7話
敵にバレないよう俺たちは壁をよじ登り超えることに成功する。
そのまま壁から離れ、近くの大きなコンテナに身を潜める。
「よし、んで敵地に潜入成功というわけだがこれからどうするんだよ?」
レオが俺の隣で同じく身を潜めながら、小さな声で聞く。
「あぁ、一応考えはあるんだけど、ベースキャンプに潜入っていう前例がないからこれでいいのかさっぱり分からない……」
まず、今までの戦い方として戦線での殴り合いしかなかったので、そこを超えて敵地のベースキャンプに潜入するなど不可能、考えられなかった。
しかし、現実として俺たちは潜入に成功してしまった。運が良かったでは済まされないほどだ。
ベースキャンプに潜入というのは初めてなので、この策が良いのかさっぱり分からない状態だがやらないよりかはいいだろう。
「んで、その考えっていうのは?」
「ベースキャンプを爆破する」
レオは表情を変えなかった。いや、どんな表情をすればいいのか分からない状態だったのだろう。
「……は?」
「いやだから、ここを爆破するんだよ」
「こんな広いところをか? 流石にここまで来て夢見るのはどうかと思うぜ??」
「俺は本気だ。ここを爆破する」
レオは頭を抱えとても困惑していた。あぁ~といいつつコンテナに体を預ける。そして俺を見て……
「ここに潜入すると聞いてお前は馬鹿かと思ったが、ここを爆破すると聞いて俺は確信したよ……。お前は馬鹿だ」
「もうこの際、馬鹿でもいいっ! 俺たちはもう引き返せないとこまで来てる。もうやるしかないんだよ……!」
「まぁ俺もお前の案に協力するつもりでここに来ているわけだ。どうやってここを爆破するつもりだ?」
レオがとても真剣な顔で俺に聞く。
「爆破術式だよ」
「俺たちは初級しか使えないんだぞ?? 初級程度でここを爆破できるとは思えないが……」
「レオ、覚えてるか? 一番最初の講義で習った魔導術式、爆破術式第2のことだよ」
「あれって欠陥品じゃないのか? 勝手に爆発しちゃうから扱い禁止~って言われたんじゃ……」
「あの術式が扱い禁止になっているのは、危険だからだ。でもそれが返ってこの場所では優位になる。勝手に爆発するのも、その術式が空気中の魔力を勝手に吸収して作動してしまうから。魔力さえ与えなければ勝手に爆発なんてしないさ」
そして、爆発したときに魔力も共に飛ばされるので上手く使えば連鎖反応的に爆発を起こすことができる。
「え、えっと……、つまりはそれを使えばここを爆破することが可能になるってことだな?」
「あぁ、可能性は十分にある」
そう、あくまで可能性だ。術式を設置している間に敵に見つかれば即終了だし、上手く作動しなければこの策は失敗に終わる。
俺は改めてレオを見つめる。
「レオ、俺はこの策で行こうと思っている。協力してくれないか?」
「もちろんだ。もとからそのつもりだよ。今までもそうだったろ?」
「ははっ、そういえばそうだったなぁ」
今までずっとレオは俺の考えを信じてくれた。そして、共に動いてきた。
ほんとにいい友を持ったと思っている。そしてそんな友を死なせたくはない。俺たちは生きて帰る。戦争史上初の成果を持って帰ってだが。
改めて俺は辺りを見回す。
天候は曇り、風はそんなに強くなくむしろ俺たちのコンディションを上げてくれるくらいに気持ちがいい。時刻はまだ日が出ている。
敵は数人いるが俺たちが敵に発見されるかもしれないという状態ではなかった。まずこのベースキャンプ内に敵がいるなんて想定していないだろうな。
「よし、では爆破術式第2をいろいろなところに設置してくれ、できるだけ食料の入ってるようなコンテナを中心に」
「おう、ルートは左から回ろう。右にはどうも敵が集中している」
ここのベースキャンプは円型と見た。そして、左から回れば一番敵に遭遇しないで済むというレオの見解だ。
「了解。んじゃ、盛大にカマしてくぞ」
「おう」
俺とレオはお互いに肘を曲げて腕をぶつけ合った。いつものルーチンだが、いつもより気合が入っているように感じた。