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永遠のベルム  作者: MIOD
第一章 対クローロン国戦
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5話

「「ほい!」」



 俺が出したのは、ぐー、レオが出したのはぐー。やはりぐーだったか。ということは俺のことを騙そうとして先程の発言をした。まぁ想定通りだ。



「へっ、やっぱり引っかからないか」



「いつものお前を見たら分かるさ。レオ」



 そして、問題は次だ。いつもどおりの調子でレオは来ている。しかし、この次をどう展開していこうか。普通のじゃんけんだったら、俺はぐーを出したから次はぐーに強いぱーを出してみようという考えに至る。なぜか。それは考える時間も無くすぐに次の手を出さなければいけないからだ。故に戦術を考える暇も無く、出してしまうということが発生する。しかし、この方法で次をぱーで決定ということをするのは少々不安である。この2手目でもいろいろな戦術があるからだ。先程言ったように相手の出した手に強い手を次に出すという理論から発展していろいろな戦術が考えられる。あぁ、その強い手を出そう理論で行くと必ず不利になる。それもレオのようにずる賢い性格な人が相手だと必ず。おそらくレオは俺がいろいろ考えていると思っているだろう。俺が強い手を出そう理論を利用してこないということもレオは知っているだろう。こうなっては俺もレオが何を出すかは分からなくなる。故に、俺はレオが使っていた先程の手段を利用する。ここまで5秒。



「レオ、俺も言っておく。次はぱーを出す」



「ほうほう……」



 レオはニヤニヤしながら俺のことを見た。



 恐らく、自分と同じ手段を使ってきたことにより、俺の出す手を確信したのだろう。あいつはずる賢いが、深くまでは考えない人だ。そのことからあいつは俺がぱーでは無く、ぐーを出すと考えているはずだ。あぁ、絶対にあいつはぱーを出してくる。しかし、俺はあいつの裏をそのまま裏で返してやろう。俺はちょきを出す。これで勝ちだろう。これで勝負が決まる。あいこに持っていくのではなく、勝負に俺は出る。恐らく俺の勝つ確立は半分よりも高いであろう。それはあいつが深くまで考えられないということを考慮しての計算だ。ならば、俺はこのまま自分を信じて突き進む。俺は男になるんだ!



「では、行くぞ……」



「「あいこで、ほい!!」」



 俺の出した手はちょき、レオはぱーだった。



「なっ、なな……、なに?!!」



「は、はは、ははははは!!! やはりな、やはりだったな!? いや~、ははっ、この勝負、俺の勝ちだな!」



「なんで、なんでなんで?! なぜにぐーを出して来ない?! なぜだ! お前なら裏をかいてぐーを出すはず? なぜだ……」



「そのまた裏をかいたのさ俺は。まぁ今回はレオの負けだな!」



 俺はグッドポーズをしながら歯をレオに見せた。



「くっそぉぉぉ!! ずるいぞ! あぁ畜生!!」



「んじゃあ、このチケットは貰って行きますね~」



 俺はテーブルの上に置かれたチケットを手に取り、大事そうにそれを撫でる。



「へへへっ、俺のチケットだぁ~」



「あぁ、行ってこいよ! 俺なんかどうせ負け組だよ?!」



 レオは拗ねて、端の方の壁に寄りかかって座っていた。見事な体育座りである。



 そんな拗ねたレオを放っといて俺は列を見る。



「さてさて、列の後ろはどこだろうか~? おおぉ、かなり並んでる……」



 その列はざっと見た感じだと50mは超えていた。



 俺はその列を辿って歩いていき、遂に最後尾に到達する。



「すみません、これを」



 そして俺は、列の整理係らしき人にチケットを渡す。その人は頷いてから列の最後尾を譲る。



 よし、後は待つだけだ。これから軍のアイドル、エレナちゃんと俺は話せるのだ。あぁ、なんと素晴らしきことかな。



 傍からこの列を見てた時、みんなそわそわしてるなぁとか思っていたが、今なら気持ちが分かる。



 何を話そう……。ということだ。



 ここまで来たは良いが、肝心の話題が思いつかない。前の人とか後ろの人とかは皆、戦果を持ってきているわけで、そのおかげでここに来れているわけで……。



 俺は上官からチケットを無料で譲り受けただけで、なんの戦果も持ってきていない。あぁ、そうだ、俺は無料でここに来れているわけだ。とても恵まれているのだ。ここで諦めるもんか。素晴らしい話題を提供して、エレナちゃんの素晴らしい笑顔を見届けよう。



 そうして俺がそわそわしながら待つこと1時間、とても待ったと思う。とても人がいたからしょうがないが、とても俺は頑張った。そして遂に俺の出番が回ってきたのだ。今まで待った疲れなど一気に吹っ飛ぶ。ここからは聖域だ。



俺は息を飲んでから、聖域に踏み込んだ。



「では、次の人どうぞ」



「は、はいっ!」



 エレナちゃんの隣にずっと立っている、関係員に呼ばれ、一歩前へ。



 俺は軍のアイドル、エレナちゃんと対面を果たした。



「こ、こんばんは!!」



「こんばんわ~!」



 あ、あぁ! もうとろけそうだ! ここまで近くで見るともうそれは女神と化して見える!



 とても綺麗な肌。とても白い。すべすべしていそうでもはや自分の頬をこすりたいぐらいに引き込まれる。自然と体が吸い寄せられるのだ。



 そして、完璧までな体型。男の欲望を全てそれに表したかのような幻想とも思える実物。それでいて服の露出が意外と大きいのでこれを見て目を離す輩などいるだろうか。いや、いない!!



 それに付け加えて、彼女のとても輝く元気な笑顔。俺に向けてとても元気な、見ているだけで癒される、何か心の中で溶けていくような感覚に陥るようなそんな笑顔で「こんばんは~!」と言ってくれるのだ。それは太陽よりも輝き、もはや母性を感じる。あぁ、これは尊い……。



「えっと、実は俺、ここに来てから一日目の新兵でして……」



 俺は彼女の素晴らしさに圧倒されながらも、なんとか短い時間しかない対面時間を有効活用する。



「あ、もしかして、派遣された魔導大学の学生さんかな?!」



「は、はい! そうです!」



「わぁ~! すごい! じゃあ、これから戦地に出るんだね!! まだ学生なのに命を掛けて危険な戦地に出てくれるなんて、ほんとかっこいいと思う!!」



「そ、そうですかぁ~?!」



 俺が照れていると、エレナちゃんから俺の手を握り、顔を近づける。



「これから辛いことばかりかもしれないけれど、そんなときは私を思い出して、頑張ってね? もしたくさん頑張ったら、私も頑張ってあなたとたくさん話すから!!」



 ま、ママ?! 彼女はもう俺のママだ!! ママ!!! 俺頑張るよ!! 命掛けてでも、エレナちゃん券を沢山手に入れて、毎日通ってやる!! というか、もう勲章貰ってきてエレナちゃん券一週間分を手に入れてやる! 全てはエレナちゃんのために!!!



「は、はい!!!」



「はい、では時間です~、次の方どうぞ~」



 そのまま俺は関係員さんにエレナちゃんの手を離され、聖域から追い出される。



 でも俺は聖域を出てからもあの雰囲気に溺れていた。



「ままぁ~……」



 その姿を見たレオはとても引いた顔で俺を見ていた。



「お、おい……、お前、気持ち悪くなってるぞ……」



 そんな言葉を気にせずに俺はエレナちゃんに握られた手を愛おしく見ていた。



「あぁ~、もうこの手、一生洗わない」



 いつの間にか近くに来ていたレオが俺にどつく。



「畜生! なんでエレナちゃんと手を繋いでんだよ?! というかズルすぎだよ?!」



「ははぁ~、俺、頑張って戦地で戦果得てきてエレナちゃん券を手に入れるって心に決めたよ」



「あぁ~、ほんとに羨ましいよ……。これだけ殺気を覚えるのは初めてだ」



 畜生と言いながら、レオは自室に歩きだす。



 それに俺もついて行き、あることに気がつく。



「でも待てよ? エレナちゃん券って普段は手に入れられないような代物だよな? それこそ戦果を出さなければ手に入れられないようなもの。それをあの少尉殿は無料で1枚くれたんだ」



「あぁ、確かに……、つまりあの少尉殿は――――」



 俺たちは顔を合わせてお互いに言う。



「「神様か……」」



 俺はレオと横並びに歩きながら言う。



「あの神様はとても素晴らしきお方だった。そもそもあの方が俺たちにエレナちゃんのことを教えてくれなかったら今頃俺たちは男同士の暑苦しい部屋でお話をしていただろうな」



「ま、結局、俺はエレナちゃんとお話はできなかったけどよ……」



 レオが俺に向けて肘をぶつけながらそう言う。



「だが、目に入れられただけで眼福だった」



 それでもレオは満足そうであった。



 しかし、ほんとに感謝だ。ここにエレナちゃんがいるというだけで、それを知っているだけでこれからとても辛い毎日を送るだろうと思っていたのが、とても素晴らしい毎日と思えるようになった。エレナちゃん効果はとても壮絶なまでに絶大であった。



「はぁ~、俺もエレナちゃんと会って直接話したいが、これからは戦果をしっかり得て、自分の力でエレナちゃん券を手に入れなきゃいけないのか……。ほんと、お前は不正野郎だ!」



「不正野郎って……」



 でもまぁ、否定出来ないのが辛い所。本来は自分の力でエレナちゃん券を手に入れて、癒されるのが道理だ。



「まぁ、その分できるだけ手伝いはするからさ……。いろいろと戦術とかも考えるし」



「お、これはこれは。魔導大学の優等生さんの知恵を借りられるとは俺も恵まれてるぜっ」



「と言っても、どれだけ戦場に通用するかは未知数だけどね……」



 レオは俺のその言葉を聞き、俺に言う。



「お前は知能を働かせろ。考えるの得意だし、何より考えるための知識が豊富にお前の頭の中にある。そして俺はそれに従う。従いながら、筋肉を動かす。体力と筋力には自信があるからな。ってことで俺たちはどちらかが欠けたらただのガラクタってことだ」



「人1人で、2つの命を持つ。どちらかが欠けたら意味がない。思えば昔からそうだった。俺が考えたことをレオが体を駆使して上手く達成してくれる。魔導大学ではそれが評価されて俺たちは表彰されたし」



「ああ、あの人助けのことか」



 俺たちが1年生のころ、魔導大学で事件が起こったことがあったのだ。同じ学年学部学科の知り合いの女の子が人質にされる事件だ。



 犯行現場に犯人は3人。黒い顔面マスクを上からかぶって、その犯人たちは身代金を要求してきた。相当な額だった。故に学長も対処に困っていた。とりあえず警察を呼んだが、人質がいる以上何も手を出せなかった。



 そんな中、俺たちは考えていた。あの女の子を助けたい! という、今考えたらほんと純粋な考えで助けようとしていたのだ。俺はどうやって救うかを思考していた。そして助ける手段を思いつき、レオに伝え、作戦を実行。



 俺がまず犯人のところに行き、俺も人質にしてくださいと全力で頼んだ。身代金も2倍にできるしということを口実に俺は自分を人質にと頼み込んだのだ。そのおかしな行動に困惑している犯人たち。十分な隙は出来ていた。その隙をつきレオが後ろから犯人を飛び蹴りその突然の出来事に犯人が後ろを向き人質である女の子から気を反らした隙に俺がその子を救出。そして、レオもそこから逃げ出し、人質がいなくなった犯人たちは無事、警察たちに突撃を食らって御用となった。



 その勇気ある行動に敬意を表して、俺たちは魔導大学で表彰されたのだ。



「その頃から俺たち、大学内で有名になったよな」



「あぁ、食堂に行けば英雄呼ばわり。恥ずかしくて学食我慢した日もあったな。ははは」



「あぁそうだな。はははっ」



 レオの笑いに俺もつられて笑う。



 その後もいろいろと雑談をしたりして、俺たちは段々と、ベースキャンプに慣れていった。





 そして、数日後。



 俺たちはベースキャンプ生活に慣れて、遂に軍人としての仕事の本番が来てしまう。



「あぁ?! あっぶねぇ?!!」



「くっ! 大丈夫か?! レオ?!!」



「あぁ、ぎりぎりのところで避けた!」



 俺たちは今、戦地に出向いている。真正面には1個小隊規模の敵勢力。俺達は1個分隊規模であり、要は、自分たちより多い人数の敵勢力に戦地でばったり会ってしまい、戦闘開始というわけだ。



「くそ! このままじゃやられるぞ?! 分隊長! 撤退の指示を!!」



 レオが分隊長に撤退の指示を仰ぐ。



「無理だ! 撤退をしても敵に背を向けるだけ。それは相手にとって格好の的になる!!」



「援軍は?!」



「援軍も今は交戦中だ。相手は俺たち分隊を確実に仕留めたいらしい!!」



「畜生……。これじゃ、終わり一方通行じゃないかっ!!」



 レオが、分隊長の言葉を聞き、やけくそになる。



「レオ! 落ち着け!! 無駄に魔法ぶっ放しても魔力を消費するだけだ!」



「でもよぉ?! この状況をどうしろってんだよ?!」



 確かに、この四方八方敵勢力に囲まれている状態では、どうしようもない。まさに四面楚歌だ。



 何かこの状況を打開する手はずはあるはずだと俺は信じて頭の中でいろいろな策の思考実験を高速で処理する。



「よしっ! 分かった!! レオ! 一旦こっちに来てあの魔法を――――」



 その時だった。



 俺がある策を思いつき、それをレオに言い伝えようとした時だった。



 同じ分隊に所属している隊員が叫ぶ。



「あ、あれは?!!」



 その指差す方向を見ると、敵勢力の1個小隊の兵士と――――



――――とても大きな、鋼鉄を纏まった怪物。



 魔導兵器がそこに存在していた。



「な?! 魔導兵器?!! なぜこんなところに?!!」



 俺はそのありえないものを見て驚愕していた。それでも敵の攻撃は鳴り止まず、俺は命を落としそうになる。



「あぶねぇ!!」

「ぐっ?!」



 レオが急いで俺を突き飛ばし、間一髪でそれを避ける。お互い、大きな怪我は無く、無事に済んだ。



「大丈夫か?! 新兵2人?!!」



「えぇ、大丈夫です!!」



 レオが分隊長に返事をする。



 その間も俺はずっと考えていた。



 その静かな俺の様子にレオが気づき――――



「どうしたジーク! 早く体勢整えないと?!」



「あ、あぁ……、だが、とてもおかしなことが……」



「なんだよ?!」



「あの魔導兵器、普通は動かすのにとても労力を掛けるんだ。故に、基本は攻城戦でしか使われない。でもあんなものがここにあるってことは……。もしかして、あれで俺たちの軍の主力本隊を狙う気か?!!」



「なんでそんなもんがこんなとこに?! ここは足場の悪い湿った枯れ葉の積もったところだぞ?! どうやってここまで運んで……」



「輸送車だ。それも小型のやつを4つ。とても丈夫に加工されているらしいからちょっとやそっとの魔法攻撃じゃ、びくともしないだろうさ!」



「な、なんで……」



 そう言っているうちにも敵の攻撃は鳴り止まず、そして、俺たちのいる空間にある甲高い金属音が鳴り響く。



 その音を聞き俺は察する。



「この音、魔導兵器の起動音?! もしかして、本番撃ちの前の試し撃ちか?!! みんな散開しろ!! 地面もろとも俺たちも吹き飛ばされるぞおおおおお!!」



 全力で警告を叫ぶ。そして分隊全員が散開。その後、俺たちのいた場所にとても高出力な魔導兵器による攻撃が行われる。



 その余波はとても凄まじいもので、散開した俺たちでも衝撃を受けるものだった。



 衝撃により、湿った落ち葉だけでなく、先程、俺の隣で丈夫に生えていた巨木なども吹き飛ばされ、それが空中に舞う中、俺たちも空中に投げ出される。



 そして、俺は何がどうなっているのかを把握できずに、地面を転がり続ける。



 恐らく坂に落ちたのだろう。俺はその坂を転がり、転がり続けた。



 そして、強い衝撃が体を覆う。



 恐らく坂が崖になっていて、そこから地面へと落ちたのだろう。



 俺はその時に意識を失った。


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