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一話 「こんにちは、兄さん」

午前8時。

僕はHRが始まる少し前に、もう学校に到着していた。

クラスメイトの姿はまだまばらで、部活動の朝練で疲れ果て、机に伏している者。

昨日の課題を必死で解いている者などがいた。

僕も寝不足のせいか少し眠い。

昨日のランク戦での勝利が嬉しくて寝れなかったわけでは決してない。決してだ。

僕も周りと同じように机に伏せようとした時、教室の戸が騒がしく開く。


「マスター! 見たぜ昨日の試合!! 痺れたぞーー!!」


智喜がいつもの通り、騒がしく僕の前に現れる。


「マスターはやめてくれって……それにみんなお疲れみたいだから静かにしてやってくれ……」


辺りの目を気にすると寝ていた者は目を擦り目覚め、課題を解いていた者は鬼の形相で消しゴムをかけていた。

おそらく欄をずらして書いてしまったのだろう。ご愁傷様。

智喜は悪いと周りに一言謝り、話を戻す。


「昨日の勝負、圧倒的だったな!

それにしてもどうやってあんなにもレベル差のひらいたガーディアン達を倒せたんだ?」

「あぁ、それは簡単な話、バスターブレイクだよ」

「バスターブレイク?」


智喜は知らない技名に首を傾げる。


「ミウの必殺技さ。防御力を無視してダメージを与えられるんだ。

(たいと)のマリスティアには通用しなかったけど、

防御力がウリのガーディアンたちには凄く刺さったね」

「それだけであのHP量の多いゴッドガーディアンを一撃したってのか!?」

「いや、他にも巨大殺し、対地属性とか諸々のバフを盛ったけどね。

後は、ミウのスピードと物理攻撃力が上手く噛み合った感じかな」


正直、今回は装備を攻撃特化に全振りしていたから

武器性能はガーディアン達を遥かに上回っていた。

でも、あのレベル差の攻撃をミウが一撃でも食らっていたら、その一撃で負けていた。

全部の攻撃を避けれたのは、僕の指示がダイレクトに反映される点と、ミウの桁外れた運の高さだろう。


「そういえば、今年のランキングボーナス更新されてるから

500位記念にガチャ回せるんじゃないか?」


智喜の言葉で思い出した。

そういえばそんなのもあったな。

ずっとランカーワンを守っていたからそんな制度があったのを知らなかった。


「早く回してみようぜ!」


智喜は自分の事じゃないのに嬉しそうだ。

ガチャに命を懸けてるような男だからなぁ。

僕は端末を取り出し、マスファンを開く。

起動してもミウは話しかけて来ない。

まだ昨日の試合の疲れで寝ているのだろう。

ミウの居るルームには入らず、ガチャの画面に行くと

[500位記念!! 無料一回ガチャ]と表示されていた。


「☆3以上確定なんだぜ、それ!」

「とは言っても大抵、☆3しか出ないんだよね……。

僕は☆3のキャラも武器も、今のところ全部持ってるしな……」


ぼやきつつも見慣れた豪華な門の画面いっぱいに表示される。

いつも通り、真ん中に現れた[開く]というボタンをタップする。

するとつい最近、見た覚えのある演出が始まった。

画面が虹色に輝き、紙吹雪が舞い、賑やかなBGMが流れ出す。


「なんだこの演出!? 見た事ないぜ!?」


智喜は鼻息を荒くして僕の端末を食い入るように見る。

すると机で寝ていた生徒も、必死で課題をやっていた生徒も手を止め、

僕の周りに集まっていた。


「すげーー!!! 目冴えちゃったよ!!」

「課題なんかどうでもいい!! 啓太、早く続きを見せてくれ!!」


扉の前に人が立っている。

これは……もしかして……。

後光が差し、影となり姿はシルエットしか見えない

その後現れた[解放]というボタンをタップする。

光が激しく輝くと、軽装備に身を包み、一本に結んだ青髪を優雅にたなびかせ、

細くてスタイルの良い落ち着いた雰囲気の少女が現れた。


「こんにちは、兄さん」


少女はそう言って微笑む。


そう、僕にもう一人妹ができたのだ。

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