三話 100回目の防衛戦
防衛戦当日。
相手は世界ランク二位の 常城 龘。
全最高レア度のバハムート、ファフニール、神龍をこよなく愛す
環境トップの『龍使い』。
対する僕は、大天使ラファエル、ミカエル、ガブリエルの三大天使パーティ
『神聖剣士』で挑む。
予定だった。
しかし、今は『神聖剣士』ではなく、『お兄ちゃん』だ。
『お兄ちゃん』で選択できるキャラは、三大天使ではなく、ただ一人。妹だけなのだ。
そしてその妹のステータスはこれだ。
☆1 ミウ LV.9 種族 妹 戦士
体力 HP 100
魔法ポイントMP 60
物理攻撃 STR 110
魔法攻撃 INT 24
物理防御 DEX 50
魔法防御 MND 30
素早さ SPD 99
運 LUK 1200
スキル なし
結論から言おう。
ス ラ イ ム よ り 弱 い
LV.9のスライムでもオールステータス150はある。
しかし、ミウが勝っているのは運だけだ。
ただ、弱いのはステータスだけの話。
僕の指示通りにミウが動き、戦ったら、LV.15のスライムまでは倒す事ができた。
6も上のLV.の相手を倒せれば十分だ。
まあ、経験値は一切入らなかったが……。
でも、ミウが戦い方を覚えてくれただけでも大きい。
今回のこの防衛戦で丁度100回目。
勝てば、史上初の100回連続防衛記録だ。
マスファン公式から指定された時間にランキングマッチに入る。
今回だけのために、特別に作られた僕と龘だけが入れる部屋があった。
「やあ、久しぶり。マスター」
突然龍の禍々しいアイコンが現れた。
そしてクールな口調で、オープンチャンネルで話しかけてくる。
「先に来てたのか、龘」
「ああ、君と闘いたくてうずうずしてしまってね。かれこれ五時間前から入っていたよ」
五時間……ある意味とんでもない精神力だ……。
それに、それだけの時間を持て余す、余裕もあるという事か。
恐らく、彼はいつも通りの三龍パで来るはずだ。
本当なら不利な所だが、剣士にしか装備できない。
☆7の龍殺しの剣がある。それに神殺しの加工をした。
これをミウに持たせ、攻撃を連撃させれば簡単に神龍倒せるはず。
そうすれば、三龍のコンボは崩れる。
ここからが僕の腕の見せ所だ。
龘のプレイングは手に取るように分かる。
後は僕の指示が上手く行くかどうか。
「どうしたんだい? 急に黙って?」
「いや、久々にわくわくしてね」
神聖剣士を極め、僕に敵はいなくなった。
毎回必ず勝つ。そんな試合のばっかりで退屈していたんだ。
このジョブチェンジは僕に新たなワクワクをくれた。
「お互い最善を尽くそう」
「ああ、今回は私が勝つよ」
オープンチャンネルを切り、試合開始まで待つ。
この試合はたくさんのユーザーがリアルタイムで見ているらしい。
ミウを引いてから今まで対人戦をしないでダンジョンでモンスターと戦い調整してきた。
龘もみんなも僕が0.0001%の激レアジョブのお兄ちゃんだとは知らない。
「ミウ!ここで君のお披露目だ!絶対に勝とう!」
「うん!見てて、ミウ頑張るよ!お兄ちゃんっ!」
そして100回目の防衛戦が始まった。