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永遠のベルム  作者: MIOD
第一章 対クローロン国戦
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4話

 軍の食事は、味はするものの、やはり美味しいとはいえないようなものだった。



 噛めば噛むほど味のなさを実感するので、食べているうちに悲しくなってくる。



 食事の時間では、自由な席に座って配られた食事を食べていく一見普通な食堂である。戦争中なのに元気な人はたくさんいて、緊張していた俺らを笑わせたりしてくれた。



 そういう感じで行かないと、これからやっていけないからあんなに元気でいるのだろうか。とにかく、元気を与えてくれたおっちゃんには感謝している。



「さて、食事が終わったら休憩時間挟んでの、入浴時間か。そのあとは就寝時間まで武器庫に入り、武器の整備。大変そうだな」



「せっかく入浴したのに武器庫で体を汚すのか。まぁ入浴できるだけありがたいんだけど」



 俺はそう思いながら休憩時間を満喫していた。



「しっかし、この飲み物美味しいな!」



 レオがそう言いながら、黄色くて甘い液体が入ったコップを飲み干す。



「女性の軍人さんからもらったものだけど自分で作ったのかな……?」



「あぁ、これは近くに生えていた果物を集めて搾り取ったジュースみたいなものらしいぜ」



 俺たちではない知らない人から声がかかる。



 後ろに振り向くと、俺の疑問に答えてくれてた背の高い髭の生やした男性の軍人さんがいた。



 軍人の階級を表す胸についてある紋章には、少尉の階級を示していた。



つまりはお偉いさんだった。



「「こ、こんばんはであります、少尉殿!!」」



 急いで、その少尉殿に挨拶する俺たち。



「いや、そんなかしこまらなくても良い。お前たち今日ここに来た新兵だろ? 早くここに馴染むように俺がいろいろなことを教えてやろう。へへっ」



 そうにやりと笑いながら言うその軍人さんは俺たちの肩に手を掛けながら話を続ける。



「いろいろなことを教える……ですか?」



「ああ、そうだ。俺たち、兵士はこんな戦地に投入されて毎日うんざりしている。でもな、それでも頑張れる理由が俺たちにはあるんだぜ」



 頑張れる理由……。その頑張れる理由って、やはり愛する家族のため、この国のためとかだろうか? とてもかっこいい……。



「そうだな……、お前さんの持ってるジュースもそうだな」



「これですか……?」



 レオが先程飲んでいたコップを少尉殿に見せる。



「そうだ。まずい飯しかないこんなところで、そこら辺に生えている食べられる果物をジュースにしてくれる女性兵のおかげで頑張れるっていうのもある。が、男にとって大事な、もっとこんな戦地でも頑張れることってのがここにはあるんだ」



「「そ、それは……?」」



 俺たちは聞く。その言葉の先に待っている、戦地でも頑張れる理由というのが知りたかった。



「へへっ、それはな、ここは主力部隊故に毎日激戦を乗り越えるような場所だ。そんな頑張ってくれる人たちのためにってことでこのベースキャンプには軍アイドルなるものが存在する……っ!」



「え、えっと?」



「軍アイドルだ」



 ……え?



 俺たちは数秒間呆けてしまった。



 あの話の流れだと、もっとかっこいいことを言ってくれるのかと思ったのだ。先程思った、愛する家族のためとか、国のためとか、それ以外にも、この戦争に勝って俺が戻ってきたら結婚しようと告白した彼女のためだとか、そういうかっこいいのを俺たちは期待した。



 俺達の後ろで肩を掴んでいる軍人さんはそのままニヤニヤしながら話を続ける。



「まぁ、見たほうが早いと思うがとっても可愛いんだぞ? 年齢はちょうどお前たちぐらいか。体型はもちろん完璧で、肌は白く、目がとてもキラキラしてる。それに付け加えて、性格や雰囲気がとても元気な女と来たもんだ。その完璧な子を俺たちはエレナちゃんと呼んでいる!」



 エレナちゃん……。軍アイドルのエレナちゃんと言うらしい……。



 レオはそういうの興味ありそうだが、あいにく、俺にはあまり興味が無かった。



「はは、お前たち反応が薄いな! 男として、綺麗な女の子は一番のご褒美だろう? もっと欲望に素直になったほうがいい。そうだな、よし。今から見に行くか!」



「え? 少尉殿? え、ちょっと?!」



 少尉殿は俺たちの肩を掴んだままあるところに向かい始める。



 俺たちはその進行方向に逆らうことも出来ずにいた。



 そして、歩くこと数分、俺たちは目の前のある光景に驚いていた。



「お、おぉぉ、おぉぉぉおおおおお!!!!」

「まじか、まじかまじか! まじかぁぁぁぁああああ!!!」



 俺たちはただただ狼狽するしかなかった。



 だって目の前の光景があまりにも凄かったのだ。



「どうだ? 俺たちの所属する第14魔導大隊の秘密兵器、エレナちゃんは?」



 そのエレナちゃんは俺たちの目の前、といっても少し遠いところだが、そこにいた。



 その子の前には長蛇の列。皆そわそわしながら待っていた。そして、1人ずつエレナちゃんとお話をしていた。



 そのお話をしている兵士の顔がとてもニヤけている。ニヤけながら幸せそうに軍のアイドル、エレナちゃんと話している。



 でも、ニヤける理由が分かる。同じ男という性別故に分かってしまった。



 部屋のランプで輝く白く長い髪。そして、とてもスベスベしていそうな白い肌。見ているだけでこちらがニヤけそうな整った顔。体型も素晴らしい。女性としてオールコンプリートしているっ! それだけでもう完璧な存在と化しているのに、追い打ちのとても可愛い元気な笑顔。そう、とても笑顔なのだ!



「お2人さんもエレナちゃんの虜になってしまったようだな。はははっ!」



 俺もレオも目が離せなかった。その素晴らしき完璧な存在から目を離せなかった。



 そして俺たちは、同じことを思ったらしい。気づいたら、その長蛇の列に並ぼうと歩き始めていた。



 そこでまた後ろから肩を掴まれる。



「おっと待った待った。流石にただではエレナちゃんとはお話できないぞ?」



「えっ?!」

「嘘っ?!」



「実はな、あれはチケット制なんだ。あそこに兄ちゃんがいるだろ? あの人にこのチケットを渡すことであの長蛇の列に並ぶことができるのさ」



 エレナちゃん券と書かれたそのチケットをひらひらと少尉殿は持っていた。



「ど、どうやったらそのチケットを手に入れることができるのですか少尉殿?!」



 レオが俺の思った疑問を聞いてくれた。



「お、食いつきいいな。そうだな。戦場でいい成績を取ったらこのチケットを貰える。例えば分隊規模で相手1個小隊を無力化した~とかだったら貰えるんじゃないか? また、素晴らしい成績によって勲章を貰えると、同時に1週間分のチケットも貰える。まぁ出来たらの話だがな! はっはっは!!」



 そのチケットを持っている少尉殿はそれを達成したのだろう。



 そして、戦地を経験したことのない俺達にとってはとても無理な事だった。



「あぁ……、俺たちにはまだ早かったということですね……」



 レオは膝から崩れ落ち、地面に手をつく。



「それでここの兵士さんたちは頑張れるということですか……、あぁ、辛い」



 俺もとても辛かった。目の前に天使がいるのだ。そして話せるのだ。しかし、俺たちにはそれができない。優秀な努力家だけが祝福を受けることができる、正しい世界だった。



「へへ、まぁ、そんな落ち込むな。ここにチケットが2枚ある。1枚は俺が使う予定だが、もう1枚余ってるわけだ。1人1枚だから、1人分、俺がただで譲れるというわけだ。あぁ~どうしよっかなぁ~、お、そうだ! 君たちにこの一枚だけをプレゼントしよう!!」



「なっ?!」

「まじすかっ?!」



 それが意味するのは……。



「ま、死を賭けた戦をする前に、男を賭けた戦をして肩慣らししておけってことだ! このチケットはここに置いておく。勝ったものだけがこれを手に入れることができる。さぁ、後は頑張ってくれ~」



 そして、少尉殿は一枚のチケットを残したまま、どこかへ行ってしまった。



「……」

「……」



 その1枚のチケットをガン見する俺たち。1枚だけということはこの2人のうち1人だけがエレナちゃんと会えるということだ。



「勝負だジーク」

「あぁ受けて立とうレオ」



 この1枚のチケットを賭けて俺たちは勝負をしようとしていた。



「さて、どういう勝負にしようか?」



 俺がどの勝負で勝敗を決めようか相談するとレオが提案をする。



「はっは、いいのがあるぜ。遠い東の国にはじゃんけんという勝負ごとがあるんだが知ってるか?」



「あぁもちろん知っている。よし、それでいこう」



「絶対に負けねぇからな?」



「俺もだ」



 さて、初手は何を出すか? 一般論では、数学的に考えて、ぐー、ちょき、ぱーの3種類の出る確率が同様に確からしいとすると、3分の1となる。故に2人のじゃんけんの場合、組み合わせの全通りは9通り、そこから、負ける確立、引き分けの確立、勝つ確立は3分の1ずつになるわけだ。そう、勝つ確立は3分の1。勝てない確立は3分の2と考えることができる。まぁこれは相手も同様だが、普通にやってたら分が悪い。これはいろいろな策略を使って勝ちに行く必要がある。例えば1番有名なのが、先に自分の出すものを宣言して相手を揺さぶる作戦だ。これは3分の1という単純な計算に加え、さらにいろいろな要素を考えなくてはいけなくなる。相手のいつもの行動を見て、相手が嘘をつく確立、そして、その場合、どの種類で出したら1番勝てるかを考えなくてはならない。これは面倒だ、故に深く考えるのを止めて相手を信じるか信じないかで勝負に出るのだ。しかし――――



「ジーク、俺はぱーを出すぜ」



 こいつやりやがったぁぁぁぁ?!! 俺は1番面倒なことなので避けようとしていた。だから別の策略を考えようとしていたのに、こいつは俺の考える性格を知っている。故に1番考えると面倒くさい戦法でいったのだ。相手はぱーを出す。普通に考えれば俺はちょきを出せば勝てるわけだ。しかし、俺はこいつの性格を知っている。こういうときレオは嘘をつく。しかし、この大事な勝負であいつは裏をかくだろう。「俺が相手はぱーを出すからちょきを出すと見てあいつはぐーを出す」ということを俺は考えてぱーを出すということをあいつは考えて、ちょきを出す。という可能性も無きにしもあらずなのだ。ここで考えられることは、普段のあいつから考えて、あいつはぱーを出さない。あいつはぐーか、ちょきを出す。ならばここは一旦、ぐーを出して相手の出方を見たほうが良いのではないか? あいつが嘘を言っているのは確信なのだ。その証拠にあいつの口がヒクヒクしている。これは嘘を言っているとき、無意識に出ているあいつの特徴だ。これを意識的にやっているとしたらそれはもうあいつの勝ちだ。俺のそこまで考えられなかったとして俺の負けを認めよう。しかし、それは絶対無いと俺は信じる。故に俺はぐーを出す。もし、あいつがちょきを出したら俺の勝ち。まぁ、あいつがちょきを出すということは読みに読みまくって出したってことだからあまり可能性は無いが……。おそらくぐーを出して、引き分けになる確立が1番高いだろう。



「んじゃ、いくぞ……?」



「さぁ、来いっ!」



「「じゃ~んけ~ん」」



 そして、俺たちは男を賭けた人生の1大勝負をしようとしていた。誰が勝つかは誰も予想はできないじゃんけんで俺たちの勝負を決めようとしていた。



 この勝負で俺の全てが決まる。



 さぁ、吉とでるか、凶とでるか?!



「「ほいっ!!」」



 この日が暮れた時間に俺たち男同士は全力で勝負をしていた。


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