裁きの砂の塔
八木は黛に対する疑念を解決したいがために動いた。DNA鑑定で明らかであるがなぜこもったままでいるのかと感じた。世間の目は変わろうとしていることに気づいていないのだろうかと。いくら会社のためとか言っても限界はあるのだ。町は変わるのに時代が動かないはずがないのだ。繁華街に会った暴力団は二課によって分かったこともある。指揮しているのは黒幕であって捨て駒には敏感な対応をしている。調べるといっても何かつかんだわけじゃないので頭を冷やすために大衆食堂へと向かった。
「いらっしゃい。」
店員の声が響き渡った。昼時ということもあって騒がしさを感じた。壁の上にあるテレビの音すら聞こえないのだ。ほぼ満席であったが、相席ならすぐだといわれたので相席をすることになった。対面したのは以前エリア情報システムの話を聞いた店の店主だった。
「こんな所で会うとは思わなかったよ。」
「そうですね。今日はどうしてここに?」
「店さ、あの会社で成り立っていたんだ。どうもうわさではつぶれるとかそういう話が舞い込んできたからどうにかしないと思ってな。料理をもう一度勉強中ってなわけで。」
店員に八木は適当に注文をして彼に聞きだせることがあればと思った。
「倒れるって後ろには政治家と暴力団が張り付いていたんじゃなかったんですか?」
「きっと張り付いているけど、闇献金とかもらっていたらそっちのほうが大変だろ。だから、潰したふりして何とかやろうと考えているじゃないのか。つながっているとばれたら困るやつらだろうし。」
「まさに捨て駒がいるって言う感じですね。エリアより大きなIT企業ってあるんですか?」
店主は八木の質問に躊躇なく答えた。料理がきても尽きることがないのだ。箸を進めながら聞いた。
「エリアがほとんど総取りしていたらしいからな。裏で生きている会社を探っているんじゃないのか。それかうわさだけ立てて不安に陥らせようと思っていてもおかしくないぜ。政治家なんて金と権力さえあれば失言も違反も暴力も平謝りですむんだからよ。たまったもんじゃないぜ。やめないという決断のほうがおかしいときだってあるというのに・・・。」
「エリアは警察から情報を得ていたんですよ。まだ捨て駒は警視庁の中にいるとは思っているんですよ。だって八木幸助、猛が捕まって解決するような生ぬるいものじゃないですから。特に捜査一課は注意だと思ってますよ。」
「政治家も警察も名ばかりじゃないか。悪事をして罰を受けないのはどうかと思うぜ。民間人には厳しいくせに身内にゆるいって。俺達がまじめにやっているのを馬鹿にしているみたいじゃないか!」
店主はひときわ大きな声で言った。理不尽があるのは分かっているのだ。脅迫しようが法に違反しようが隠すなんて事はしてはならないのだ。裁きを受ける人間が一部にうじゃうじゃといるというのに・・・。




