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苦い飲み物

さびたアパートの前に立っていると不振がっている老婆がいた。声をかけてくるかと思ったがかけずにそそくさといなくなった。部屋に入ったのかと思ったらすぐに出てきた。

「なんのようですか?どちら様ですか?」

「警視庁捜査一課の一ノ瀬徳人といいます。八木圭太さんと源太郎さんについて教えて下さい。周りの人から聞いたら此処の大家さんが詳しいといっていたので・・・。」

「そうですか。なら長くなるので、入ってください。」

老婆の目は少し疑いをもっているようだった。けれど入れてくれる動作は何処か疑っていないようだった。リビングは質素であった。テレビも小型である。テーブルも大きなものではなかった。年金が少ないのだろう。別の収入も多くないのだろうか。

「本当に源太郎君と圭太君の事を知りたいの?以前来た人は圭太君を陥れるために来た事があるからよ。警察じゃないとかじゃないの。知っていることを教えてくれる?それで判断するから。」

向かいあうようにお茶が仲介しているが冷え切ってしまっているように感じた。窓が開いていないのにそこから隙間風が次々と通っているようだった。

「源太郎さんの画家のペンネームは嘉門っていうんです。テレビを見ながら絵を描いているんです。スランプが起きても個展には出すんですよ。」

「源太郎君の話に詳しいわね。それは調べても出てこないことがあったから良しとするわ。あの子たちも不振になってしまったことがあったからね。それで私に聞きたいことって?」

一ノ瀬はお茶を持ち上げた。見た目では感じられなかった温かさを感じることができた。一口飲んだ。甘味を感じた。

「圭太さんが自殺未遂をしたときにおかしいと思ったことってないですか?」

「そうね。多分よ。千尋さんの事件を追いかけていた時だったと思うの。よく2人で喧嘩をしたのよ。怒鳴り散らしてたわ。特に源太郎君よ。」

「そうには見えませんね。」

老婆は静かに動いている。動作のゆとりを感じた。怒鳴り散らしていたということはその時点で気が貼っていたのだろうか。

「いつもとは言えないけれど、ほぼ毎日だったのよ。アルバイトは同じところで働いていたからうまく見せようとしてもそこに行けば家族を思いだしたはずなのよ。内容が聞こえてきたときがあったの。」

「どんな内容でした?」

「おふくろの事件を握りつぶされるのを黙ってみてろというのかとか圭太の夢を潰すわけにはいかないとか。源太郎君の思いが聞こえてきたの。」

苦い思い出を苦い顔をしながら言った。

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