過去の演技
一ノ瀬はある小学校へといった。白く塗装された建物が太陽で輝きを増しているように思えるが、それは幻と思えてしまうほど曇りだった。平日であるため、子供の声が響いていた。中に入って職員室へと向かった。
「すみません。警視庁のものなんですけど八木兄弟について知っている先生はいませんか?」
「あぁ、八木って八木幸助さんのところですよね。」
「そうです。」
周りの先生は慌てることなく処理しているように思えた。そんなことがよくあるのだろうか。応接室へ案内された。
「あまりにも冷静ですけどこんなこと過去にあったんですか?」
「ありましたよ。八木幸助さんの弁護士が何度も何度も来ましたから。それと最近では週刊誌の記者が来たんですよ。」
応接室は何処か寂しさを感じてしまうような場所であった。外を見ると遊んでいる子供がいる。いじめなんてことはないのだろう。政治家のように圧力をかけるのは親が権力がある子に限られるはずだから。それで解決することなんてほとんどないのだから。その部屋で人が来るのを待った。ノックする音が聞こえたので返事をした。
「八木幸助の息子の担任を務めてました。鈴木です。」
「ここに週刊誌の記者が来たそうですね。教えていただけませんか?」
「宇佐美史郎です。八木幸助の事を調べているみたいでした。」
宇佐美は一体どこで知ったのだろうか。分かる事があるのであれば調べたいと思ったが先日殺されてしまった。闇に葬ろうと考えた人がいるのだから。
「3人は一体どんな生徒でしたか?覚えている限りでいいんです。」
「源太郎君は外に出ろと言われれば出るけどあまり外へと出なかったんですよ。教室で帳面を出しては書いてましたよ。絵を。うまかったな。今でも思いだすよ。此処にも飾ってあるんですよ。ほら。・・・。話変わって猛君は虐められてましたよ。お父さんの自慢ばかり言って周りになじめなかったのでしょう。弁護士がやってきては脅してましたよ。あんたらの人生を左右することができると。それだから大したことのない私立の中学を受験したみたいですけど。圭太君は源太郎君と同じ感じですよ。それでも周りには人だかりで人気者だけど多くはいつも語らないんですよ。無邪気になるのは参観日とかでお母さんを見つけたときですよ。」
3人は源太郎と圭太は能勢千尋に育てられ猛は八木幸助に育てられた。こんなにも違ってくるのか。権力で偉そうに寝そべっているのと謙虚でいるのとでは全然違うのだと思った。事件はまだ終わっていない。それはずっと終わらないだろう。上に立つものの気持ちが変わる事がない限り。




