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チートトーナメント  作者: 掘削名人
予選リーグ
6/22

第1グルーブ第2試合

「う、うーん。」


 ルートは、ゆっくりと目を開けた。どうやら、意識が戻ったようだ。ルートの視界には、見たこともないような天井が映っている。


「ここは、どこだ?」


「おう、意識が戻ったか。」


 ルートの右側から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。ルートが右へと視界を移すと、そこには、ベッドに横たわっている、先程対戦したオートがいた。


「こ、ここは、どこなんだ?」


「どうやら、医務室らしいぜ。」


「医務室?」


「ああ、そうだ。意識を失った俺達は、どうやらこの医務室に運ばれたらしいぜ。そして、回復アイテムを使い、俺達の傷を全回復させたらしい。それで、意識が戻るまで、このベッドに寝ていた、というわけさ。」


「そ、そうなのか。」


 そう言いながらルートは、手探りで自分の左肩を確認すると、確かに傷が塞がっていた。だが、痛みまではとれていないようだ。


「ははっ。痛むだろう。どうやら、回復アイテムは、先に外傷から直っていくらしいぜ。神経等の回復は、ある程度時間差があるらしい。だから、痛みがとれるまで、俺は、このベッドにいる、というわけさ。」


「そ、そうなのか。」


 ルートは、オートの態度に圧倒されていた。先程まで命をかけて戦っていたというのに、この態度はなんなのだろうか?まるで、友人と話をしているかのような、オートの態度は、そんな雰囲気だったのだ。


「ど、どうして、そんな気軽に俺に話しかけるんだ?」


「どうして、って、俺とお前は敵同士じゃないだろう?」


「敵同士じゃないって、さっきまで戦っていたんだぞ?命をかけて。」


「それは、さっきまでだろう。今は、違う。それに、次、もし敵同士になるのなら、それは、トーナメントを勝ち抜いてからだ。だから、今は、敵じゃあない。」


「そういうものなのか?」


「ああ、そういうものだ。」


「それはそうとして、なぜ、そう思うんだ?」


「それは、お前が残忍な奴じゃないって思ったからだ。」


「残忍じや、ない?」


「ああ、そうだ。お前のスキルの詳細は分からないが、お前が、俺の右腕を潰した時にそう思ったんだ。」


「?」


「お前、その気になれば、俺の全身すべて、潰すことができたんじゃないのか?」


 オートの質問通りだった。ルートのスキル「距離なし」を使えば、視界に入る物すべて握りつぶすことは可能なのだ。それ即ち、ルートは、追い詰められながらも、相手を殺そうとは考えていなかったということになる。だからこそ、オートは、ルートの事を信用したのだった。


「確かに、そう言われればそうだな。一矢報いることしか考えていなかったよ。気付かなかった。」


「気付かなかったって、お前。なんなんだよそれ。」


「命拾いしたな。」


 ルートが軽く冗談を言ったことで、医務室の中には、暫く二人の笑い声が響いていた。


「ああ、挨拶が遅れたな。俺は、オート。出身世界は、ファイルだ。」


「あ、ああっ。俺は、ルート。出身世界はフィストだ。」


「なあ、ルート。暫くは俺達は敵じゃなくなるからな。俺のスキルを教えてもいいぜ。」


 ルートはぎょっとした。自分のスキルを知られる、ということは、少なからずも対戦する時に不利になる。なぜ、そんなことをするのだろう。今後、また、対戦する事があるかもしれないのに。


「ははっ。警戒しなくていい。俺のスキルが知られたところで、俺の強さは変わらねえから。」


「そうなのか?」


「ああ、そうだ。俺のスキルは、「グングニル」っていうんだ。」


「グングニル?グングニルって、まさか、あの、神話の?」


「ああ、そうだよ。その、グングニルだ。俺の右手には、そのグングニルの力が宿っているんだ。グングニルと言えば、百発百中の槍。だから、俺が右手を突き出せば、それは、距離無制限の百発百中の無敵の槍となるんだ。今まで、この右手で貫けなかったものはない。」


 オートのスキルは、衝撃的な物だった。グングニルとは、まさに、神の力。そんな力を右手に宿しているとは。まともにぶつかったのでは、人間ごときの力では跳ね返されるだけ。ルートは、そんなオートのスキルを知って冷や汗をかいていた。もし、オートが残忍な考えの持ち主だったのなら、とうに命を落としていただろう。そんなオートに対し、ルートは少なからず尊敬の念を抱いていた。だからこそ、自分のスキルについてもオートに教える、と考えた。


「ああ、スキルを教えてくれてありがとう。俺のスキルも、教えるよ。」


「いいのか?」


「ああ。俺のスキルは、「距離なし」だ。」


「距離なし?」


「ああ、そうだ。距離の概念がなくなるんだ。」


「距離の概念がなくなる?なんだ、そりゃ?」


「ああ、そうなるよな。初めて聞くと、わけわからないだろ。」


「ああ、意味が分からん。」


「距離の概念がなくなるってことは、そのままだ。俺の行動全てが、距離無関係になる。つまり、視界に入ってさえすれば、それ全て触れることができるし、そこに一瞬で移動することができる。」


「し、視界に入るもの、全て、だと?」


「ああ、そうだ。」


「な、なんちゅうスキルだよ。だから、俺の右腕を潰せたのか。」


「まあな。」


「すげえスキルだな。」


「そっちこそ。」


 二人の会話は、暫く続いた。



-----------



ルートとオートが医務室に運ばれてからも、対戦は行われていた。


『さあ、さきほと対戦は激戦でしたね。それでは、続いて、第1グルーブ第2試合を行います。

 バルト、出身世界ワーク対、

 クロス、出身世界イーレです。』


 試合開始の合図と共に、先に動いたのは、クロスだった。クロスのスピードは凄まじく、10mほどあった二人の距離は、瞬時に縮まっていく。


「うりゃっ。」


 距離をつめたクロスは、短刀で切りかかった。だが、短刀を持つ右手の動きが、完全に途中で止まった。


「な、なんだと?」


 クロス、状況が理解できず、何度も何度も短刀で切りかかるも、全て、剣筋が途中で止まってしまう。動きを封じられているわけでもないのに、なぜか、一定以上の距離まで届かないのだ。これは、バルトのスキルによるものなのだ。バルトは、遮断、というスキルを持っている。このスキルは、自分と対象の間を必ず遮断する、というもの。つまりは、絶対防御、ということなのだ。その事に、直感的に察したクロスは、一旦バックステップをし、距離と取った。その動きを見て、バルトは不適に微笑んだ。


「ふん。いいのか?それしきの距離の取り方で。」


「な、なんだと?」


 そうクロスが言った瞬間、クロスの体が大きな物と衝突したかのように後ろに吹き飛んだ。


「がはっ。、な、何が起こった?」


「ふははっ。俺のスキルを、ただの防御だと思うな。それだけでは、俺を攻略したことにはならない。」


 吹き飛んでいくクロスを追うように、一直線状に、3m幅の砂煙が近付いていく。これも、バルトのスキル「遮断」によるもの。遮断するための間の距離を伸ばして伸ばしていくことにより、防御だけでなく、遮断を攻撃として利用することができるのだった。遮断のスキルと壁を利用した圧殺。これが、バルトがよく利用する攻撃手段だった。

 壁際まで追い詰められたクロス。砂煙がクロスのすぐそばまで近付いた瞬間だった。


「くっ。仕方ないか。」


 クロスがそう呟いた直後、先程までと比べて比べ物にならないような速度で、クロスはそれを回避した。


「な、なに?」


 とんでもないスピードで攻撃を回避したクロスに驚くバルト。なお、クロスのスピードは衰えることなく、一瞬にしてバルトの背後に回り込む。そのまま、クロスは、バルトに切りかかるが、やはり、途中でクロスの攻撃は止まってしまう。それでもクロスは、高速で移動し、別の角度から切りかかる。何度も何度も、クロスは、高速で移動し切りかかる。だが、その全ての攻撃は、バルトに届くことはなかった。


「無駄だ。そんなことで、俺の防御を崩すことは不可能だ。」


「ふん。それなら、なぜ、さっき俺が速度をあげたことに驚いたんだ。」


「ふん。それがどうした?誰だって、あんな速度を見せられたら驚くだろう。」


「ふん。どうだか。」


「いい加減、諦めたらどうだ?お前の攻撃は、俺には届かない。」


「それは、やってみなければ分からないだろう。」


「諦めの悪い奴だな。」


「ふん。どうだか。まさか、あれが俺のマックススピードだと思っているのか?」


「なに?」


「お前が予想以上に強いものだから、温存していても仕方ない。これからは、ちょっと本気を出すとしよう。」


「なんだと。」


 会話を終えると、またもやクロスは高速で動き出した。だが、先程までとは違い、クロスのスピードがどんどんと上がっていく。


「な、なに?」


 加速していくスピードにだんだんと目で追えなくなっていくバルト。


「そ、そんな、早すぎる。こんなこと。人間に可能なのか。」


 バルトがそういっている間に、既に、バルトの胸には、クロスの短刀が刺さっていた。バルトが自分でも気付く前に勝負は終わっていたのだ。その場に倒れこむバルト。


『おおっと。バルトが優勢かと思いきや、一瞬にしてクロスの逆転勝ちだー。とんでもないスピードでクロスが勝利をもぎとったー。』


 第1グルーブ第2試合は、クロスの勝利で幕を閉じた。


 これにより、第1グルーブは、4人全員が1試合を終えて、

 クロス1勝、ルートとオートが1分、バルト1敗、となった。まだまだ、全員に1位のかのうせいがある。

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