政治家の鎧
「あんなに有名な画家が近くのレンタル収納を借りてるなんて聞いたことがないよ。普通はアトリエを持つと聞くけどね。此処までくると嘉門さんはすごいよ。」
自慢げに聞こえる声だった。アトリエを持たなかったのには少なからず理由があるように思えた。マスターの話を聞きながら店内を見ていると大切に額縁に入った絵を見つけた。
「これは嘉門さんがお世話になっているからって書いてくれたんだ。買って飾っている人も多くいるんだってさ。」
絵の表すかのように淡い色を使っていた。淡いぼやけたような二度と戻ってこないと確信をしているようでもあった。
「思い出の場所を描いたとか言っていたな。最後の家族写真を描いたとか言ってたけど、人が書かれていないんだ。可笑しいよね。」
警察に勤めていたのもあったのだろうか。近場に行ったとしか思えなかった。事件が起きたら急がないと思っているのだろう。
「此処って有名な遊園地なんですよね。」
「そうだと思う。場所の名前が書かれていないけどわかるんだよね。無念だよね。八木さんから話は聞いているから勝手に同情して何もできないんだから。」
彼の表情はカラフルに展開されている。此処にいれば愚痴を吐きたくなるだろう。聞いてくれるのがわかっているのだから。
「今、死刑を決まっているんですよ。父親である八木幸助は。」
「望んでいないことをして都合が悪くなって殺すなんて自分勝手としか言えないよ。同情もない。子供も利用して逃れようとしているんだから。全くばち当たりとしか思えないんだ。」
一ノ瀬の手にはこぶしを作り上げていた。それは理不尽だといえる世の中に何も言えないのだから。自分の都合を見ることしかできないのだから。こみあげてくるのはあふれ出す熱意ではないのかわからない。
「政治家が壊しているのが国であるという前提を立てることができるとする。そこに形だけの責任者なら逃げることしか考えられないんだろうね。情けない、ふがいない大人があふれかえっているんだろうね。」
「保証できるような人なんていないんですよね。うわべを並べて戦っている鎧はもろくなっているんですよね。壊れているのにも気づかないんですから。」
復帰など考えるのは甘い考え来るものだろう。すべてを知るわけではないことを知らないとならない。そして権力で動く人間と動かない人間がいることの差も。説明するというのは証拠をはっきり出してやることだ。論だけだと弱いこともわからないのだろうか。




