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王家の真・裏事情

「すべての始まりは、今のアーサー国王に王家の血が一滴も流れていないこと。そこから皆が必死で王家に王統を戻そうと足掻いているのです」

「え?」


 まったく想像もしていなかった話だった。

 これまで元平民の母親を持っていることがコンプレックスだったサンドローザは、更に上回る情報に思考がフリーズしかけた。


「嘘でしょ……」

「いいえ、事実です。ですが王族の血は引いていなくても陛下は王太子時代からとても優秀でした。しかも貴重な火と水の二属性持ち。その血だけは残したかった王家は真実を隠したまま即位させたのです」


 そして娶った女性は平民だが光の魔力持ちで聖女に認定されていた。

 今、彼らの一人娘であるサンドローザには、父親のアーサー国王の二属性魔力と、母親の光の魔力の因子を両方持っていることになる。


 たとえ、サンドローザ本人が火の魔力しか持っていなかったとしても、彼女が産む子供に二属性や光の魔力が受け継がれる可能性は高かった。




 そこからヒューレットが語ったのは、現国王アーサーの苦しみだった。


 先王が幼少期の病で子種を失っていることに気づかず、なかなか子供を授かれず追い詰められていた先王妃が、密かに国王と同じ金髪青目の貴族と通じて生まれたのがアーサー王太子である。


 周囲はそれを知って、王家の親戚の娘をアーサーの婚約者に据えることで何とか取り繕おうしたが、当時どの親戚にも年齢の合う娘がいなかった。


 アーサーは王族なら持っているはずの魔力属性として、光も闇も持っていなかった。

 そこに、光の魔力持ちの平民の特待性ロゼットと出会う。


 更に、四属性持ちの才女にして聖女を輩出するパラディオ伯爵家出身のカタリナ。エスティアの亡母だ。


 そして子爵家でありながら、当時プリズム王国で最も強い魔力と才能に恵まれていたモリスン子爵令息テレンス。彼はエスティアの父。


「……この国、本当は王の子供が次の王とは限らなくて、王族の中で一番魔力の強い次世代が王になる慣例なのよね」

「ええ。ですから王位継承権のあるものの中で最も強かったテレンス様が筆頭でした。けれど王族の血を持たないアーサー王太子の存在が問題をややこしくしていた」


 それにテレンスの実家、モリスン子爵家は王家の遠縁とはいえ下級貴族の子爵家だった。


「陛下は学生時代、王家の派閥争いから守るためテレンス殿をご自身の世話役に指名されました。すると二人は」

「恋愛関係になった?」


 スマホ版『乙女☆プリズム夢の王国』のBLルートでは、彼らのそのような関係が示唆されていた。


 だが、ヒューレットは苦笑して否定した。


「いいえ、そのような事実はなかったと聞いています。仲は良かったそうですけどね。……でも、アーサー様もテレンス様も美しい方たちですからね。反王太子派からアーサー王太子は少年愛好家の男色家だと噂を広められて、頭を抱えておられたようです」


(うーん……既成事実がないなら、BLっていう? 今どきならブロマンス止まりってやつ? でも還暦越えたヒナコ先生が原作を書いた時代って、そういう〝匂わせ〟程度の同性愛ものが流行ったって聞いたことあるかも)




「ですって。どうなんです? エスティア嬢のお父様?」

「プライバシーの侵害になる質問は却下だ、ノーコメント! だいたい誰なんだお前、見ない顔だが!?」

「山の中で遭難してた旅人です。魔法剣士で好きな食べ物はサーモンパイ」

「好物の前に名乗れ青二歳!」

「ははは。あなた、敵か味方かわからないからなあ」


 ちなみにここアヴァロン山脈には川や泉もあるのだが、現在地からは遠い。

 サーモンこと鮭は残念ながらどちらにもいなかった。


「まあ冗談はともかく。隣の彼の話をまとめると、この国の王家は王統の血筋を取り戻したい」


 手頃な岩に腰掛けて地面に相関図を描いていたヨシュアが話をまとめた。


「ああ。王家の正統モリスン子爵家は王家との縁を切りたい。この二勢力がエスティアたちの世代にまで影を落としているってことだな」


 細かいところはカーティスが補足した。

 テレンスやアルフォートも否定しない。


「面倒なことをやったもんだ。本家で血筋が断絶してそれが王家なら、もう新王朝を立てるしかないよ」


 それでも血筋にこだわるなら、更に数代かけて王族の血を持つ家臣たちと政略結婚して血を取り戻していくしかない。


 もっと穏やかな方法もあっただろうに、とヨシュアは嘆息した。


「これ、山を降りた後のほうが君たち大変なんじゃない? まあよそ者のオレには関係ないんだけどさ」


 隣の空間ではまだサンドローザ王女とヒューレットの会話が続いている。




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