三話 妹vs魔導士
「さああああああて! 今日最初のランク戦はあああああ!!
みんな大注目! 元ランカーワン! もとい!
お兄ちゃん マスターKのランクバトルの時間だぁぁぁぁ!!!
そして~~~300位を防衛するのは~~~~~暗黒魔導士 黒い海月だ~~~~~~~!!!」
実況が煽るとコメント欄も盛り上がる。
「おおおおおおおおおおおおお」
「マスターなろう主人公みたい」
「黒い海月頑張れ!!!」
今回のバトルフィールドは【紛争地】。
戦争で崩壊した街がテーマのフィールドだ。
建物が多く立ち並ぶため、遮蔽物は多い。
正面から正々堂々と戦うよりも暗殺者や狙撃手が有利のステージ。
バトル形式は【フラッグ】。
勝利条件は3m四方の陣地中心からフラッグを奪取する。または、キャラクターの全滅だ。
今回の戦闘参加数は6。
例において僕は妹が二人しかいないので、二人までしか出せない。
この勝負は、フラッグをどこに配置するかが、最も重要だ。
そして、事前のアーカイブ予習だと黒い海月さんは、
賢者クロノと大魔導士アクモスを必ずメンバーに入れてるみたいだ。
今回も間違いなく編成に入れてくる。
となるとこっちはものすごく不利。
レベル上げの結果、現状のステータスはこんな感じ。
☆1 ミウ LV.32 種族 妹 剣士
体力 HP 320
魔法ポイントMP 99
物理攻撃 STR 460
魔法攻撃 INT 39
物理防御 DEX 100
魔法防御 MND 59
素早さ SPD 148
運 LUK 3380
スキル なし
☆3 セナ LV.10 種族 妹 狩人
体力 HP 1200
魔法ポイントMP 300
物理攻撃 STR 460
魔法攻撃 INT 350
物理防御 DEX 390
魔法防御 MND 334
素早さ SPD 600
運 LUK 466
スキル 《気配察知1》
ミウは極端に魔法防御が低く、セナもそんなに高いわけではない。
二人に☆7装備 『耐魔ローブ』を装備させているけれど、
賢者以上の魔法攻撃は耐えれても一回。下手すれば一撃もあり得る。
賢者クラスのクロノは全属性の攻撃が可能なため、属性攻撃無効があまり意味を為さない。
これは厳しい戦いになる。
「黒い海月はフラッグを設置~~~!! マスターKはまだ迷っているのかぁ~~~??」
まずい、フラッグをまだ置いてなかった!
僕はかなり損傷して崩壊寸前の場所を探す。
指二本でマップの拡大、縮小を繰り返し、探している条件に合う場所を調べる。
「え~~~っと……」
そして七階建てビル、地下駐車場がある場所にフラッグを置いた。
「これでよしっと」
端末を操作し[召喚]のボタンを押す。
「召喚! ミウ! セナ!」
二人の妹がフラッグの前に現れる。
「さてぇぇぇぇ! 準備はよろしいかぁぁぁぁぁ!?」
「3」
「2」
「1」
「試合開始!」
開始の合図で陣地からセナが素早く飛び出す。
「僕はセナをメインで見るから、
ミウは事前の作戦通りに頼むね!」
「任せて! お兄ちゃんっ!」
ミウの頼もしい返事を聞いて、セナをメインに移す。
今回はセナ奪取役。ミウが防衛役だ。
二人には、事前に指示は伝えておいた。
どれだけ二人が上手くやれるかが、勝敗を左右する。
セナは気配を殺し、建物の陰をうまく利用しながら、まるで忍者のように機敏に進む。
「そこの目の前にある建物前で《気配探知》を!」
すぐにセナはスキルを使い周囲の敵を調べる。
「敵反応、ゼロです」
「ここじゃないかぁ。大抵、【フラッグ】はみんなここを好んで、旗を置くんだけどなぁ……。
もう少し、東の方を探してみよう」
「了解です、兄さん」
移動しようとした瞬間、無数の炎弾がセナの頭上から降り注ぐ。
「建物の中にっ!!」
建物の入り口から転がり込むように入ると、
黒いローブを身に纏い、白い髭を長く伸ばした老人が静かに佇む。
手には、☆6装備 『賢者の証明』という高火力を誇る大杖を握っていた。
「そうか……考える事は同じか……」
慣れたプレーヤが考える事は
まず、始めに人気ポイントに来るのが定石だ。
黒い海月さんもそう考え、偶然にもかち合ってしまった。
目の前に居るのは紛れもない、彼のキーキャラクター。
想定LV.390以上。大魔導士を超越した 知識の探求者 賢者クロノ。
「セナっ! ここは退くんだっ!」
すぐさま踵を返すも、入り口を塞ぐように一人の魔導士が立ちはだかる。
「そんなっ……まさかっ!?」
僕の予想は外れた。
「あっちの勝利目的は殲滅か……」
想定LV.300以上。大魔導士アクモスはそこにいた。
『深紅の鎧』を纏い、静かにセナを見据える。
炎耐性の鎧を着るという事は、今回は炎魔術をメインで使う気だ。
恐らく、さっきの炎弾はアクモスの魔術だろう。
なら、この後の戦法は数パターン予想できる。
入り口一つの建物・炎魔術ときたら……
「セナ! 無理にでも外に出るんだっ!!」
その判断は遅く、
「大炎柱!!」
入り口を持続する火炎の柱で封じられた。
これでもう逃げ場が無い。
「残念だったな。マスターK」
黒い海月さんがオープンチャンネルで現れる。
その名の通り、黒い海月がアイコンだ。
「これでまず、一人」
すかさず僕もオープンチャンネルを開く。
「いいえ、まだ僕の妹は負けてませんよ」
「ふっ……。LV.392賢者クロノ、LV.322大魔導士アクモスを前に
この状況から逃げれるとでも?」
彼は自信満々にこちらを嘲笑っている。
このまま一方的にやられてたまるか!
どうにか、一矢報いてやる。
「ふふふ。じゃあ、今からお見せしましょう!
【紛争地】人気エリアからの脱出方法を!」
するとコメント欄は一気に沸き目に追えない程に加速する。
「えっ!? ここからでも入れる保険があるんですかぁ!?」
「おおおおお!! 知りたい!!」
「マスターはよ」
大見栄を張った僕は目を閉じる。
さあ、ここからどうしたもんかと……。




