るぅ〜ぷL∞P
それは永遠に終わらないLoopの物語。
始まって、途中からまた始まりに戻る物語。
終わりはいつ訪れるのか。
そもそも、終わりはあるのか。
「あぁ! またデータが消えてるぅ…」
始まりに大層なこと言ってますが、ゲームがクリアできないだけです。理由は多々ある。
「弟くん! また乱暴に扱ったの!?」
我が愛しの弟くんが大切に扱わないためにデータが消えたり、
「違うよ! お姉ちゃんが進めなくなったって言ってたから進め方を調べてたら、お母さんがコードに足を引っ掛けて、ゲームが消えちゃったの…そしたらデータが…うぅ…ごめんなさい…」
お母さんがよく足を引っ掛けるのだ。
「あぁ…泣かないで。ごめんね。お姉ちゃんが悪かったよ。弟くんは1回注意したらもうしないよね。お母さん!」
あちゃー、やっちゃったぁ…よく考えたら弟くんがする筈がないなのに。でも、泣き顔の弟くんも可愛いぃぃ! 食べてもいいですか!? 包容!
「ん? どうしたの?」
「のぁ! お母さん! びっくりしたぁ…。それより! またコード蹴っ飛ばしたって聞いたわよ!」
急に出てこないでよ! もう少しで弟くんをいただきますできたのに!
「それは謝るけど、まずは涎を拭いたら?」
私としたことが涎を垂らしていたとは…。じゅるじゅる。
「この際データが吹っ飛んだのはどーでもいいの! 今大事なのは弟くんが泣いてることよ!」
カッコ良く決めてるけど、弟くんを抱きしめてハァハァしてるのには目を瞑ってほしい。ついでに、泣かせたのはオマエだろうというツッコミも勘弁してほしい。
「ホントにお姉ちゃんは弟大好きねぇ」
「勿論よ! 悪い!?」
言っておくけど、私はショタコンじゃないわよ! 私が好きなのは弟くんだけなんだから!
「悪くないわよぉ。さて、邪魔者は退散しましょうねぇ」
ハァハァ…これで弟くんと2人きり…ハァハァ…
「ハァハァ…」
・・・
「しまったぁ! 何か上手いこと逃げられた!」
流石お母さん。やってくれるわね…。
「まぁそれはいいわ。弟くん、一緒にゲームする?」
「でも、データが…」
そんなにシュンとしなくても大丈夫よ、弟くん。
「こんなこともあろうかとバックアップをとっておいたのよ!」
さっすが私! 私、やればできる子!
「よし、じゃあ今度こそ最後までクリアするよ」
てことで、スイッチをぽちっとな。
「さて、弟くんは誰にする?」
「勇者がいいなぁ」
勇者の弟くん…。捕らわれのお姫様はやっぱり私…
───
『姫を離せ!』
聖なる剣をその手に握って魔王と対峙する弟くん。
『その望み、叶えたければこの私を殺すしかないな』
邪悪な笑みを浮かべて玉座から弟くんを見下ろす魔王。
『望むところ!』
激しい攻防が繰り広げられ、遂に魔王は弟くんに敗れる。
『姫、ご無事ですか? さぁ、国へ帰りましょう』
私をお姫様抱っこして素敵な微笑みをくれる弟くん。
『国王、今戻りました』
国に帰ると弟くんは魔王を倒した英雄として迎えられ、パーティーが始まる。
『姫、私と共に踊って下さいますか?』
私の前に跪き、手を差し伸べる弟くん。もちろん私はその手を取って一緒に踊る。至福の一時。
『姫、こちらへ』
そのまま人ごみに紛れて2人でパーティー会場を抜け出し、その後…
───
「むっふぁっ!」
「どうしたの!? お姉ちゃん!」
いかん…興奮しすぎて鼻血が…。
「お姉ちゃん! 大丈夫!?」
しかし、鼻血ってホントに吹き出すんだ…。身を持って体験してしまうとは。
「大丈夫よ、弟くん。あと、悪いんだけど掃除するからバケツに水汲んで雑巾持ってきて」
「うん。わかった。ちょっと待っててね」
私の言うことに健気に従う弟くん…
ギザカワユス。
「ヤバい…思考が古い…」
もはや死語だ。
「さて、鼻血垂れ流しはマズいなぁ」
ドクドクと、止め処なく、捻った蛇口の如く、溢れ出てます。こんなに出たら私死ぬんじゃない?
「もしかしなくてもヤバい?」
とりあえず寝転がって、脚を上げてみよう。
そして深呼吸。吸ってー、吐いてー、
「げげごぼうぉぇ」
吐血!? ついに末期!? まぁ、深呼吸したら口に鼻血を吸い込んじゃっただけなんだけど。あれ? もしかして私結構余裕ある? 何かいつの間にか鼻血止まってるし。でも床に軽い血だまりができてるね。
「弟くん遅いなぁ」
遠くから弟くんの声が聴こえる…。死因は出血多量かなぁ。
『お母さん! 何処にいるの?! お姉ちゃんが!』
弟くん、バケツと水と雑巾だけ持ってきてくれればいいのよ。お母さん呼ばなくても大丈夫だから。早く持ってきてー。
「でも可愛いから許す!」
力んだら頭がフラッときたよ。
「お姉ちゃん頭押さえてどうしたの? 大丈夫?」
やっと戻ってきてくれたね。愛しの弟くん。
「お姉ちゃんの頭はいつでもお熱ダヨ☆」
「お姉ちゃん熱あるの?」
そんな心配そうな顔を近づけないでぇ…。弟くんのひんやりした手が──
「(・∀・)イイ!」
これはヤバいですよぉ。貧血で弱ってるところに弟くんは刺激が強すぎますよ〜。天然ジゴロは恐ろしいですよ〜。でも弟くんは可愛いですよ〜。
「ハァハァ…」
弟くんがこんな近くにぃ。
「ちょっと熱いなぁ。息も荒いし、寝てた方がいいんじゃない?」
「いいいいい一緒に寝てあげてもいいわよっ!」
あれ? 私トゥンデレですか? 伝説の3:7トゥンデレですか? そうなると天然系田舎派幼なじみと弟くんを取り合うことに?
「一緒に寝て欲しいの? いいけど、先にここを片付けてからじゃないと。後で行くからお姉ちゃんは寝てて」
マママママママジっすか!? 本気!? 本当!? マジっすか!?
「ハァハァ…じゃあ先に…ベッドに…行ってるからね…」
ヤバい! お母さん! 私、大人の階段登っちゃうよ! うはー! 興奮してきた! さっきから興奮してた! あぁ…血が足りない…。
「あ」
何か蹴った。
「あ」
ゲーム機踏んだ。
「あぁ…」
ゲーム機が…
「潰れた…」
踏み潰してしまった…orz
「最近のゲーム機って薄型だよねぇ」
オワタ。
ゲーム機オワタ。
「弟くん。私も掃除するよ」
「うん」
それは永遠に終わらないLoopの物語。
始まって、途中からまた始まりに戻る物語。
終わりはいつ訪れるのか。
そもそも、終わりはあるのか。
しかし、ここに一つのループがひとまずの終わりを迎えた。
彼女がゲーム機を踏み潰すという結末で。
彼女曰わく、
『ははは、見ろ。ゲーム機がゴミのようだ〜☆』
だそうだ。
ダメだ。
この姉早く何と──
──か出来ないネ。
おしまい
ノシ
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