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第2話;カンのいいお姫様は…大好きなんだよなぁ

リージャ視点

1.カンのいいお姫様は…

 「サラマンダーを追い払ったぞ~!」

 あたしは誇らしげに鬨の声を上げた。

 それに応じて騎士団員、発掘作業に関与している学者たちが歓声を上げた。

 「よくやったぞ~!」

 「すごいぞぉ!」

 歓声を上げる皆に手を振り、あたしは誇らしい気持ちでいっぱいだった。

 誰かのために戦うことは結構気持ちいい。

 (もっともっと歓声を浴びていたい…)

 海賊をしていたときも、傭兵稼業に転じたときも、あたしが戦う理由はそうだった。

 (誰かに褒められたい。)

 悪事でも正義でもどっちでもいい。

 とにかくただ褒められたい、ただ、それだけだった。


 

 「リージャ!」

 そんな喝采を浴びているときに、お姫様の声が聞こえてきた。

 「おぉ!お姫様!

 まぁ仕留め損なったから追加料金はあとでもいい…」

 「ちょっと来なさい!」

 そう言ってお姫様はあたしの腕をぐいっと掴み、引っ張った。

 「おいっ!なんだよ、おいっ!」

 戸惑うあたしをよそに、お姫様は自分の寝所にあたしを連れ込んだ。

 「…」

 お姫様は肩で息をしながら…あたしのことを睨んでいた。

 「なんで怒ってんの?」

 「怒りもします!

 倒せるというから、なにか魔術でも使って確実に仕留めるのかと思いきや体術一辺倒だなんて!」 

 その言葉にあたしはぎょっとした。

 体術でしかないことを見抜かれたからだ。

 「おまけにあんな…あんな手柄を見せつけるような戦い方をするだなんて!

 いつか命を落としますよ!」

 「あぁ、心配してくれてんだ」

 あたしは敢えて混ぜっ返すように、挑発的な言葉ではぐらかそうとした…が、予想に反して姫様は顔を真赤にした。

 「それはそうと…! 

 あなた、この星の人間ではないですね?」

 「…カンがいいね」

 まぁ来るだろうと思っていた質問だから、あたしはさっきよりは落ち着いて答えた。

 「体術だけであんなジャンプをできるのは、鍛錬どうこうではないでしょうからね。

 この星よりもずっと重い重力環境下で生活してきた。

 違いますか?」

 反論の余地はない。

 「…沈黙は肯定と受け取ります。

 で、あなたは別の星から…なんの目的で来たのですか?」

 正直答えにくい質問だけど、あたしは言葉を繰り出そうと頭を捻った。


2.隠していた秘密を簡単に見抜いちゃって…、、

 「信じてくれないだろうけど…、あたしは確かに別の星の人間だ。

 それどころか、異世界から来た」

 「え…?」

 予想通りの反応が返ってくる。

 「まぁ、信じてくれない話続きだろうけど、あたしは元々、宇宙海賊だった」

 「海賊…?」

 お姫様が身を固くするのがわかった。

 「元だよ、元。

 足も洗ったし、抜けてからは…まぁ罪滅ぼしにもならないだろうけど、海賊を退治する側に回ったよ」

 言い訳にもならないんだけど、と心のなかで付け加える。

 「で、そんな感じで退治する側に回ったわけだけど…裏切り者に厳しいのはどこもおんなじでさ。

 追われることもあるわけ。

 で追い詰められた果に…」

 「世界を超えた?」

 「違う。

 親切な…『猫』に超えさせてもらった。

 「…猫?」

 「人の言葉を喋ってる猫だったよ。

 自分のことは『招き猫』って言ってた」

 「…『招き猫』ですか」

 「信じてくれないのも無理ないだろうけど…」

 「いえ、その言葉で信じられる話になりました」

 今度はあたしが驚く番だった。


3.その上、気が強くって、

 「我々の世界…我が国以外にもある、という意味なんですけれど、『危機に瀕する前、その滅びに抗うために必要な人材を異世界から招き入れる猫がいる』というのがあります」

 「へぇ。

 じゃああの猫は…神様みたいなもん?」

 「いえ、あくまでも招き入れることしかできないのです。

 その人材が見込まれた働きをするかは、その人物次第です」

 「結構いい加減だなぁ…」

 招いてくれなかったら今頃、ブラックホールの中でペッチャンコになっていたのに、いないのをいいことに好き勝手なことを言ってしまう。

 「実際、極稀にですが、招き入れたもの…私たちは『招かれし者』と呼んでいますが、『招かれし者』が世界を救うも、元いた王を追い出し、国を乗っ取った事例もあります」

 あたしは思わず、ヒューと口笛を鳴らしてしまった。

 「じゃあ、あたしも頑張ったらこの国を乗っ取れるのかな?」

 「…その気があるのですか?」

 軽口を叩いていたら睨まれた。

 「あるって言ったら…」

 「私も仮にも王族です」

 そういうが早いか、お姫様は傍にあった細身の剣―レイピアを抜いていた。

 「王族は国家国民のため、良き治世を続けるために存続する義務があるのです」

 それまで無邪気に遺跡を見ていた姫様とは違う表情が、そこにはあった。


4.冗談も通じなくって、

 「あなたがとても強くて、あなたに国を明け渡すことが国家国民のためになるのであるならば、私も明け渡すことに同意しましょう。

 ですが…」

 そこでお姫様―アルターシャは言葉を切った。

 「今日のあなたの戦い方を見ていると、あなたの戦い方は無謀すぎて、とてもではありませんが国を明け渡すわけにはいきません」

 凛とした、吸い込まれそうな、鋭い視線に思わずあたしは息を呑む。

 無謀な戦い方をしたことは事実だし、何も言い返せやしない。

 「…本気で言ってるわけ無いじゃん」

 そう言ってごまかそうとするも、まだ視線は鋭い。

 「冗句にしてはたちが悪いですね」

 「なんでさ」

 「あなたには…この世界を救う力がある、ないし、それを手に入れる資格があるからですよ。

 それをもってすれば…」

 「国は乗っ取れるって?

 そんな野心はないよ」

 苦笑いを浮かべつつ、あたしは否定しようとする。

 「そうでしょうか?

 あなたの中には野心の芽生えがあるように思います」

 「野心の芽生え?」

 「『喝采を浴びるために戦いたい』…これは民のために政治を行い、民に喜んでもらいたい、という心とそんなに変わらないように思います」

 あたしはその言葉に頭の中でぐるぐると想像をめぐらしてみた。

 とてもじゃないけど政治なんてまだるっこしいこと、向いてるとは思えない。

  

5.でもそれでも…

 「とりあえず、この場では冗句として聞き流しましょう」

 アルターシャから漂っていた殺気が消えたことにあたしは安堵した。

 体術だけならアルターシャを押さえつけることはできる。

 でも魔術をわずかでも使えるアルターシャには勝てっこない。

 「あなたが『招かれし者』だということも、私限りのことで留め置きます」

 レイピアを元の位置に戻しつつ、アルターシャは続ける。

 「その代わり…。

 私の近衛騎士になる気はありませんか?」

 なかなかの爆弾をぶっ込んできた。

 「…それも冗談だよね?」

 作り笑いを貼り付けてなんとか続ける。

 「いいえ。

 あなたの活躍、評価させてもらってのことです」

 「さっき、あんなボロクソに言ってたのに!?」

 「もちろん、先程の戦い方は近衛騎士に召し抱えるには不適当です。

 ですので、近衛騎士になるための訓練は受けてもらい、戦い方の『矯正』は受けてもらいます」

 「いやなんでそこまでしてあたしを召し抱えようとすんの!?」

 思わず知らず、声のボリュームが上がる。

6.大好きなんだよなぁ

 「……だからですよ」

 あたしの大声にビビったのか、反比例してアルターシャの声がか細くなる。

 「なんだって?」

 「ほ、放っておけないからですよ!」

 「は?」

 どういうことか理解が追いつかない。

 「だ、だから放っておけないからですよ!

 私の命の恩人なのに、この世界を救う義務があるっていうのに、いつ死んでもおかしくないような、あんな無謀な戦い方をしていて、放っておけないからですよ!

 そ、それと…」

 「なに?」

 言葉の前半は理解できたけど、後半が続かないのであたしはちょっと怪訝な顔で続きを促した。

 「…あなたを見ていると、胸の動悸が収まらないんです」

 「何が言いたいのかさっぱりわからないんだけど」

 あたしのせいで胸の動悸が収まらないってんなら、さっさとどっかにやりゃいい、とも思うけど、表情を覗き込んで見れば恋する乙女、って顔ではある。

 だけど、そんなはずはない。

 一応、身分の違いは厳然としてあるわけだし、だいたい…あたしたちは同性だし。

 「皆まで言わすのですか?

 よろしい。

 覚悟を持って聞きなさい」

 精いっぱい虚勢を張って、アルターシャは続けた。

 「わ、私はあなたに恋をしてしまったようなんです!」

 声を発する直前、アルターシャの頬には一筋の涙が浮かんでいた。

 きっといろんなことを考えたんだろうな、とあたしは合点する。

 近衛騎士に召し抱えるって口実だって、今、必死になってこしらえたものだろう。

 恋愛経験値は高くないあたしでも、そんなことくらいはわかる。

 (あぁ、やっぱりあたし、この姫様が大好きだわ)

 あたしはそんな事を考えながら、口をパクパクさせるだけだった。

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