現場
八木と工藤は現場にいた。自宅と紙では書かれていても一軒家なのかアパートなのかマンションなのかによって違ってくる。そこで経済状況という知られたくないこともわかってしまう。警察は個人情報について守ってなんかいない。だって、身内に犯罪者がいたらなれないのは個人情報を無断で扱っていると宣言しているようなものだ。時代に追いついていないのは警察だと思ってしまう。
「阿部は良い会社にいたらしいな。けど、やめている。同僚にも言っていなかったのがどこか引っかかるな。夢とか愚痴とかよく話すものだろう。」
アパートであって殺風景な部屋だった。最近あまり家具とかを置くのを嫌がる。それならいいのだが、違う意味なら調べないといけない。
「社長に目をつけられるような人材であったみたい。行動も早かったために一時は秘書にさせることで話し合ったらしいが阿部があっさり断った。」
工藤は調べるのが早いので頼り切っている。たいてい社長に目を付けられるものは進んでいいように行動するが阿部はしなかったといえる。むしろクビになったなることを望んでいたのではないのか。隣の部屋に聞いてみた。
「阿部登さんについて話を聞きたいんですけど。」
「阿部さんね。仕事から帰ってくると必ず画材を買いに行っているみたいでしたよ。趣味で絵とか描いていたんじゃないか。」
阿部の部屋には絵に関するものが一切なかった。何故なかったのか?犯人は絵を盗んだとしか思えなかった。
「画材は車とかに載せてませんでしたか?」
「さぁ、そこまではわかりませんね。」
歯切れの悪い答えをする中年に少しいらだった。阿部はなぜ画材道具が部屋になかったのか。店がわかればわかることだってある。
「わかったことがあればいつでも連絡をください。警視庁捜査一課の八木か工藤を指名してもらえればいいですから。」
2人は一礼をして去った。現場はあくまでも殺人が起きたとは思えないようなほどきれいすぎた。おかしいと思ってしまうほど。
「工藤、このあたりの画材店について調べてくれないか。きっと阿部についてどこかでぼろが出ると思う。」
「画材店なんてこの辺になくなってきてるからね。すぐ見つかる。」
「他の一課の奴等にはばれないように頼むよ。そうじゃないと余計な情報で入り乱れる。それだけは避けたい。捜査会議もとりあえず出るから。」
工藤は頷いている。そして、わかっているというように。車は勢いよくエンジンをかけた。事件の車は走っている。追いかけるしかないのかと思うだろうがどこかで追い抜いたとき逮捕できると思う。