矛盾
阿部の事件で絵が関わっているため、源太郎は警視庁に訪れていた。圭太に会ってわかったことを報告するためだ。ただ捜査一課に入るのはいけないと思って廊下で立ち尽くしていた。
「源太郎兄さん。どうしてここにいるんだ。民間人が来ていい場所じゃないんだ。帰ってくれ。理由はないんだろう。」
「お前は憎い親父に似てきたぜ。俺は用事があるから来たんだ。お前みたいに地位を求めていないからいいだろう。民間人がいないと事件が解決しないこともわからないのか。聞き込みをしても答えてもらえなくなるよ。」
ベンチに座っている源太郎が不思議に思ってくる。親父を嫌う2人にとっては猛はその仲間に過ぎないことを思い知らされている。
「お前みたいに気楽な職とは違うからな。何時も忙しいんだ。帰れよ。」
「かまうな。俺はあんたみたいに偉そうにするための地位など嫌いだからな。忙しいというのは言い訳だな。忙しいのなら構えないはずだろう。矛盾があるぞ。」
源太郎が画家になったのは夢をかなえるためだといっていた。猛には夢などなかった。
「レールを走る列車だな。親父の言いなりだ。知ってるか。おふくろを殺したのは親父だって近所で噂が立ってるのを。何時か脱線事故を起こして落ちてみればいい。圭太は良い奴だ。お前みたいな育ち方してないからな。」
「違うね。お前らが悪いんだ。親父が言っていたから。」
「それをうのみにするのか。事実を知らないのに知ったかをするしか能がないみたいだ。だから近所から嫌われているのもわからなかったんだよ。小学校の時にいじめがあったのはお前が悪かったんだよ。偉そうに周りに自慢するばかり。面白くないと思う奴は必ずいるはずだよ。相手の気持ちがわからないから被害者のことにも寄り添うことができないんだよ。」
正論をダーツのように的を撃っていく。聞こえないように耳をふさいでも聞こえるだろう。逃げることができないのだから。週刊誌はデマを流すのを得意とする。嘘でも正論っぽくするなど見苦しい。さっさとやめるべきだ。うざいだけ。金しか考えていないからそんな行動しかできない。何時か罰が当たるだろう。自殺する人がいても何も感じない人達よ。人殺しと同じかそれ以上の十字架を持たない限り同じ過ちを繰り返すだろう。無責任なヒーローになり切れない悪役という感じだ。救っていない。暴れて散らかしているだけだ。欲望に沈んだ軽い塊だ。ネタなんて考えるものと勘違いしているみたいだし。人を傷つけても何もしないでもいいらしい。子供には謝れと謝罪を覚えさせるくせに矛盾の塊だ。よく考えろ。




