データの居場所
鑑識は騒がしさをいつもより増していた。DNA鑑定の結果が示されたからだ。人頼みより自分たちでするほうが真実が見抜けると思っている。
「榛原はいないのか。」
聞き覚えのある声がいつもよりどこか沈んでいた。急いで呼びかける彼のほうへと向かった。八木の立ち姿にはどこか覇気が感じられなかった。
「八木さん、大変ですよ。」
「結果が出たのか。そうか。結果も見るけどこれを見せてくれないか。」
八木は大切そうにかばんからSDカードを出した。榛原はそれを受け取るとすぐに解析にかけた。
「一致しているんですよ。どこか出来上がっているレトルトを暖めていた気がしてならないんですよ。」
「まぁ、こいつも黒幕にとっては捨て駒だからな。ホシがつかまるのを恋々と待っているだけだ。上から押さえつけるのが正義だとして。」
廊下のほうから走る音が響いた。いつ来るからわからないからずっと待っていたのだろう。工藤は八木に駆け寄った。
「お前に頼まれていたこと、調べてみたらやっぱりいつの間にか国の土地になってしまっている。一ノ瀬さんも同様だ。」
「これで黒幕も動くだろうな。厄介なことに手を出しているのは事実だからな。」
榛原のパソコンはフリーズしたかのように止まっていた。SDカードに入っていた内容が汚職であると示しているようなものだからだろう。
「SDに入っていたのは八木幸助とエリア情報システムとしての賄賂のやり取りです。いったいどこにあったんですか?」
「絵の裏側にあったんだ。『デスの悪魔』に少し違和感を覚えて昨日ギャラリーで見たんだ。」
「それにしても手の込んだ工作をしていたことになるな。阿部登はどうやって抜き取ったんだ。」
阿部登は内部告発したとして会社を辞め指されている。秘書になってもいないのだからデータがないだろう。誰が・・・。
「宇佐美史郎とかかわりがあったとしたらどうなりますか?」
「そうか。彼はもともと自分から内部告発するつもりだったから週刊誌の記者と連絡を取り合っていたとしてもおかしくないのだ。それが順番が狂ってしまって出せなくなったとしたら・・・。」
会社はどこからか情報を得ていたことになる。エリア情報システムは阿部が厄介だと思うはずだ。やめさせるべきだと考えた。週刊誌の記者が同じとは思わずに作って阿部をやめさせたとしたら・・・。
「計画性のあるクビだったんだ。邪魔ものを排除するために選んだ道だ。週刊誌に縛られる覚悟でしていたのだろう。」
宇佐美なら考えられるのだ。疑っていたから。データを抜き取るのもうまいはずだから。真相はまだ途中だ。




