第2話 境界線
「...ニノ」
「...誰だ?顔がかすんでてよく見えない...」
「あっ、待ってくれ!」
「ん...ここは?」
気がつくとベッドで寝てたようだ。それにしてもここはどこだろうか?
「ガチャ」
部屋にひとりの女性が入ってきた。20代くらいか。着物姿でとても綺麗な容姿だ。
「目が覚めましたか」
「あの、ここは一体...」
「ここは旅館ですよ。旅館の前で倒れてるあなたを部屋まで連れてきました。部屋が暗いので窓を開けますね」
「旅館ですか。うっ!」
ベッドから立ち上がろうとしたとき、全身に激痛が走った。
「あっ!まだ寝ていないといけません。あと2、3日はお休みください。これから食事を作りますので、また後程伺います」
そう言って女性は部屋を出ていった。
「仕方ない、お言葉に甘えて休むとしよう。ん、あれはなんだ?」
窓から外を覗きこむと、不思議な光景に眼を奪われた。
広大な草原にオーロラ色したカーテンのようなもので地平線まで一本の線が引かれている。まるで境界線のようだ。しかし草原以外にあるのは遠くから山、海が見えるくらいで他に何もない。町はないのだろうか。考えても全身の痛みで少し動くのがやっとなので諦めて寝ることにした。
目が覚めたときには外は夕方になっていた。テーブルの上に食事が置いてあり何かメモが書いてある。
「ご飯はここに置いておきます。自由に召し上がって下さい」
ギュウウウ...お腹の音がタイミングよくなってしまった。
「そういえば今日は何も食べてなかったしお腹空いたから頂こうかな」
ご飯を食べ終わり、ゆっくりしているとさっきの女性が部屋から入ってきた。
「起きたんですね、あっ食事も食べてくれたんですね」
女性が笑顔で言った。
「ご飯ご馳走さまでした。ところで窓から見える線なのですが、あれは一体なんですか?」
「...あれは境界線です。この世界は2つの国に分かれており、境界線が原因で1000年前に戦争があったようです。終わらない争いに両国が疲弊してしまい、戦争は休戦。それ以降、大きな争いは起きていないのですが、お互いに手を取って活動はしていません。私の祖先が二度と争いがないようにと、この境界線の中央に旅館を建てたそうです」
「両国は今も仲が悪いのですか?」
「分かりません。ですが国同士の争いは起きていません。たまは両国の人たちでこの旅館に泊まりに来るくらいです」
「そうですか...」
「とにかくゆっくりしてて下さい。あ、そいえば自己紹介がまだでしたね。私はマザーと申します。何かありましたらいつでもお声かけ下さい。」
「マザー…さんは若いのに1人で旅館を経営しているんですか?」
「若いだなんて…ありがとうございます。私は生まれて50年になるんです。自分で年齢を言うのも何ですが。旅館は1人で経営してます。あと『さん』付けはしなくて良いですよ、『マザー』とお呼びください」
そう言って食事を片付けて部屋を出ていった。
「まさかマザーが50歳だとは思わなかった。どう見ても20代にしか見えない。しかも相当の美女だぞ」
驚いてしばらく動揺するニノ。
それにしてもさっきの話、あまり良い話ではないな。面倒が起きる前に早くここを出ていこう。
しかしどこへ行くというのだ?宇宙船が壊れてるし、一体どうすべきか…と考えたいが痛みと同時に眠気が襲ってきた。
「......ザワザワ」
また夢の中だ。ん?夢にしては騒がしい。下に誰かいるのか?
あまりにうるさいから様子を見てみるか。
起きると下で誰かが揉めているようだ