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かえる場所

暗い街並みをしているのに明るく着飾っているように映ってしまっているのはやんでるからなのか。みなが感じてることなのか。よくわからないことだがただもくもくと歩いていると暖簾を出しているやせ細っている男性がいた。

「大将、話したいことがあるんだ。開けたばかりだけど閉めて貰ってもいいですか?」

「いいよ。特例の一人だからね。俺がそう決めたのは・・・。中に入ったら言おう。」

店の中は普通の居酒屋だ。昔ながらのなつかしさを感じるものだ。一ノ瀬は暖簾をしまう大将を眺めた。ジョッキに冷たいビールを入れてカウンターに出してきた。

「捜査一課の奴には前までは開けてやらなかったんだ。何処か嫌いだった。けどね。八木圭太君が来てから彼だけは違うと思ってね。彼に関わる人だけは入れて貸し切り状態にしても惜しまないことにしたんだ。」

「そうだったんですか。八木がすべてを変えて言ったんですね。ただ親に反発しているみたいですけどね。大将もわかるんですね。」

まだ冷たいビールを飲んだ。つまみも簡単なものを作っていた。鑑識もきていることがわかる。資料を広げても苦情めいたことが言われないのがいいんだろう。大将はキッチンの上に写真を置いていた。家族写真だろう。笑顔でいる。

「大将は家族がいるんですか?」

「いるよ。一ノ瀬君とは違ってね。喧嘩もするときもあるけどいいもんだぞ。何時か持つだろう。君も。優しさも感じるからね。」

警察を嫌っていた人が八木だけは認めた。近くを通る刑事を見たのだろう。この刑事だけは何処か違うと。

「八木も家族がいるとは思ってないみたいです。たった1人の家族と思っているのは八木源太郎。画家の嘉門だけですよ。」

彼は少し寂しそうな顔を鏡にように映す。つまみを食べながら飲んだ。一ノ瀬は事件のことを明かすべき人は限られていた。見づらいガラスからうつるのは現実を遠くから見つけているようだった。

「大将、八木と工藤とかが来たからうまいものを食べさしてやってください。」

財布から札を2枚出した。ある意味つけをしてほしいと願っているのだ。

「わかったよ。君は事件のことはどうしているんだ?」

「隠れて調べてます。八木もついてますし、鑑識も協力的です。工藤もいます。もう1人じゃないんだって今更ながらに思ったりしますしね。」

大将は太陽のように笑った。言葉がうれしかったのだろう。1人じゃないと気づけたことであまり無茶をしないと思っているようだ。一ノ瀬は実家に帰ったような落ち着きのある場所であるから良く訪れる。八木は今もどこかで事件を追っている。真実を見つめなおすために。終わらない線を描きながら。


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