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ep.35 陽だまりで遊ぶ猫のように 2/2(主人公・乃愛視点混在)

◇◆ 主人公視点 ◆◇


にわかには信じられない話だけど。でも、君には助けてもらった恩がある。結城さやかちゃんという子と私は会えばいいのね」


「はい、お願いします。それと……その話のあと、これを読んでください。それで俺の言ってることが正しいとわかるはずです」


 次の休みに、結城さやかと会ってほしいことを告げた。

 自分はタイムリーパーだが、それを幼馴染に伝えるわけにはいかないこと、漫画の題材にその幼馴染が乃愛の話を聞きたがっていること。

 それだけの話を、乃愛はすんなりと受け入れた。 


 別れ際、6月9日の源乃愛へと手紙を渡した。

 そこに俺は真実を記した。

 

――もう少し未来の君にもう私は全て聞いてる。最初は信じられなかったけどね。


 そう乃愛は言った。

 つまり、その未来の俺の存在が、いまの俺であることにするために。

 

 ルート確定の条件は、七夕の日にリープして、過去のヒロインに真実を告げることだ。俺はそれを回避する必要があった。

 源乃愛の死を回避するため。

 これは、北城渚へ真実を告げたのと同じ理由だ。


 しかし、ここまで乃愛に真実を告げなかったのにはもう一つの理由がある。


 これはあくまでゲームとして捉えた場合の話だ。

 俺が水月に望み、そして叶えられたRe;summerというゲームのなかで特別なヒロインが3人いる。


 結城さやか、源乃愛、真田なつ海の3人だ。


 この3人の協力がなければ、リサマのTrue endにはたどり着けない。というのが、ゲーマーである俺の導いた結論だった。

 特別な理由、それは水月のことを知っているヒロインだからだ。


       ***


 源乃愛 様へ


 きっと今の君は僕のことを信じてはいないでしょう。

 しかし、僕は事実としてタイムリープの能力を使い

 何度もこの夏を繰り返しています。


 『ラプラスの悪魔』


 きっと、この話を今日僕らにしたはずです。

 そして、君の身体がいまは『健康』だと言ったのは嘘ですね。


 お身体を大事にしてください。

 それを、未来の僕も、さやか達も望んでいます。


 ここまでの内容で、どれだけを理解してくれたかわからないですが、

 本題を書き記します。


 【7月28日の朝7時55分に結城さやかが交通事故に巻き込まれて死ぬことになっています】


 正確には少し違いますね。

 これは最初の1回目の話です。


 僕はこれを止めるために何度もこの夏を繰り返してきました。

 その中でわかったことは、


 ・死の原因は交通事故に限らないこと。

 ・結城さやかが死なずに、僕の周りの誰かが死ぬ未来もありました。

 書きづらいことですが。源乃愛、君もその一人です。


 僕は、結城さやかを救いたい。

 それと同じくらい乃愛のことも大切に思ってます。


 だから乃愛、君の力を貸してほしい。

 未来を変えるために乃愛、君が必要なんだ。


 最後に、学園祭の前夜。僕の胸を叩いてください。

 タイムリープの証拠を君に見せることができます。


 もし僕のことを信じてくれるのなら、

 7/3の放課後。

 今日と同じ場所でもう一度話をしましょう。


       ***

◇◆ 乃愛視点 ◆◇


「ラプラスの悪魔……。そして、私の身体のことも知ってるにゃんて。不思議な子たちにゃ」


 行きつけの猫カフェのいつもの席で、私はその膝に推し猫の『きなこ』を撫でていた。

 茶色い毛並みの色がきな粉のようだから、そう名付けたられたらしい。

 机の上に広げた便箋には、それが単なる空想で記されたものではないいくつかの真実が混じっていた。

 

 結城さやかちゃんと、真田一樹君。

 

 私が生かされていることに意味があるというのなら、もしかしたら彼女たちの為なのかもしれない。なんて、ちょっと使命感を覚えたりもして。


『お身体を大事にしてください。

 それを、未来の僕も、さやか達も望んでいます。』


 私は、誰かに求められ、そして惜しまれる存在なんだろうか。


 たった二行の言葉に、心が動かされたというのは、なんて浅はかなんだろうと思うけど。もしかするとそれも《《言い訳》》なのかもしれないけど。


 罠にかかった小動物が、助けてくれた狩人に恩を返そうとする話、あれはなんて物語だっただろうか。とふと思い出す。

 たぶん、フェンスから抜け出せなくなった私に、手を差し伸べた彼に

 私はもう恋をしているのかもしれない。


「ね、きなこ? あんたはどう思うかにゃ」


 膝の上で欠伸をする子猫の鼻先をツンと指で触れてから問いかける。

 もちろん、答えはくれないんだけど。


 さほど興味のなさそうな顔で首をかしげる姿が愛らしくて可愛かった。

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