迷宮入りの・・・
圭太の動きは確認してみるしかなかった。必然的に沈黙が生まれている。長かった。重かった。それを遮ったのは榛原の携帯の着信音だった。彼は空気の重さに驚いて隠れた。
「もしもし、何かわかったのか?」
「えぇ、八木さんがなぜ弁護士になりたがったのかがわかりました。彼の大学の同級生に話を聞くことができたんですよ。最も信じられないのが警察の仕事だったといってました。2人の裏切りものにさんざんになってますからね。弁護士になるといっていたのも画家専門でやるつもりだったみたいです。源太郎さんのためですよね。」
部下であるがある種後輩のように考えてしまうのだ。そんなことより弁護士になることの意義を見出していた気がした。画家には複雑なことがある。著作権とか数々の問題に包まれるのだろう。こんな夜明けのような時間であっても答えくれたことが感謝したかった。
「画家専門にやっている弁護士なんていないよな。民事とか刑事とかいろいろあるから特定のことをすると収入に困ることになりかねないから。」
「それでも守りたかったんだと思います。人の切り開いた道はあまり好まそうじゃないですか。あの人らしいですよ。」
榛原にとって光がもたらされたと勘違いしていたのだろうか。部下に礼を伝えきった。圭太の前に堂々として立った。
「八木さん、弁護士になりたかったのって源太郎さんのためじゃないですか?」
「そうだ。兄貴にはくだらない事件で画家という仕事を失ってほしくなかった。俺の予想を超えるほど兄貴の絵は描きづらいことがわかってほっとしているんだ。」
「圭太そうだったのか・・・。」
源太郎の目は大きくなっていた。驚きに満ちていた。言わなかったのは本当にやさしさなのだろうか。もがけないことをわかっていたのだろう。もがいて埋もれるのは恥だと感じていたのかもしれない。人はいくらかの波にのまれるのは無常にも大体決まっている。そこから顔を上げるのすら苦労するだろう。それを一心に認めてもらおうとするのだろう。開拓したくなかったら人と同じ道を探して苦しんで声を上げるか叫びをあげることができずに縮んでいくのだろうか。
「人には伝えなくないことだってあるからな。兄貴には絵に集中してほしくてできるだけ邪魔になりそうなことを隠した。それがよかったみたいだ。」
圭太からは安堵ととらえれる声で語っていた。此処からどう向けていけば救えるのだろうかと迷宮に入ってしまったかのようだった。




