揚げたて・・・
八木は山辺親子が手をかけて育てた地域を見た。そこはさびれているようにしか見えなった。商店街もどこかシャッターが目立っていた。暇でもあるため、定食屋へと向かった。
「いらっしゃい。見ないようなスーツ姿だね。」
「警視庁捜査一課の八木といいます。山辺進と彰浩について教えてもらえませんか?メディアとかも取り上げないような感じの。」
大将はどこか怪訝そうな顔をしたがすぐに営業の顔へと切り替わった。朝飯前のことなのだろう。
「しゃべることなんてないよ。週刊誌が出まかせを信用するのかい。警察ってのは。」
「もし総理大臣が人殺しを指示していたという証拠があるのならそんな偉そうに語るのはどうですかね。こう言うのは宗教の信者と変わらないんですよ。権力がいくらあろうが此処は捨てられたんですよ。まだわからないんですか。」
彼の言葉の重さに驚いたのか後悔をにじませるような顔をしていた。被害者になれば威張り散らすだろう。それを権力者だからと言い訳はできないだろうから。
「すまない。さっきは言い過ぎた。噂では山辺は人殺しを以前していて警察に消してもらったと自慢げに言っていたのを聞いたんだ。息子は学校でいじめられていたんだよ。けど、学校も無視したらしい。同じ対処をしたんだ。そのころは自営業をしていたからね。ここまで来たらもういってられない。」
「俺は被害者でもあり加害者でもあるんですよ。けど、離婚していたから被害者だけになるけどいらない看板は捨てたいと思うのがいいと思うんですよ。未解決事件を作るのは自己満足のためなのですよ。」
八木の言葉に感銘を受けた大将は定食を作ってくれた。カウンターの端に座った。心地よい木の汚れを見た。
「解決できない事件もあるでしょうけど一番ひどいのは解決できる事件を証拠を消してまで押し通すことなんですよ。それは貴方をしないでしょうね。苦しみもわかっているから。」
「しませんよ。それをして何の得になるんです?損をするだけでしょう。事件を解決するのがいいんですよ。俺はこの事件がすんだらやめる予定なんですよ。」
「どうして?あなたみたいな熱心な人が・・・。」
「もともと刑事になるつもりなんてなかったんですよ。弁護士になりたかったのに登録まじかで警察に入れって言われて仕方なくですよ。」
彼の寂しそうな顔を見て同情するだけではだめだと思った。カウンターの板が彼らの距離を示しているようだった。過去が新しく塗り替えられることはないのだから。




