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過去の写真

一ノ瀬が鑑識専用の部屋に向かうと顔を腫らした源太郎がいた。手を付けてならないと思って鑑識の人達がせっせと働いている。工藤は下手な慰めをしない。相棒としていつもとは言えないかもしれないが、事件が起こるたびに呼び出された。それでもどこかで守れるとか幻想を抱いていたのだろうか。ソファには重さに耐えきれずヘタレていた。革製品も価値が下がっているように思った。

「源太郎さん、ギャラリーの名前を教えてくれないですか?そうじゃないとわからないですよ。」

榛原が問いただすとはいいがたいほどの聞き方だった。答えるつもりなどないのか床を見つめていた。源太郎の秘めた声を聴きとれなかった。聞くことができると思っていたのが間違いだったのだろうか。

「貴方は有名な画家になっても大切なことがあるでしょう。八木は多くは言わないのは伝えないのだろうから。」

「あいつは画家になることを望んだのは俺の復讐を抑え込んで自分の復讐を膨れ上がらせるためだったんです。」

答えになっていないような言葉を発することしかできないのだろうか。彼の瞳はガラス玉のように不気味に輝くことしかできないようだった。

「ギャラリーがわかったんです。電話番号がわかったんです。此処までくれば見つかると思います。」

「すいません。これ以上は手間をかけませんから、居場所を見つけてくれてありがとうございます。」

彼がおいていった言葉は最初からわかっていたようなものだった。無駄骨をしたと考えそうになった時、一ノ瀬はある絵を思い出した。

「遊園地か。遊園地に行っている可能性があるな。」

「それって何処ですか。」

「わからないが、たぶんつぶれた遊園地を探してくれないか。警察官で忙しいときとかはできるだけ近場で済ませたいだろう。能勢千尋が殺されたのは能勢がいた交番が忙しい時期だった。事件をもっていたとすれば嘘をついたといわれないために行ったとしたらそこしかない。廃園した遊園地を探してくれ。」

一ノ瀬の言葉で榛原はただ大きくうなずいた。見つけることならできるからだ。思い出は消したつもりでも淡くも色づいているのだ。写真が再びモノクロになるのなら壊すことができないが色づいたものをとどめることができると思った。

「ありましたね。その遊園地、山辺進が作っていますね。皮肉としか言えないです。廃園しても取り壊しされていないのは壊すのに費用が掛かるから見たいですね。」

何処までも追いつめることができないのだ。


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