川より海か、ダムのほうがいいのか
工藤は八木が鑑識から出ても追わなかったのはきっとどこかで翻すときを待っているのだろう。一ノ瀬は
相変わらず捜査一課の監視としている。お荷物となった課を公にすることなんて許されない。それも税金で働いているのだから。
「山辺進の話がキチンと入っているので信憑性は格段にあがるでしょうね。息子の彰浩は雲隠れをしていても見つかりますよ。携帯電話を使わなくとも紐のように縛られているならかけてくるはずですから。」
「そうだろうな。一ノ瀬さんの見解としては主犯は言わなくてもわかると思っていて、2人を警察が追っている間に逃げようと思っているんじゃないか。」
手を出さずに逃げる。卑怯だろう。罪には問われることはないと思って胡坐をかいているはずだ。天狗のような鼻はいずれ誰かの手によってへし折ってやらないとわからないだろう。
「物は見つかっています。後はどう出るかを考えるべきですよ。」
「表舞台に立てない役者は裏に徹する。今はあくまでもスパイであるとしても心変わりがあるはずだ。そう時間はかからない。」
時計の針は気づいていてもいなくても進むのだ。時効が消えた今だからこそできることがあるのだ。計画性のある犯罪は少ない。衝動的なものが多いのであれば今回もそうだ。
「山辺彰浩をえさで釣る。知られてもかまわないところですればいい。」
彼の表情は決意に満ちたものだった。数分後、鑑識のドアを軽快とはいえぬリズムでノックした人間がいた。それはいつも来ている政治家であった。
「ここに八木圭太って子がいたりするって聞いたんだけど。今、いる?」
「いませんよ。あいつは自由人なので帰ってくるのが珍しいくらいなんです。だから、捜査一課の連中も興味を示さなかったんです。事件は解決しないですからね。」
工藤の腰の引けた言い方に政治家は仁王立ちでもするかのようにたっていた。
「そうか。八木圭太って人物は要注意人物ではなかったのか。何だ、山辺がいってたことと全然違うじゃないか。」
「山辺って言う人は八木に対してなんていっていたのですか?」
工藤の自然な流れに流されるのをどこか感じた。榛原は周りの鑑識に指示を出すフリをしながら見た。
「いやねぇ、八木圭太って言うのは八木幸助の息子で捜査一課に縛られない事件の解決をしているって。特に父親に関しては怒りを覚えているから必死になっているから注意しろって。」
「そうだったんですか。忙しい中そこまで奉公するような人なんですね。」
相手がいつかぼろを出すときが来たときに対応できるように後ろの榛原に静かに指示を送った。山辺彰浩の居場所がわかるかもしれないのだ。




