ハートの見せ方
一ノ瀬は取調室にいた。向かいに座っているのは政治家の加藤剛であった。八木幸助とのつながりが絶対と勘違いをしている。窓が小さくていくら日が昇ってもそこまで照らすほどの光は入ってこないのだ。
「貴方が此処にいる理由がわかっているんですか?」
「わかるも何も八木幸助が逮捕しないと約束したんだ。あいつがまさか裏切ったのか。」
逮捕されるとなって怒鳴り散らした大人としてではなくどこかの子供のように駄々をこねたのだ。捜査一課の連中は見るに堪えないといっていた。
「彼は捕まっているんですよ。彼も殺人をいくつも起こしてるんです。息子に捕まるというふがいない恰好で終わったんですけどね。」
「息子って猛の事か。あいつはしないだろうな。息子って嘘をついた奴に捕まったのか。詐欺師と同じじゃないか。」
怒りを抑えることを知らないように震えた声で語るのだ。見苦しいのだ。取り調べをしていても並べるのはいかに自分が偉いかという関係のない言葉ばかりだ。忖度しかしていない奴等のくせに。
「知らないんですね。八木幸助には息子があと2人いるんですよ。それで無理矢理警察に入らせた奴が捕まえたんです。母親を殺しておいて金を奪おうとしたことが許せなかったんですよ。分かりましたか?もう貴方には政治家という肩書はなくなっているんですよ。人殺しというレッテルが貼られていることをしらないといけないですよ。それだから国民の声が聞こえないんですよ。」
一ノ瀬はあと一言を足したかったが出さずに飲み込んだ。テレビで見ていても無視をすることばかりしていたのだ。だから変わる事がないのだ。選挙に来ないのは嘘に過ぎない案を上げるだけでやろうとしないうえ、勘違いしかのように偉そうにするのだ。一体誰のおかげでその場所に立てれるのかをよく知るべきだ。
「貴方は有権者を殺したということでいいですか?総て認めますか?」
「はい。すいませんでした。」
まだ余罪はあるだろう。録画と録音をしているから裁判で嘘を語っても聞き入れることはないはずだから。掘り起こしたつもりがなくても出てくるだろうから。政治家は見えぬ影を追いかけて自爆をするのだ。
「貴方が認めるより先に認めた人がたくさんいるんですよ。よくやったとか思わないでください。自首もできなかった、しなかった人間がほめられるわけがないじゃないですか。それも人殺しなんですから。権力で潰すのはふがいないと思ってください。沢山の人を裏切ったということも心の目で見て下さい。」
心の目なんてないが心の目があるつもりじゃないとわからないことだってあるはずだから。




