
『ってカンジ?』と首をかしげながら、自分のほっぺたをぷにっとつつくタロット。
――やめろそれ可愛いんだよ!
「まぁこっちはいいッスよ~、とにかくナコちゃんは練習方法が違う! マナを出す練習をしたところで、もう出てんだから意味ないッス!」
テーブルに乗り出し、ズイッと顔を近づけるタロットに、それを直視できずにナーコが照れる。
「ちょっ……タロットちゃん近いっ……! 顔ちっさい! 目がおっきい! うらやましい!」
――わかる、わかるぞナーコその気持ち!
「じゃあどんな練習したらいいんだよ?」
「なんて言ったらいいッスかね~……? あ、そうだアレク~!!」
タロットが立ち上がって冒険者たちの方を振り返る。
――あの荒くれ冒険者の名前アレクっていうのか……! 親のネーミングセンス良すぎるだろ……!
そんなどうでもいい事を思いながら荒くれアレクを見やると、火のついていない葉巻を咥えていた。
「はぁ? なんだよ?」
不機嫌そうなアレクにタロットが叫ぶ。
「あーッ! それそれぇ!! そのまま火をつけるッスよ~!!」
――そのまま火をつける……?
「はぁ? なんだようっせぇな! 言われなくても今つけるんだよ!」
舌打ちをしながらアレクが不機嫌そうに、人差し指からライターのように火を出した。
「フッ……!」と息を吹きかけて、かっこよく火を消すところまで忘れないアレク。
――ライター……そういうことか……!
「かーっこいいッスー!」
「そうだろう?」といった表情でニヤつくアレク。
「……タロットちゃん……私わかったかもしんない……!」
ナーコが真剣な面持ちでタロットをまっすぐ見た。
――ナーコも気づいた!!!
「おー! 物わかりいいッスね~ナコちゃーん♪ なんか出せそッスかぁ?」
ナーコは目をつぶって俺に手の平を向ける。
「風……風が出るかもしんない……わかんないけど……」
「いいッスねえ〜♪」
ナーコは目を瞑って、深呼吸し始める。
「スーーッ……」
すると掌の先が、ぼんやりと橙色に光り始めた。
だんだんとその光は指向性を持ち始め、俺に向かって放射状の光となった。
「光ってる!!! 光ってるよナーコ!!!!」
「風……風は……?」
「あ……あぁ……そうだな……!」
集中した表情のナーコの掌に顔を近づけてみる。
――……わからない……出てるのか? いや……出てる気がする……前髪が揺れてる……?
「出てる……のかな? なんか出てる気もするけど……タロットどうだ?」
自分が信用できない。
ナーコの掌をタロットに向けてみた。
--頼む……!! 頼む出てると言ってくれ頼む……!!
「…………あっは~♪ 出てるッス!! 少しあったかい風出てますよぉ!!」
タロットは扇風機に顔を向けるように口をあけて風を感じている。
――出てた!!! 出てた出てた出てた!!!!
俺は思わず両手をあげた。
「やっっっったぁぁぁーーーーーッッッ!!!!!」
――やっぱり出てた!!! きっとこの子が言うなら間違いない!!! 信じてよかった!!! この飄々とした美少女を信じてよかった!!! ナーコはカラダを売らなくて済む!!!
ナーコは目をウルウルさせながら俺たちを見て、掌を自分に向けて前髪を靡かせている。
「やった……………やった…………わたしの魔術……ッッ!!!」
「いや~良かったッスね~! ハルタローも! これでナコちゃんのカラダは綺麗なままッス~♪」
両手で顔を覆いながらグズグズと鼻水をすする音が聞こえる。
「や゛っだ……ッッ! ダロッドぢゃん゛……ハルダぁ……ッッ!!」
――良かった……本当によかった……! やっぱりナーコは素質あるんだ!! 俺のことはもういい!! とにかくナーコが助かった!!! 今はそれでいい!!
「これが下位のマナッス~♪ あとは『燃費』ッスけど~、こっちは練習できるし今は気にしなくていいッス~。もっと強くなるぞ〜くらいに思っときましょーぅ!」
「はい゛……先゛生゛ッッ……!」
ナーコは泣きながらタロットの手を握っている。
「タロットちゃんに気づいてもらえてよかった……!! 私の恩人だよぉ……!!」
タロットはナーコの手が離れるととんでもない事を言った。
「でもリーベンは気づいてるッスよ? アイツはそこまで馬鹿じゃないッス」
タロットは人差し指を立ててそう言うと、そのままナーコのほっぺたをまたプニプニつついた。
――は?????
「え? いやでも……でも先生にも出てないって言われたよ?」
「あっは~♪ ナコちゃんお人好しッスね~! 『出てないと言え』って言われてるんスよぉ! リーベンお抱えの講師なんだから当たり前じゃないッスかぁ~!」
「……タロットそれどういう意味だ?」
俺もわけがわからずタロットを見やる。
「っていうかぁ、たぶん放出量が『下位』だったら『出てないことにしてる』ッスね~」
タロットはナーコの頬を、そして自分の頬を交互につつき、柔らかさを比べながら笑う。
「ごめんタロットちゃん……わたし本当に意味がわかんないんだけど……」
「だってナコちゃん若くて可愛いじゃないッスかぁ♪ 『下位』の奴隷として抱えるよりも~、『娼婦』にしたほうが絶対に儲かるッスよぉ!」
「当たり前じゃん」と言わんばかりのテンションのタロット。
――そういうことか……!!!! 放出量が『中位』以上なら貸奴隷の契約を継続して、『下位』以下なら借金を理由に売ってしまえと……!!
「リーベン……! アイツ最低だ……!」
リーベン氏のニヤけ面が浮かんで、怒りに震えながら小さく呟いた。
するとタロットが俺の頬もプニッとつついて、こっちを覗く。
「別に最低じゃないッスよ~? リーベンは利益を最大に、損失を最小にしようとしただけッス~」
「いやでも……それにも限度があるだろう……」
「仮にウチが、ナコちゃんを最初に見つけてたとしても……」
口元に笑みを浮かべるタロットに、俺は背筋がゾクッとした。
――ウチが最初に見つけてたとしても……? 『ウチが』と言ったか……?
「きっとナコちゃんのカラダでお金儲けを企んだと思うッス~♪」
タロットは身を乗り出し、ナーコの顔を両手でブニュっと押しつぶし「そして……」と続ける。
「ウチならこんなとこでバレるようなヘマはしないッス~♪ リーベンもったいないッスね~、こんな可愛い子逃しちゃって~!」
横でナーコの頬をブニュブニュと潰してニコニコしている。
初めてこの子を怖いと思った。
「タロットちゃんのお家も……奴隷商してる……って事……?」
ひょっとこのように顔を潰されながら、ナーコが核心をつく。
「はぁい~♪ コリステン商会の『奴隷商タロット・コリステン』ッス~♪」
「そんで、俺らはコイツの奴隷だぜぇ~?」
横を見るとアレクがタロットの背中を叩き、笑いながら戻っていった。
――は……? こいつらがタロットの奴隷……? 友達……仲間みたいで……それなのに奴隷……?
「てゆーか明日の依頼渡しましたよねぇ?! あんまり飲み過ぎないでくださいよぉ!! もぉッ!!」
ズカズカと追いかけてアレクたちを叱りつけるタロット。
アレクたちは「大丈夫だ気にすんな!」とタロットをあしらう。
――あ……これだめだ……気持ちを抑制しなきゃダメだ……
俺はタロットとアレクたちを見て、唇を噛み締めて思う。
――ダメだ……これはダメだ妬んでしまう……あの臭い牢のような場所で……剥き出しの便所の横で……カビたパンの味を思い出してしまう……アイツらを羨ましいと思ってしまう……
「なんかさぁ、奴隷にこんな関係もあるんだね……ちょっと羨ましいかな~、アハハ……」
苦笑いのナーコがアレクたちを見ながらつぶやいた。
――ダメだよナーコ……認めちゃダメだ……何か探せ……『タロットの奴隷じゃなくて良かった』と思える材料を探せ……! そうだ……
「でも…でもアイツ……!! アイツもナーコを娼婦にしてたって……!!」
これしかなかった。
『タロットの奴隷じゃなくて良かった』と思える材料はこれしかなかった。
「もーハルタぁ? そういうもんなんだよきっと! タロットちゃんは悪くない! 私はタロットちゃんに助けられた! 私はそれでいいと思う!」
タロットが奴隷たちをガミガミ叱りつけているのを見ながら、ナーコがそう言った。
――ムリだ……羨ましい羨ましい羨ましい……俺もあそこに入りたい……ダメか? 俺とナーコもそこに入っちゃだめか? 与えられた依頼をあいつらとこなして……そんで夜にここで騒いで……タロットがギャーギャー文句言ってくるのを見て……笑っていちゃダメか……? きっと楽しい……なぁタロット……俺たちじゃダメか……?
「じゃーあたしは帰るッス~♪」
タロットがアレクたちと別れてこっちに来る。
そして横にちょこんとしゃがみ、俺の太ももをペシッと叩く。
――イヤだ……まだ別れたくない……
「これからは気をつけるんスよ~? あ、ナコちゃん! アタシがアドバイスした事、リーベンに言っちゃダメッスからね~!」
――嫌だ……行かないでくれ……救ってくれ……
「そんな事言わないよ~! でもホンットに感謝してる! 恩人だよ! タロットちゃんは!」
しゃがむタロットの頭をナーコが撫でる。
「あっは~♪ 照れるッスね~! あ、お二人さんはデートとかしないんスか?」
しゃがんでいるタロットが、子犬のようにナーコを見上げて尋ねる。
「デートっていうかわかんないけど……明日ハルタとこの辺ブラブラしようと思ってるよ~! どっかいいとこあるかなぁ?」
――そうだ……! 明日!! 明日お前も一緒にどうだ!? いいだろう! 仲良くなれた! きっと楽しい……!
「おおー! いいッスねぇ!! ここの近くに噴水があるんスよ! 明日は露天市で、お店がたくさん並ぶッス~! けっこー楽しいと思うッスよ~!」
「へ~! 楽しそう! ねぇハルタぁ! 明日そこ行ってみようよ!!」
「あ……あぁ……そうだな……そうしよう……」
ナーコを見る俺の顔は、笑顔が作れていなかったと思う。
――とにかく次の!! 次の約束を!! 俺たちを救えるのはお前しかいないんだ……!! 明日!! 明日明日明日……!!!
「なぁ……タロット……お前は明日……何してるんだ……?」
自分でもぎこちないと思った。
不自然な笑顔になっているのがわかる。
「え……ハルタぁ……? 明日は二人で出かけようって……」
ナーコが不安そうにこっちを見る。
明るい空気が一気に重くなった。
「え? えっと~……?」
タロットは気まずい空気になっている俺たちを交互に見てくる。
「あ、あはは……えっと~……あ、そーだ! あたし明日は商談があるんスよ~! ウチは商会ッスからね~! ふっふーん、いろ~んな儲け話があるんスよ~?」
スッと立ちあがり、ヒソヒソ話のような素振りで俺たちに嘯いてくる。
おどけるように、場の空気を取り持つように。
「んじゃっっ!!」
タロットは何を言われそうになっているか、敏感に感じ取っていたんだと思う。
そそくさとその場を立ち去ろうとした時、俺はタロットの服の裾を掴んでいた。
「あのさタロット……ちょっと待ってくれ……」
「あっはは~……どっ……どーしたんスかぁ……?」
「ちょっと!! ねぇハルタどうしたの!!」
タロットは苦笑いを浮かべながら振り返る。
ナーコは俺を疑っている。
俺がワガママを言おうとしているのが見て取れたのだろう。
でも俺はタロットを呼び止めた、我慢が出来なかった。
――縋りたい……押さえきれない……こんな状況で……タロットとアレクたちの関係を見せつけられてしまったら……望んでしまう……あの関係を望んでしまう……!! 俺は悪くない……こんなのしょうがない……しょうがないじゃないか……!!!
「これから言うのはさ……その……俺のワガママなんだけどさ……」
「な……なんスかぁ~……?」
タロットの顔が見れない、多分めんどくさそうな顔をしている。
いやコイツはそれを表に出さないんだろうな。
自分の声が小さくなる。
周りにこんな惨めな自分を認識させたくない。
後ろで騒ぐアレクたちに気づかれたくない。
「俺たちをさ……その……お前んとこの奴隷にしてもらうことは……できないのか……?」
――きっと俺は今ひどく情けない顔してる……涙が出そうになってる……眉が下がってる……媚びるような顔してる……
「なに言って……!!! ハルタやめてよ!!!! なに言ってんの!? 謝って!!」
「い……いやいやいやいや謝らなくていいッスよぉ……! そんでちょっと、ちょっと待ってほしいッス……!! ウチは商会がメインなんスよ! 奴隷業はそこまで大きくないんスぅ……!!」
「ほら、ね?ハルタぁ」
――二人を困らせてる……タロットを……そしてナーコまで……でもナーコなら……ナーコだけなら……!!!
「ナーコだけなら……ッ! 俺は……俺は『無し人』だからアレだけどさ……ほら、ナーコだけなら……どうなんだ……? 魔術の素質があるんだろ……?」
「ねぇハルタいいって!! わたしはこれ以上をタロットちゃんに望まない!! それにハルタと一緒がいい!! だからお願い!! そういうのやめて!! タロットちゃんを困らせないで!!」
ナーコが身を乗り出して声をあげる。
「あの……いや~……ここでウチが誘ったら引き抜きッスよ~……ナコちゃんのマナの一件を理由にしたら……まぁいけない事もないんスけど~……」
「それなら……ッッ!!!」
俺は微かな希望にすがって顔をあげてタロットを見たが、タロットは気まずそうに頬をポリポリしていた。
「でも……さっきも言った通りウチも同じようなことはしてるんス……それを理由にナコちゃん引き抜いちゃうとぉ……なんていうかこう……グレーゾーンが崩れちゃうんス……あえて曖昧にボカしてた部分がクッキリしちゃうっていうか……都合の良い解釈が出来なくなっちゃうんスよぉ……」
――あぁ、この子は大人だ。
「『じゃあお前のこれもおかしいだろー!』みたいな感じが増長しちゃうッス……『それならラインはしっかり定めましょー!』ってなると……たぶんみんな商売がやりづらくなるんスよぉ……申し訳ないッスぅ……」
タロットがペコリと頭を下げた。
――この子は小さいのに、とても大人だ。
「そうだな……ごめん……俺のワガママだ。忘れてくれ……」
「ホントにごめんね! あと、今日はホントにありがとう!! タロットちゃん!!」
俺は諦めてタロットの服を離し、ナーコは一緒に謝ってくれた。
「も、もちろんッスよ~!! 縁があったらまた会いましょー!!」
タロットが颯爽と会計をして、扉を出ようとしたその時。
「おいタロット! ネロズに気ぃつけろよ~! オマエ気ぃ強ぇクセに弱ぇんだよ!!」
ネロズ……?
アレクがそうやってタロットを送り出す。
タロットの足がピタっと止まる。
「はぁ~? 今なんて言いましたぁ~?」
ゆっくり振り返ってアレクたちを睨みつける。
「弱っちょれぇっつってんだよ~!!」
アレクは声が通るように、手を口に添えてからかった。
「もぉーッ!! うっさーいッ!! 弱っちょろくないッス~ッ!!!」
怒ったタロットに奴隷たちがガハハと笑う。
「ふんっ!」とタロットは酒場から出ていった。
――最後の最後までやめてくれ……耳障りなんだよ……
「わたしたちもそろそろ行こう?」
「そ、そうだな……」
ナーコに手を引かれながら、アレク達に会釈して会計に向かう。
「なんかわからんが、魔術使えてよかったなー! また来いよ~!」
「いやアンタの店じゃないじゃん!」
騒ぐアレクに弓を担いだ女がツッコミを入れる。
会計はタロットが済ませていた。
――あぁもう……本当に情け無い……
◇ ◆ ◇
ナーコを送った帰り、男と肩がぶつかった。
「おっとォ、すまない余所見をしていてねェ」
「あぁ、いや……こっちこそ……ごめん……」
――デカいな、2メートルはあるんじゃないか?
「君ィ……不思議なカラダをしているなァ」
「そうか……? あぁ『無し人』だから……そういう表現もあるのかもしれない……」
――腕に入れ墨? タトゥーか?
「おいおいそういう蔑称はさァ、ボクは好きじゃないんだァ」
「あ、ごめ……気に障ったよな……」
「いいさァ大丈夫、君は特別だァ。ボクととてもよく似ている」
「いや……俺の友達がソレなんだよきっと……お前もかもしんないけどさ……ごめん、変な話聞かせた」
「あ、そォだ、北の門を知らないかァ?」
「あ、あぁ……あっちに酒場があるからさ、そこの大通り歩けば……」
――――――
「じゃァまた会おウ、期待しているよハルタロウ」
「あぁ……じゃあまた……」
ナーコを送って大部屋に戻ると、門限を大幅に過ぎていた。
リーベン氏に怒られ、無理を言って牢を開けてもらった。
一度目ということで、罰金を見逃してもらえたのが救いだった。
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