上の縛られるもの
一ノ瀬は捜査一課という窮屈なところにいる。上からは圧力がかかりやすい場所であるのだ。幼い頃家族を亡くした。辛い経験とまとめられるのは嫌なのだ。自分の机は殺風景なほど何もなかった。
「一ノ瀬、刑事部長が呼んでるぞ。会っておけ。」
「わかったよ。どうせ、脅させれているのと同じことをされるんだ。お前にはわかりっこないよ。」
声をかけた部下は少し下を向いて去っていった。みな、権力で脅されているのと同じことをされているのに堂々と戦おうとしないのかと絶望しながら立ち上がった。刑事部長は偉そうな態度ににらみつけるような眼をしている。
「なんですか?」
「一ノ瀬、またあの2人と話をしているのかい?いい加減にしたらどうだい。あのお荷物と同等の扱いをされたいのか。」
刑事部長の声の張り方の異様さは知っている。どうせ出世しか考えていないのだ。被害者を無視して偉くなるのだから大したものだ。
「俺はかまいませんよ。彼等を見ていても苦に思っているようではないでしょうしね。貴方みたいな人より彼等のような人なれれば光栄ですから。」
「出世がかかっていると知ったらどうだ。」
口封じと変わらないことをしようとしているのだ。いらないくだらないものは決して受け取らないと心に決めた。
「そんなものが必要ではないので他の人にでも渡してください。あの事件が警察が踏みつぶしたといっているということは分かりましたから。もしあの事件の真相を知ろうとしているのを止めることはできませんよ。俺には八木と工藤がついてますから。伝えて下さい。馬鹿げた真似をするなと。」
静かなる怒りを訴えるしかなかった。八木は八木家の秘密を知るもの。家族がいる警察では脅しとして効く切り札なのだ。内容は知らないだろうが警察自体が疑われるようなことだと怯えているのだ。人を嘲笑うのはよくないが此処にいる人間は笑えてしまう。
「わかった。上に話してみる。だから、八木と工藤と話してくれてかまわない。ただ八木には話すなといっておいてくれ。」
震えた声でつぶやくのはさっきとまるで違う怖いものを見たような声を上げた。八木には伝えない。話すななんて。話したいときに語ってしまえばいい。闇に隠れた飛んでもない真実を知るべきなのだ。国民に知らせずに都合の良い態度ばかりするのはどこぞの企業と変わらない。人を殺すこともできる職業ということを知らないからああいう態度をとってしまうのだ。何時も頭の中で思う。くだらない。みっともない。