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竜殺しの魔法剣士

 気軽に引き受けたヨシュアが各自に魔法剣を創ってくれると言うので、それから休憩になりそうな木陰で魔剣の作成に入った。


 セドリックやカーティス、ヒューレットらは自前の剣と同じサイズとデザインのものを作成し、それぞれ自分の属性魔力を充填させた。

 

 エスティアは元々、風の魔力頼りで武器を持って戦うことは滅多にない。

 携帯しやすい短剣にしてもらった。


 鞘をどうしようか考えていると、不要だと言われた。


「持ち運ぶのは大変だから、使わないときは自分の魔力に戻しておくんだ。使うときは魔法剣を意識すればいい」

「魔力で武器を作れる術にも驚いたけど」

「魔力に戻したり出したりもできるのか……」


 魔法文化の違いには驚かされる。


「この国、別に鎖国なんかしてるわけじゃないんだろ? 国外の魔法書を取り寄せてみたら?」


 ヨシュアの助言に全員が頷いた。




 その後は全員でヨシュアの魔法剣に一種類だけでなく、同時に複数の魔力を込める実験を行ってみた。

 今、何の素材や触媒も無い状態で一度に込められるのは二属性までと判明した。


「風と土の相性が良いってのは、まあお熱いことで」


 幼馴染みで遠慮のないカーティスに揶揄われて、エスティアは恥ずかしい思いをした。

 ちらりと横目で見ると、セドリックも頬のあたりが少し赤い。


「あれ? え? 二人ってそういう?」


 ヨシュアがエスティアとセドリックを交互に見て、カーティスやヒューレットも分け知り顔で笑っていることに気づいて納得顔になった。


「吹き荒れる嵐を大地が受け止めるってことだよな」

「お似合いだと私も昔から思ってました」

「もう! カーティス、ヒューレット君も! 揶揄わないで!」


 この調子で弄られては敵わない。エスティアはセドリックの腕を引いて少し離れたところで休憩することにした。




 エスティアたちがいなくなった後で、ヨシュアは彼女とセドリックの関係を簡単に聞かされることになった。


「へええ。元々両想いなのに父親に引き裂かれて別の男と婚約。その婚約者は結婚式当日に別の女とベッドイン? 彼、惚れた女がそんな目に遭ってよく正気でいられるね」


 自分だったら相手を地の底まで追い詰めてスライスするけど、と怖いことを言っている。


「男のほうに事情があったみたいなんだが、まあ、その。セドリックもいろいろ面倒な野郎なんだよ」


 思いのほかディープな話を聞かされたものの、ヨシュアは興味津々で二人の話に聞き入った。

 エスティアはともかく、セドリックの出自の不安定さには気の毒そうな顔になったが、特にコメントはしなかった。


「で、彼女の婚約者を寝取ったのが、そっちの彼の婚約者のはずの王女様、と。すごいね。国家規模の大醜聞じゃないか」

「ええ、まあ」


 ヒューレットは言葉少なに頷いた。


「まあすべては帰ってからだ。まずは黒竜と聖杯だな」


 ヒューレットが示した山頂付近には巨大な黒いドラゴンが時折空を飛んで旋回している。


「珍しいね。羽竜の一種であんなに黒いのはオレも初めて見る。個体の大きさとしても最大級だ」


 黒いドラゴンは鱗の代わりに羽が生えていて、その羽が漆黒に染まっている。


「ドラゴンと対峙したことがあるのですか?」

「故郷で親戚が穏やかな竜種を随獣にしてたんだ。……まあ、オレは〝竜殺し〟だからあんまり懐いてはくれなかったけど」

「「竜殺し!?」」


 それは英雄級の称号ではないか。


「学生時代、学校の敷地内に侵入してきた個体がいて。もおお死にものぐるいで魔法剣を投げまくって何とか倒せた感じ」

「そりゃあ、また」


 よく生きてたな? とカーティスが顔を引きつらせた。

 ドラゴンは人間よりずっと大きな種が多い。

 聞けば、ヨシュアが倒したドラゴンも当時の彼の何十倍もの巨体だったそうだ。


「近くに好きな子がいてさ。守らなきゃだし、格好いいとこ見せたくて。自分の実力以上に力を使いすぎて、倒した後は自分が倒れちゃったんだけどね」

「うん。間違いない。お前こそが英雄だ」

「ええ。男として必要な勇気を出したと思います。恥じることはありません」


 一気にこの麗しの男への親近感が増した。

 外見が日常離れした美しさで取っ付きにくいかと思っていたが、表面的かもしれないが案外サバサバして話しやすい男だった。




「ところでこの山には師匠に放り込まれてるんだ。金髪で黒い魔女ローブ姿の悪い魔女だよ。見なかったかい?」

「今のところ、他国の人間はあんただけだな。連絡手段はないのか?」

「……そのための術をマスターする修行中だったんだけど……」


 術の習得が向かないようで、業を煮やした師匠の魔女に「覚えるまで返してあげない」と言われて大事な宝物を奪われてしまったらしい。


「好きな子から預かった大切な大切なものだったのに」

「それは気の毒だと思いますけど……」

「悪いがこっちの用事のほうが急用だ。山を出られるとこまで案内するのはその後になっちまう」


 釘を刺されてヨシュアは頷いた。先を急ぎたいのは確かだが今はエスティアたち一行に同行して助力したほうが良い。


「わかった。竜を倒して聖杯を確保、ついでにあの二人をくっつければいいんだね?」


 クエスト難易度ランクはAプラスほどだろうか。腕が鳴る。





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