表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/188

分岐点

一ノ瀬は八木兄弟が暮らしていた地域に行ってみた。そこは住宅街から少し離れているように思った。とりあえず手あたり次第というやり方だがやってみた。目に入った家のインターホンを押した。

「ハイ。誰ですか?」

「警視庁捜査一課の一ノ瀬徳人といいます。八木さんについて教えていただけませんか?」

「誰の事?八木でも猛や幸助の事なら話したくないのよ。不吉だから。」

中年の女性は不愉快なものを見るかのように言った。一ノ瀬が付け足すと喜んで出てきた。

「圭太君と源太郎君の事はあまり詳しくないのよ。けど、この辺の人ってみんなそうよ。千尋が離婚届け出してたことも知らなかったのだから。それを知ったとたんに関係ない人達を怒鳴り散らしたのよ。自分の恥さらしをしたのよ。だからね。圭太君と源太郎君だっていえば心よく話してくれるわよ。」

「そうですか。有難うございます。」

彼は腰を折った。感謝であった。怒鳴り散らしたのは葬式の時であろう。そこで遺言が出てきたのだ。本当は気づいていたのを無視していたのではと思った。彼が離れようとすると彼女が呼んだ。

「そうだ。そうだ。忘れてたけど、近くのアパートの大家さんに行ってみたら。あの人は2人が幼い頃から知っているはずだから。千尋が殺されてから2人でそのアパートで暮らしていたのよ。だから誰よりも知ってるはずだわ。」

「思い出してくれてありがとうございます。」

「貴方みたいな刑事は圭太君と一緒に動いていてそうだもの。近くにいてもわからないことってあるじゃない。それでもかまわないと思わなかったのね。あの子たちも此処までならなかったの。あの事件さえなければね。」

彼女の口から出たのは後悔であった。同情の域を超えてしまっているのかもしれない。2人はこの地域に見守られてきたのだ。

「すいませんね。突然話を聞いてくれなんて言ったのに答えてくれるとは思いませんでした。少し気になったんですよ。圭太さんの自殺未遂です。」

「私も聞いただけだから詳しくないけどおかしかったくらいはわかるのよ。その日は圭太君、アルバイトに行ってなかったって。何時も休まず2人一緒の場所で働いていたの。その日だけだったの。・・・それと源太郎君も大学の講義を事情を言って抜け出しているみたいなの。それだけしか知らないからどうとは言えないけどね。それじゃあ大家さんに聞いて。」

「ハイ。それだけでもわかりそうです。」

彼女は笑顔を返した。それほどのものなのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ