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過去の思い出は・・・。

千尋は仕事に追われている日々から解放を求めた。2人が行きたがっていた遊園地に行こうと思った。2人は中学生であまり母親と行きたがらないのはわかっていたが声をかけてみた。

「今日、行きたがってた遊園地に行かない?」

源太郎は見るからに不機嫌な顔をしているが、圭太はまんざらでもなさそうにこちらを見つめた。

「俺は嫌だよ。彼女ができたら行くんだ。それに受験生だしさ。」

「いいじゃないか。息抜きだと思っていこうぜ。おふくろがついてこいって言ってるんだ。おごってもらえるんだから。」

彼のなだめ方は裏を読みすぎていて困るがそれが息子であるというのが一番の難点であるのだ。千尋の服装があまりにもおめかしにも思ったのだろうか。

「そうだな。おふくろは事件とかあって疲れているだろうに。」

「大丈夫よ。仕事を仕事と思わずに作業と思えばね。それにお父さんも悪い人だから簡単にやめさせてくれないのは理解済みだし。好きな仕事がいやになるのは嫌ね。」

千尋は圭太が生まれてすぐに隠れて離婚届を出したのだ。それもわかっているのだ。グダグダ言っているうちに車に乗って出かけていた。遊園地はできて数日たっていたのもあって行列もほどほどだった。

「どう?いいタイミングだったでしょ?」

「そうだね。俺はもう少し少なかったらよかったな。」

観覧車のかごを見つめた。圭太はつぶやくのは小さいのは知っている。

「そうだ。此処で写真撮らない?」

「いい記念になるわ。こんな遊園地は運営がうまくいかないとつぶれるのはわかりきってることでもあるし。家族写真があまりとれていないことに後悔したくないから。」

千尋の桜の花のような輝きを見せびらかしていた。子供と大人のはざまを生きているのだと思っていた。兄弟はそれはもう公認しているようだった。観覧車の前に立って自撮りをしようとしていると声をかけてくれる女性がいた。

「写真、取りましょうか?」

「すいません。」

腰の低い千尋らしい受け答えだった。3人はぎゅっと幅を縮めた。笑顔を見せた千尋とぶきらっぼうに笑う源太郎、真顔に見えて少し笑っている圭太が映っていた。これが最後の家族写真になるとは思っていなかった。楽しかった時間はいつしかセピア色に染め上げっていたのだ。色がないモノクロに染まったのは事件の真実を知ってからだ。なんだかんだ言って苦労を知っていたからこそやっていけたのだ。画家になったのは圭太のためであり、千尋のためだったのだ。数知れない後悔と悔しさがあった。失うのはむなしいだけだ。

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