過去の過去は現在
山辺の態度は人を殺したことに対する反省より自分の立場をわかってもらえればいいという自分勝手ともいえる言い分を披露していた。政治家は今や大量生産のロボットのように動いている。設定された機能しか使わないうえに更新ということも知らないため変化もない。人の言った言葉を盗み盗まれということが現実だというのなら政党を変わるだの変わらないだの出るとかでないとか小さな会話を聞きたいわけじゃない。子供の口喧嘩くらいの能力をもっていないのだろう。
「すべて話すことができないとすると逮捕状もあることだし。俺はあの人の指示で動いているのと同じだから勘違いするなよ。今の警察はいらぬ真実といわれようが知るべきなんだから。」
「どうして俺がかかわっているとわかった。」
「単純だ。画家が描いた絵を見た。書き手が同じだとかそういう情報って画家が一番わかるからその人の助言を受けたに過ぎない。」
息子が殺した村沢巧は、画家という根は変わらなかった。むしろ変えることができなかった。それは宇佐美史郎も同じだった。一度ついた天職から離れることはできないのだ。画家も記者も本人の名だけで通用するからできると思ったのだろう。画家を食い物とする闇のビジネスに警告を与えるつもりで・・・。それも道半ばとしか言えない。弟子としていた阿部登も殺された。
「あんたにない才能のある奴を殺す指示をして楽しかったか?嫉妬やプライドの塊のあんたには芸術という精神の芸はわからないんだ。」
「無我夢中だったからな。わからないよ。ただ此処まですごい人間だったとは知らなかった。」
「いや、知っていただろう。逃げ道を作ることは裁判では通用しないよ。ただでさえ暴力団とつながっていたんだ。これだけでは終わらないし、終わることはないよ。」
一ノ瀬の頭には殺された両親が映っていた。燃える店で殺された。周りの人達も助けようとしてくれたが助からなかった。そして思い出の場所も国という偽善者によって変えられた。恨みを生み出すための材料をかき集めているとしか思えなかった。鉄のドアが鳴っていることに気づいた。山辺をにらみつけた後、ドアを開けた。立っていたのは工藤であったが尋常じゃないほどの体の震えが表に出ていた。
「一ノ瀬さん、さっき源太郎さんが来て八木と携帯がつながらないうえに含みを持った言葉を置いて切ったみたいらしいんです。今、榛原が電波を探しているみたいですが、簡単に見つからないと思ってい・・・。」




