アルバムの裏側
「事件を自殺だと断定した警察は許すことは出来ないのよ。これからする話は源太郎君が気持ち的にもやんでいる状態だと思って欲しいの。」
老婆の前提がとてもではないが聞きたくないといえないようだった。
アパートがここまで寂れる前の話だ。八木圭太と八木源太郎は母親を失い、家も失っていていたのを知って特例として格安で貸すことにしたのだ。それから数ヶ月たった頃だ。喧嘩をしているようだから仲介に入ってやってくれと連絡が入ったのだ。内容は知るべきだと思って2人を問いただした。荒れた部屋を見て。
「どうしてこんなことになったの?千尋さんがいなくなって喧嘩をしているだなんてみっともない。顔向けできないでしょう。」
「でも、たいした喧嘩じゃないですよ。」
「源太郎君があそこまで怒っているのは初めて見たわ。聞いてはいけないような話なの。」
圭太は少し乱れた服を調えた。語る態度を整えているのかと思ったがそうではなかったのだ。
「兄貴、心配しているようだから話すのがいいと思う。」
冷静な態度が今の2人には不自然に見えた。他人からあまり心配かけないように気遣っているというよりも関わらないで欲しいと要求しているようであった。
「お袋の事件、新聞とかマスコミは自殺だって言っているけど、おかしいんだ。お袋は刑事じゃないから必ず家に帰ってきた。その日も帰ってきて家の近くのビジネスホテルで待っている人がいるからあってくるといって出て行って帰ってこなかった。それを刑事は聞き込みに来なかったから。警察に犯人がいると思って前に行ってきた。」
「それでどうだったの?」
質問すると苦痛の表情を浮かべるのは兄である源太郎だけだった。圭太は近くの飲み物をそ知らぬ顔で飲んでいた。
「親父だった。八木幸助で予約されていた。俺は狙われることはないと思う。」
彼の進学先は決まっていたのだ。美大に入ることで自分は狙われることはないと思っているようだった。それならなぜあそこまで言い合っていたのだろうか。
「圭太が弁護士になりたいといっているからそこに漬け込んでくるように思ってならないんだ。お前、まだ事件について調べてるのかよ。やめてしまえよ。」
「兄貴だって割り切れないじゃないか。おじさんからの秘密を受け取ったことは知られてはいけないんだ。だったら刑事とかにならざる終えなくなったとしてもそれを逆手に使えば解決できるはずなんだ。だから終わってもない事件を追いかけるのは自分のためじゃない。」
源太郎にとって命を狙われると分かっていても調べている圭太が許せなかった。自殺行為をしていると思ってもない様子で部屋を歩き回った。
「親父はきっとお前を厄介者だと目を付けているはずだ。早く離れるべきだ!」
「俺はいやだね。どんな相手に目を付けられていてもやってやるからな。お袋のためだ。無念で死んでいった事件が多発しているのはおかしいからな。」
こんな会話を聞いてとめるつもりであったがとめることは出来なかった。どちらが間違えでどちらが正解かなんて分からなかった。これが何かの引き金になるとはそのときは思いもしなかった。




