五話 防衛戦。決着。
ミウはすぐに戦闘態勢に入る。
「よし!一気に間合いを詰めるんだ!」
「はいっ!お兄ちゃん!」
ビュンと風を切り、一気に駆け出す。
今のを見るにマリスティアは魔法型。
魔法攻撃の耐性は高いが、物理攻撃には弱い。
毎日ミウの頭を撫でてLV.を9にまで上げる事ができた。
彼女のLV.もレア度も分からないが、スタートは同じはず。
ならば、後はユーザーの指示次第だ。
「マスターは何か考えている。マリスティア、彼女を近づけるな!」
「はい、お兄様」
マリスティアはレイピアを頭上で振り回し、小さな光の玉を数個出す。
「ライトニング・ボール!」
不規則に動く光の玉が、ミウを目掛け飛ぶ。
「わわわっ!」
それに気づき、ミウは足を止めようと重心を後ろに下げようとした。
「ミウ! 足を止めるな! そのまま真直ぐに走るんだ!」
指示をした瞬間、すぐさま重心を前に倒し、地を蹴って加速する。
「ギリギリまで引き付けてから滑り込むんだ!」
「了解!」
前傾姿勢で臆せず向かってくるミウに警戒して、後ろに下がるマリスティア。
狙い通りだ。
「今だ!」
僕の掛け声で花の大地を滑り、その勢いを利用し、斜め前に飛び出す。
地の花びらを舞い散らせながら、一迅の風のように大地を駆ける。
「温存しているのか! 長期戦で魔力を削る戦法か!?
一度、盾を張るんだ!」
龘の指示で、マリスティアは前方に雷の盾を展開。
だが、こちらはこの一撃で決めるつもりだ!
ミウは盾には攻撃せず勢いを乗せた攻撃を地面に放つ。
地面は砕け、両者の足場は崩れる。
「っ!?」
「マリスティアッ!」
「決めろっ! ミウ――――!!!
「バスター! ブレイクッ!!!」
大きく振りかぶったミウの一撃が、マリスティアに直撃し、轟音とともに、地面に打ち伏せた。
今のがミウの物理最大攻撃、バスターブレイク。
相手の防御力無視でダメージを与える攻撃だ。
LV.9までに手に入ったステータスポイントは、全て物理攻撃に振っておいた。
おそらく今ので相当なダメージが入ったはずだ。
「どうだ! 龘! これが僕の妹の力だ!」
僕は堂々たる態度で、龘に僕と妹のコンビネーションを自慢した。
「まさか……まさか、これがマスターの本気だというのか……」
「そうさ! これが僕の――――」」
「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
本気だといい終える前に、怒号が僕の言葉を遮る。
「僕が倒したかったマスターはこんなのじゃない!
君には『お兄ちゃん』は相応しくない!
また、『剣士』から『神聖騎士』を目指すんだ!
その時、また相手になろう」
「なにを言って――」
「マリスティア」
僕の問いに全く聞く耳を持たない。
そして龘の言葉で、地に伏せていたマリスティアが、何事もなかったかのように立ち上がる。
嘘だろ……。ミウの攻撃は直撃したはず、LV.15だとしても一撃で倒せる。
物理攻撃完全耐性なんてない。
いや、マリスティアのスキルという可能性もある。
考えろ、考えろ。増田啓太!
動揺し、長考する間にマリスティアの頭上に巨大な雷の塊が
圧倒的な威圧感を漂わせながら顕現していた。
これは……格が、違う。
その事にたった今、気付いた――。
「エレクトロ・ノヴァ」
「お兄ちゃん! 指示を! ミウはどうすればいいの!?」
「ミウは……ミウは……」
迫りくる圧倒的な力を前に僕は、それ以上の指示が出せなかった。
「さようなら。僕の永遠のライバル」
少し寂しげな龘の声を最後に、防衛戦は終結した。