打ち明ける時
八木はオフィスビルに入っていった。確信はできているのに踏み切れないことにどこかやるせないように思ってしまうのだ。変えられない過去と戦っているのと違うのだからと言い聞かせるしかないのだ。すりガラスから見えるのは笑顔なのだ。扉を開けると受付の人が社長室へと導いた。
「社長は貴方が何時かくるだろうから来たら嫌な顔せず迎え入れてくれって。今までそんなこと言われたことないんですけどね。」
「こら、言い過ぎだよ。警察と週刊誌が一緒にやっている時点で法に反しているのだから。肝に銘じておくようにしてもらわないとね。」
「わかりました。」
父親が娘を叱るほどきつくなく注意する程度の語りだった。毎回入るたびに落ち着いてしまう。服装もスーツではないため堅苦しさは全く感じない。
「それでどうです?山辺のネタで揺さぶるのって。」
「いい感じに刺激を与えてますよ。かけたことないのに党から圧力をかけられそうになったんですけど、まぁ表現の自由までは奪えないですよ。偉そうにしているのは最初だけで都合が悪かったら消したりするんですから。少しは調べましたよ。あなたのこと。」
書類にまみれている棚から一冊のファイルをもって来た。ページを探るようなことはすることなく見つけた。
「能勢千尋さんは当時いた交番のエースと言われていた人です。家族の力でのし上がる八木幸助は嫌だったはずです。あなたは3人兄弟の末っ子として生まれた。子育ての愚痴を言える場所は彼女はもっていた。わかりますか?」
「えぇ、一ノ瀬という和食やです。時間外でも営業していた。客を大事にしていましたから。」
「八木家の中に行動を疑問視する人物はいなかったんですか?」
記者から質問をたくさん投げかけられているとは思わなかった。答えるべき質問だと感じていた。
「いました。人事を担当していた人物です。そこから繁栄して今も人事に知り合いがいます。」
「その人が貴方を挙げたんですね。刑事にするべきだと。」
「はい。人事にいた人は秘密を何時か明かす必要があると感じていたんです。その話を母と俺たちにすべて打ち明けてくれたんです。」
圧力の感じない言葉に簡単に答えてしまっている自分を恨むのだろうかと頭の隅で悩んでいる。答えのない問題だ。
「その人を通じて工藤昭を刑事にしたんですね。一ノ瀬さんは彼の手によって既に挙げられていたんですから。」
「刑事になって自分のかかわりのある事件と戦ってほしいと思っただけです。今のような感じにはなりたくなかったというのが本音ですよ。」
八木の乾いた乾ききった笑いが狭い部屋に響いた。




