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心の花

数か月後に聞いた話だった。おじさんは千尋を呼び出した。あることで仕事を休んでいるのを同僚から聞いたからである。店が開店する前にしっかり話を聞きたかった。おばさんも一緒に。

「おじさん。急に呼び出してどうしたんですか?おばさんも深刻な顔して。」

「八木幸助と結婚することになったみたいだな。聞いた。どうして知らせてくれなかった。」

千尋はまっすぐとした目で見つめているのはありもしない助けを呼ぶ声かもしれない。自分の叫びも誰かに聞いてもらえるかと思った。両親とは縁を切るということを言われた。したくてする結婚ではないと叫んでも届かないのを知ってしまって黙っていたのかもしれない。

「両親に縁を切るって言われたんです。警察もやめてしまうかもしれません。だから祝ってもらうようなことはしなくていいんです。子供もしかすると取られてしまうかもしれません。殺されるのもすべて覚悟の上です。帰れないんですよ。」

「千尋さんはそれでいいの。そんな人生寂しいわよ。だから今すぐわかれるのが身のためだとしか言えないけど。」

千尋は下を向いて輝いた粒を抱えている。本当ならわかれるというだろう。幸助は別れると警察にいられなくなるようにしてやると脅されるように言われた。それなら人生捨てて生きるしかない。死んで生きるしかないと。

「わかれたら警察をやめさせるといわれたからせめてやりたいことくらいはして死にたいと思ったからですよ。何も手元に残らないでしょう。親も親戚もいないんですから。いくら声を上げたって届かないことがあるくらい知ってますから。」

「結婚して助けが必要になったらいつでもよりな。近所の人たちもどちらが正しいかなんてよくわかると思うから。子供ができたら奪われないようにしなさい。1つでも大切だと思うものくらい守りなさい。いや守りたくなるから。」

彼女の手は何処か震えていた。1人になることを選んでしまっているのに助け船を出してくれていることに感謝した。警察に入ったのは誰を助けたいと思って入ったのになぜ事件に巻き込まれてしまっているのかわからなくなった。1人で死んでいくことになるのだから。親が聞く耳を持たなかった。それは望んでいないことを伝えてもデマでかき消されてしまうから。噂という厄介な種をため込んでそしていつしか誰にも分らずに花を咲かせているのだろう。本当の花みたいにいつしか忘れ去れて枯れていく。救われることは少ないものであるにも関わらず。

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