招き猫との出会い
リージャ視点の話
第0話;招き猫との出会い。
「あぁっ!クソっ!しつこいやつらだ!」
あたしは星の宇宙を縦横無尽に逃げ回りながら、小型突撃艇の中で毒づいた。
すでに一週間の逃亡劇、非常食料も底を突き、もはや戦うこともできそうにない。
頭の中には「降伏」の2文字も浮かぶが、相手はただ攻撃を繰り返すだけで、その選択肢を取らせてくれそうにない。
「まぁ…好き勝手やってきたしなぁ」
流石に人生の終わりを考えたあたしは、鳴り響く警報音に思考を中断した。
「ブラックホール地帯か…」
ここで全力で突っ込めば、運が良ければ追手は追跡を諦める。
ただ…それはかなり分の悪い賭けでもありそうだ。
「でもここに賭けるしかないんだなっ!」
あたしはフルスロットルでその宙域に突っ込んだ。
《ねぇ、君、まだ生きていたいかい?》
不意に頭の中に声が響く。
「どこの誰だっ!操縦の邪魔すんな!」
テレパシーだと当たりをつけ、大声で怒鳴る。
《君が助かる方法を提示してあげようかと思ってるんだけど、やめようか?》
「…ほんとにしてくれんのか?」
半信半疑で問い返す。
《君がまだ生きていたいと願うなら、ね》
「あぁ、生きたいよ!」
やりたいこともない、人生を賭けるつもりだった復讐への熱意もない。
それでも…
「まだ未来を見たいんだっ!誰かに未来を見せてやる手伝いがしたいんだっ!」
《良いだろう》
声の主がモニターに姿を見せる。
「猫…?」
《いかにも僕は猫だ。
ただ、いわば「世界をまたいでヒトを招く招き猫」だけどね》
「…」
信じられない状況に頭が追いつかない。
「あたしはどうすればいい」
だけど自然に言葉は出た。
《僕にすべてを任せてくれ》
猫がそういった瞬間、突撃艇ごとあたしは光に包まれた。