九話 妹vsアースガーディアン
「召喚! ミウ!」
今回のバトルフィールドは【砂漠】。
辺り一面の砂景色。
空は広大に広がり、青く澄んでいる橙色と青色の世界。
「お兄ちゃん~暑い~~~」
真上からは大きな太陽がギラギラと照らしている。
遠くの景色が陽炎で歪んでいる。40°は越えているだろう。
このエリアでので長期戦は人間種のミウには不利だ。
「我慢だミウ! 素早くケリを着けるから!」
遮蔽物はわずかにサボテンが生えたり、砂山が出来ている程度。
フィールドも長期戦には向いていない。
バトル形式は【リーダーキル】。
勝利条件は、先に相手のリーダーを倒す。それだけだ。
戦闘参加数は5。
僕は出せるのは一人しかいないのでミウのみ。
一方相手の巌はフルメンバーのようだ。
「よし、計画は覚えてる?」
「うん……一番最初に……」
「ちょちょちょ! 言っちゃダメだってば!」
「あっ……ごめんなさい……でも暑くて頭がぁ……」
ミウは試合が始まる前からフラフラだ。
「すみませーん! 開始の合図いいですか!? なるはやで!!」
「よーし!じゃあ始めるよぉ!!」
「3」
「2」
「1」
「試合開始!」
実況の合図とともに試合が始まった。
「よし、ミウまずはオアシスを探すんだ!」
「オアシス?」
「砂漠にある小さな湖だよ。そこがこの砂漠エリアの丁度真ん中なんだ。
ここが先に取れれば、優位に戦える」
「分かったよお兄ちゃん!」
ミウは真っ直ぐ駆け出す。
三分ほど真っ直ぐ進んだが景色は一面砂、砂、砂。
全く変わっていない。
天使やドラゴンなら空を飛んで移動できてあっという間なのだが……。
「はぁ……はぁ……」
ミウは戦闘前から瀕死だった。
「ミウ、ポーションでも飲む?」
「飲む!!」
ポーションを出してあげると両手で持ち一気飲み。
喉を鳴らし、豪快に飲み干した。
「美味しーー!! 生き返ったーー!!」
顔色も良くなり表情もいつものミウに戻った。
「かわいい!」
「熱そうだけどがんばれ!」
コメント欄もミウの豊かな表情に惹かれて応援してくれている。
「よし! もう一走りするぞ~!」
ミウが意気込みした瞬間、突如として地面が揺れる。
「なに!?」
「ミウ!! 前に飛べーーー!!」
僕の指示を聞いたミウはノータイムで前に飛ぶ。
大きな土埃が舞い周囲は煙に包まれる。
煙は晴れ状況を見る。
すると、ミウの立っていた居た場所には、巨大な拳が振り下ろされていた。
「あぶなっwww」
「あとミリでおわてた」
コメント欄も騒然としている。
「お兄ちゃん、何が起きたの!?」
「すぐに前に走れぇ!!」
ミウ自体も今の出来事を把握しきれていない。
でも僕の目線ではハッキリ見えていた。
地面が揺れた時、ミウの背後から砂を掻き分け巨大な手が現れ、その手をミウに向かって振り下ろしたのだ。
僕の指示を聞いたミウは訳も分からず走り出す。
その時、地面から二体のアースガーディアンが現れた。
全長10mほどの砂岩の化身。
これはフィールドのギミックじゃない。巌の持ちキャラクターだ。
「ミウ! 敵だ! 修行の成果を見せてやれ!」
ミウはすぐさま振り返り、アースガーディアンと対立する。
アースガーディアンという事は、レベルは50~150。
アースガーディアンは巨大な手に全体重を乗せ、その勢いでミウを押しつぶそうとする。
レベルではミウより遥かに格上。
だが、それはレベルだけでは、だ。
ミウには事前に地属性に有効な武器『風神の剣』持たせておいた。
「いっけー! ミウ!」
最大強化の『風神の剣』を華奢な細い腕で振り、たった一太刀でアースガーディアンを真っ二つに断ち切った。
「つっよwwwwwwww」
「風神の剣!? 激レアなやつじゃん」
「LV.23でこれは公式チート」
コメント欄も大盛り上がり。
残りのアースガーディアンの動きが鈍い。
巌さんは今のを見て動揺しているのだろう。
ここが攻め時だ。
「ミウ!!」
僕が名前を呼んだだけでミウは素早く前に出てもう一振り。
二体目のアースガーディアンも軽々と切り伏せたのだった。