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数える時代

「ネットが生まれて何がいいんだ。人を傷つける道具になる。匿名という看板を利用しているだけだ。卑怯者は逃げることを考えるんだ。」

圭太の言葉は世を憎み生きることしかできなかったのだ。人の発言すべてに反応していたら疲れるだけであるのだ。無駄な時間の活用なのだ。国が偽って金を使っても最初だけ口答えをする子供みたいでみっともない。

「俺はすべてを失っても何も残らない。もともと何ももってないんだからな。大切なものなんて探したところで見つかるものじゃないし・・・。」

世間の言葉を無条件で信じる哀れさを感じているかのように冷酷な乾いた笑いをした。彼にとって何が生きがいなのだろうか。

「八木さん、本当にこんな生き方が正しかったんですか?そんなの悲しいじゃないですか。」

榛原の悲痛な叫びだった。全てを否定されたかのようだった。霞にも思っていなかったことが肯定されたのを本人によって否定されたのはむなしいだけだった。

「悲しいとかの感情はあの時に捨てることにした。何も信じなければ絶望もしないだろう。絶望とかいうものを忘れるほうがいいんだ。思い出も同じことだよ。本当に情けないよ。」

政治家に信頼なんかしていないだろう。裏切ることが日常の彼らにとっては。騒いでも聞かないのだから。期待なんて無駄な体力を使うのと考えるのだ。

「それは違うだろ。圭太、つらいことも痛いことも飲み込んで生きていくんだ。俺が書きたかったことはそれだ。お前は感じ取っていたんじゃないのか。」

源太郎の声を聴くには耳を傾けないといけないほどだった。捨てた感情なんてないはずだ。裏切りを受けたとしても・・・。

「八木、それでいいのかよ。お前には守ることがあったんじゃないのか。もう済んだのか。人を傷つけていいのか。」

工藤の手にはこぶしがあった。汗が染み出るほどだった。失ってしまうのはぬくもりであるのはわかっていた。事件に遭遇しても冷たいものしか感じないのだ。一ノ瀬は観覧車に近づいていた。死んでも守り抜きたいのだろう。

「一さん、それ以上近づいたらいけないですよ。貴方なら創造できますよね。俺は安易な考えなんかじゃないんですから。」

彼の銀色の輝きが増していた。空は夜明けが近づいている感じがした。本当にむなしいだけなのだろうか。二度と戻れない世界に立ち入ったことがあるのだろう。

「俺にとって死というのは希望なんだ。立ち入れなかった区域に入ったことで逃げ道ができたのかもしれないな。」

無責任のスパイラルに入った人間が棚に上げて偉そうにしていい時代なのだろう。反省のできない人間が無駄なのだ。改心なんて・・・。そんなことを考えてもいいのだろうか。大量の金をちびちびと削減するバカがいる限りは。


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