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異論の聞けない偽善者

一ノ瀬は豪邸と呼ぶにふさわしいマンションに来た。此処に訪れるには理由が必要なのだ。気を引き締めて自動ドアをくぐった。部屋番号を入れると軽快な音が鳴った。それは二度くらい続いた。

「はい。」

「あのー。一ノ瀬徳人ですが、源太郎さん。お話ししたいことがあります。」

「わかりました。では、上がってきてください。」

一ノ瀬を迎え入れるように扉があいた。エレベーターに乗りながら思った。山辺の手が近づいていることを知らせることが本当にいいのかと自問自答をしたところで答えを探しているのかそうではないのかわからなくなった。エレベーターの進歩でつくスピードが速くなったが、心の準備ができぬままついてしまった。彼はもう一度仮のインターホンを押した。すぐにあいた。

「あいていたので勝手に入ってもらっても構わなかったのに。どうぞ。」

リビングは以前来た時よりもすっきりしているように思えた。リビングで個展を開いている状態であったのに今は違う。テレビの近くにあるテーブルにコーヒーを置いた。ソファにぐったりと疲れ切ったような顔を乗せた源太郎が座った。

「それで話とはなんですか?」

「山辺彰浩を逮捕したことにより父親である総理大臣の山辺進から脅されたんです。殺人予告と変わりないですよね。」

源太郎の表情はカラフルに変わっていた。色とりどりの表情をほほえましいと思ってしまうのだ。色をそろえ終わると無色になった。

「圭太の態度はどちらかというと落ち着いているとは思っているんですよ。山辺彰浩の逮捕をこの時にしたのは俺の個展にかぶせて深く入りこめないように計画していたんだと思います。」

「個展を要望したのは誰ですか?」

「圭太ではなくて圭太がよく行っているギャラリーが客集めにやってほしいといわれて今やっているんです。今の個展は何処のギャラリーよりも豪華にやってもらっていて講演会も計画に入っているんです。けど、何かあれば抜けるつもりです。俺の最後の家族ですから。」

沢山の言葉に込めた思いはすべて圭太を助けるつもりであるというのを感じている。源太郎のコーヒーは黒から茶に代わっていた。

「テレビにうまいこと言ったと自己満足の塊の政治家に脅されても大したことはないですよ。豪華な服で取り繕っている猫と変わらないですよ。今、解散するとか言って大義もないうえに自己保身に力を入れるおかしな奴なんですよ。誰も正気だとか思ってないんじゃないんですか?」

「テレビでさえも異論を唱えてますもんね。」

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