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解読書

ギャラリーに着くと駐車場がないくらいの車の量だった。とめるのに時間がかかると思って圭太は事件資料を眺めた。

「宇佐美史郎は画家としての活動より最近は記者としての活動に専念していたんだとすれば、今回の事件とかかわりのあることしかないはずなんだ。」

「犯人は靴跡と髪の毛を残しているのなら見つかるんじゃないのか?」

「前科とか警察官とかの話で一から探さないとわからないだよ。たいした証拠を残していないからね。鑑識も調べているし。」

絵はただのヒントという感じにしか見えていない。2人が車の中で話していると、窓をノックする音が響いた。運転席の窓を見ると管理人であった。窓を開けると人懐っこい笑顔を見せた。

「来ているのならいってください。展示している人用の駐車場を設けてますからそこに止めてください。ここまで反響しているのは久しぶりの風景で驚いていたんです。目立つと騒ぎになるので裏口から入ってください。」

車をギャラリーの地下の駐車場に止めた。関係者しか止められない上にお客が大勢来ないと画家でさえ止めさせてくれないのだ。裏口と聞こえがいいだけで勝手口といったほうが正しいのかもしれない。来ている人にはまったく見えない廊下を突き進んだ。一番最初にたどりつくのは管理人室だった。

「八木さんが来てくれると思っても見ませんでした。」

「俺たちが来たのは個展の状況を見に来たわけじゃないんです。一回見せてもらった村沢巧の最後の作品を見たいだけなんです。ほかのギャラリーにも用事があるので早くしないといけないんです。」

圭太の言葉に管理人は眉にしわを寄せた。嘉門という画家はあまり個展に足を運ばないことで有名なためいい客引きにでもなると考えていたのであろう。

「わかりました。とってきます。ほかの関係者が来るはずはないと思いますのでゆっくりしていてください。」

管理人は急ぐように出て行った。そこで生まれたのは沈黙であった。

「圭太、俺のことで問題を起こさないでくれ。おきてしまったら取り返しのつかないことになってしまう。」

「兄貴はそれでいいのかよ。画家はギャラリーにとって使い捨てのような世界にしかうつらなかった。売れている画家を利用しているだけなんだよ。」

源太郎の瞳は答えることはなかった。幼いときの苦しい気持ちなどよみがえられることはしたくないからだ。管理人の浮き足立つ気持ちには共感を得ることができなかった。

「あの管理人は元政治家という肩書きで客寄せをしているんだ。うそをついてまで客を集めることじゃないはずなのに・・・。画家は闇まで感じ取る人まで存在しているんだ。政治家のうそが招いた才能だよ。」

画家にとって必要なものかどうかは本人が決めることであるはずだが、提携している関係者が口を出したことによって消えてしまった才能だってあるのだ。それを取り上げるのは小さな番組の一部でわかりもしない世界を喜怒哀楽ですごしているのだ。源太郎の気持ちは圭太にとって解読できない暗号のように今はうつっている。

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