愚か者の正義
源太郎はマンションにこもっている。絵は描いているがあまりにも手が進まないのだ。テレビは忘れかけているのかもしれない。ずっと流しているときはこれでもかとしつこくしているのになくなるとなったらすぐだ。すたれてはいけないことだってあるから。忘れていないことが源太郎にはある。それは画家になった理由だ。圭太の純粋な感想が画家になる事を選ばせた。保育園に行っていると周りから褒められることがあるがどこか世辞を言っているような感じがした。家族はないと思ったから。それに圭太はよく見ているからうれしかった。
「おにいちゃん。えがうまいね。がかになって皆が暮らせるくらいのおおきな家を建ててよ。」
圭太は今どんなところで暮らしているのだろう。刑事になるつもりはなく弁護士になりたがったっていたのに親父は今更ながら口を出したのだ。その時には人殺しである事はわかっていた。それに従わなくてはどうにもならない心境がどこか虚しさを覚えた。いくつコンクールで賞を取ったとしても喜びはあまりなかった。刑事になりたくないのになった圭太と夢をかなえた源太郎とではどこか違うと思ってしまっていたから。おふくろが死んでからどこかですれ違っているのだろう。互いの気持ちを知ろうとしてわかろうとして奮闘しているのはわかっているから。源太郎はめったに出ないバルコニーへと出た。風が吹き付けている。此処にいるよと教えてくれているようでもあった。あれから圭太からの連絡もない。冷蔵庫には圭太のために缶ビールを入れてある。
「あいつは事件の事になると抱えるものが多くなる。親父が犯人の事件はいくつもあるのを知っているのは警視庁でも数少ないだろう。解決する事件を選別するのはよくないと教えてくれたのはおふくろであるはずだから。」
返事がかえってくるのを特別待っているわけではない。心配で心から漏れているのかもしれない。
「偽善者みたいな屑は政治家に多いな。自分の事にしか考えていないのに他の事もキチンと考えているようなフリは一人前。それじゃ伝わる事は少ないだろうな。逃げて伝えることを怠るのは政治家として失格だと思う。真実から逃げて忘れさせようと企むのはおかしいではないか。」
圭太は時々いっていた。政治家とかは小さな小さな器しかもっていないのだ。だから他人の気持ちを知ろうと考えることはないのだ。どうやれば自分の思い通りにできるかを研究だけをしている愚か者だ。




