カーテンの色
源太郎は夢中なほど絵を描いていた。テレビの声も聞こえないほどだ。それができるのは圭太が会いに来たからだ。インターホンの音なしにドアが開いた。来た人はわかっていた。足音をさせながら落ち着く音を鳴らしながらだ。
「兄貴、久しぶりだな。」
「圭太。ビールでも飲め。入っているからな。」
彼は冷蔵庫からビールを出した。テーブルに缶を並べている。何時もの行動だから何も言わない。源太郎の手は少しの震えがあった。分からないことに不安でさいなまれているのだろうか。
「冊子をもって来たんだ。まじかで見ないとわからないことがあると思うけどさ。」
「加藤剛は認めているのか。テレビで散々バカにしたような言い方をしていたけど。」
「親父がすべて話しているから言い逃れするのはいけないと思っているのか、それか裁判でやっていないといって無罪にしてもらおうと企んでいると考えているけど。裁判では聞いてもらえないと思っているよ。簡単に考えるよ。」
2人は他愛のない話をして笑った。事件なんかがなかったら兄弟でただ話をしているだけなのだから。圭太はふとカーテンを見た。遮断するようにしまっていた。心の扉を鍵でがっちり閉めてしまっているように。見せない部分だろうと思った。
「冊子を見る限りでは同一人物と感じるな。名前を借りることができる人間がいるということはあり得るんだよ。」
村沢は絵を描いている途中に殺されたことは捜査一課の数少ない人しか知らない。源太郎は噂で知っていたことはあり得ることなのだ。画家として有名な人であるのだから。
「阿部は油絵を習っていたけど見せるようなことはしていたか?」
「あいつの性格は自分が納得できないと出さないからね。村沢さんに教えてもらっていたのなら書いても可笑しくない。」
源太郎の見解とすれば弟子の名前を使って同じ絵を描いたとしておかしくないのだ。2つの絵はつながったとき、事件は解決するのだろうか。政治家の権力を押し付けるだけしか能がないのだから。言い訳じみた言葉しか発しないのは罪深い。
「『炎の悪魔』と『デスの悪魔』はほとんど一緒だと断定することができる。タッチがわからないというのもあるけど犯人は絵には詳しくないはずだよ。」
「そうか。気になる事も出てきているし。」
圭太のビールの飲むスピードがいつもより早く感じた。何処かでいなくなってしまうのではないかと思ってしまう。源太郎は気持ちをひた隠しにしたまま喋った。明日が来るのが怖くなるのを少し感じながら・・・。




