絶滅種より ~絶滅種からのお願い~
私は大実神の使わしめ、オミ。ニホンオオカミです。犲、山犬とも書きますね。何れも、ニホンオオカミの別称です。
山野にいる野犬の俗称でもありますが、私はノラでは御座いません。由緒正しい“使わしめ”です。
断じて、ワンコなどではない! イヌ科だけど。尾をご覧下さい。
コホン、失礼致しました。もう暫く、お付き合いください。未熟犲ですが、宜しくお願い申し上げます。
かつてニホンオオカミは畑を荒らす獣を退治することから、『大口の真神』『大神』と称えられて居りました。
けれど18世紀。西洋から狂犬病が齎されると、ニホンオオカミは病気を運ぶ獣と考えられ、各地で捕殺されるように。
明治時代になりますと、私たちニホンオオカミの退治に、賞金が出されるようになりました。称えられていたのに、退治? オカシイですよね。
畑なんて荒らしません。家畜は、美味しく頂いたかも・・・・・・。頂きました、すいません。お腹が空いていたんです。生きるために狩りました。
でも、ですよ。日本の皆さん、私たちを食べませんよね。殺犲ですよ! お巡りさん、助けて。
・・・・・・話を戻しましょう。なぜ私たちに懸けられた賞金が上がったのか。
ジステンパーです。
犬、殊に幼犬の冒される急性伝染病が大流行したことにより、多くのニホンオオカミが死んでしまい、ほとんど見られなくなったのです。
そのため値段が高騰し、猟師たちにとって我々は、貴重な獲物となりました。
1905年、1月。寒い日のことです。一匹のニホンオオカミが猟師に狙われ、森の中を逃げ回って居りました。そして、猟師が仕掛けた罠に。
ガッチリと足に食い込む罠、お腹はペコペコ。逃げ出す力など残っておらず、・・・・・・絶滅しました。
絶滅とは、滅ぼし絶やすこと。絶え滅びること。
原因はいくつか御座います。自然現象で環境が大きく変わり、絶滅したのなら、生き物が進化する可能性が御座います。しかし、人間の活動により絶滅した場合、新しい環境を作り出さないため、進化は起こりません。
つまり、種や仲間を根絶やしにするダケなのです。
皆さま。快適な環境で生活を送りたいと願うのは、仕方ありません。人の欲は底なし。もっと、もっとと求めた結果、進化したのですから。
けれど今一度、冷静に御考えください。本当に、それで良いのですか。絶滅させられた我らは、根絶やしにされるような悪い事、しましたか?
1768年に絶滅した、ステラーカイギュウさん。1844年に絶滅した、オオウミガラスさん。1905年に絶滅した、ニホンオオカミ。1914年に絶滅した、リョコウバトさん。
金になるからと乱獲され、我々は滅びました。二度と再び、生まれません。数が多いから大丈夫、これくらい何でもない? いいえ、違います。
人とは恐ろしい生き物です。食べるためでは無く、楽しみながら命を奪うのですから。
対象が獣から、他に変わる事も。
見た目が違う、性質が違う、出身地が違う。それダケで異質なモノだと決めつけて迫害、排除しようとするなんて、愚かしい行いだと思いませんか?
人は弱く、脆い。カンタンに衰え弱り、死を選ぶ。
武器は凶器や鈍器、言葉ダケではアリマセン。文字、筆でも殺せるのです。
世界規模のコンピュター・ネットワークが構築され、全世界を網羅するネットワークに生長。電子メール・情報の検索など、さまざまに利用。
中にはニセモノも。
正しい事だと思い込み、広めたソレが虚偽だった。軽い気持ちで書き込んだソレが、受け手を追い込み自殺させた。
『死ぬコト無いだろう』『真に受けるなよ』『いい迷惑だ』などナド。面と向かって、遺族に言えますか。
よく知らない相手だから、気に入らないからと執拗な攻撃を仕掛けるのが正義? 冗談じゃない。寝言は寝て言え。
人一人の後ろには家族、親族、友人知人が居るのです。上辺だけで判断し、その真意を確かめもせず追い込み、殺して良いワケが無い。
指先だけで殺せるのです。指先だけで、奪えるのです。その情報は正確ですか? どこの誰が、いつ、どこで発表したのでしょう。
客観的に評価されたモノですか。主観に基づくモノでは有りませんか。冷静に考えてください。
奪って良い命など、存在しません。
動物も植物も生き物です。ホモ・サピエンスなんて言ってますが、現生人類だって動物ですよ。次に絶滅するのは、人かもしれませんね。
後の祭り。こぼれたミルクを嘆いても始まらない。覆水盆に返らず。
全て『一度してしまった事は、取返しがつかない事』の譬えです。愚行を重ねず、過去や歴史から学びましょう。
されて嫌な事は、しないで下さい。言われて嫌な事は、言わないで下さい。絶滅種からの、お願いです。