三話 バトルロイヤル
イベント開催二週間前。
遂に待ちに待った情報が公開された。
内容は【バトルロイヤル】。
俗に言うバトロワというやつだ。
持ちキャラは全5体。
団体で固めるもよし。
バラバラには位置するもよし。
戦法はなんでもありだ。
とにかく上位に残ればそれでいい。
なんとも簡単にして難しいルールだ。
「はぁ……」
いつの間にか溜め息が漏れていた。
それを聞いたミウが首を傾げる。
「何か心配事ですかぁ?」
「まあね……。僕みたいな元上位ランカーは、序盤に集団で狙われやすいんだ」
「なんですかそれ! 酷い!」
ミウは頬を膨らませて抗議する。
「でも、それもちゃんとした作戦だからね。
強い相手を数で先に叩いておくのは、常套手段だよ」
「うぅ~でも~」
ミウは不服そうだ。
自分が大量の敵に攻め立てられるのを想像してしまったのだろう。
「大丈夫。僕に作戦があるんだ」
「作戦?」
「うん。ミウはあんまり気乗りしないかもしれないかもだけど……」
「???」
僕はその作戦をミウに話した。
「ええーーー!!」
ミウはスマホの音量限界まで叫ぶ。
「ちょっ! 静かに!」
「あ、ごめんなさぃ……」
「驚くのも無理はないけど、ここは一つ、新たな妹を迎えるためにどうか!」
僕はスマホ画面に両手を合わせて頼み込む。
傍から見れば何をしているのか全く理解できないだろう。
なんせ僕は今、画面内の妹に誠心誠意頼み事をしているのだ。
「う~ん……正直、複雑な気分ですけど……。
分かりました! お兄ちゃんの作戦に協力します!!」
無事、ミウの了承を得る事が出来た。
そして、レベル上げをするためダンジョンから
帰って来たセナとマリアにも僕の作戦を話す。
「今回のイベントは 龘と協力したいんだ」
直球で本題を話すとセナは目を丸くして驚く。
「兄さん、本気!? 龘って兄さんを一位の座から引きずり下ろした敵でしょ!?」
「敵というか好敵手かな」
「一位を目指すならどっちも同じよ! なんでそんな相手を協力したいの?」
「龘と一緒ならそうそう物量で押してこようなんてみんな思わないはずだ」
「それはそうだけど」
「なんたって向こうには、現状唯一の☆8 マリスティアさんがいるからね」
「っ!!」
その名を口にした瞬間、マリアの柔らかな表情が凍る。
「マリア? どうしたの?」
「あ、い、いえ、何も……」
しどろもどろになりながら視線を泳がす。
明らかに何か同様している様子だ。
「マリスティアを隠れ蓑に使うって訳ね? ミウはそれでいいの?」
「うん! 二人が戻る前に了承したよ!」
「そっ、なら自分も賛成でいいけど……マリアは?」
「わ、私は…………」
そこから先の言葉が出ない。
どうやら迷っているようだ。
「何か不都合があるの?」
僕が問うと何かを訴えるような瞳で僕を一度だけ見つめた。
しかし、
「大丈夫です。私も賛成致します」
今思えば、喉まで出掛かった言葉を呑み込むかのように
マリアは僕の提案に賛成してくれたのだった。