進むための道
八木は何処か人に言えないような空気が漂っていた。一緒に住んでいないとしても身内を捕まえるということは勇気がいるということなのだ。今更だと胸に刻んでいたのだが・・・。彼はパソコンで宇佐美について調べていた。週刊誌で政治家を敵として扱っていたのだ。何故、警察と民間企業のわいろ話に食いつたのだろうか。
「八木、自動販売機のとこで話さないか。」
「一さん。俺はまだ終わってないんですよ。阿部登や村沢巧の事を調べないといけないですから。」
「お前、そんな状態で事件の事を知ろうとしてはダメだ。むしろ逆効果だ。事件に飲まれてしまってからだといけない。分かってるだろう。」
八木は何も言わずただ頷いた。母の事もまだどこかで思っているのではないだろうか。裏切っていると思っていると。一ノ瀬は自販機で普段買うコーヒーではなく緑茶を買った。気分じゃないとか言える状態ではないのだ。ペットボトルのお茶が半分くらい減ったときに彼はやってきた。自動販売機で何も買うことはなかった。
「話とは何ですか?」
「今回の告発は俺や工藤のためだろう。お前は素直に話すことがないのは昔のいや、今でもかもしれない。八木幸助や猛とかの周りの行動から信じれなかったんじゃないのか。そして少なからず源太郎さんの事も含んでいるんだろう。」
「俺たちは確かに信じられなかったです。俺に関しては自殺未遂をして迷惑をかけているんですよ。源太郎さんも気が気じゃないのはわかっているんです。それでも忘れてはいけないと思ったんです。源太郎さんくらいは安心して暮らせるようにマンションを進めたんです。俺はアパートで構わないと思って。」
圭太が話しているのは過去の罪滅ぼしを言っているかのようだった。忘れることのない出来事であるだろう。大切にしている人がいつしか待っていてもかえって来なかった。親父は役に立たない。母親の家族は縁を切ったのを理由にあまり関心をもってくれなかった。救うという言葉は簡単に言えるが行動は簡単にできない。自己責任と暴言を飛ばしておいて反省をしていない恰好でするのはいけないだろう。上司に言ってもらうのは微塵も感じていない証拠のように思える。分かってもないことばかりに手を加えているのだ。
「源太郎さん。書き途中の絵を破っていたから連絡くらいすればいいじゃないか。いくらまだ事件が済んでないとしても肉親を安心させることができないといけない。」
「そうですね。よってみます。源太郎さんはスランプなんてないを一番知ってますから。」
近くにいないとわからないのを知らないといけないのだ。




