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隠れヒント

八木はギャラリーへと来ていた。誰かの個展があるからというものではないがよく来るのでお得意様みたいな扱いをしてくれる。管理人は老人というよりかは少し若いという印象を持つ人だ。

「八木さん。きてくれたんですね。」

「えぇ。事件に関わりがある作品が此処にあるのがわかりましてね。パクリといわれた絵をもってきてください。」

「わかりました。では、応接室で待っていてください。作品の名は大声で言うのはよろしくないですからね。」

圭太は頷いて応接室へ向かうために廊下を歩いた。絵は飾りのように見るのではない。何故書かれたかを考えてみるのもいいのだ。多額の金を出して偉そうに見せしめにするために書かれたわけではないのだから。応接室へ行くと管理人の奥さんがお茶を出してくれた。

「主人が最初くだらないことをしていると反対している時期があったんですよ。でも、今じゃ警察のお役に立てているので良しとしているんです。お兄さんは画家でしょう?」

「そうですよ。嘉門って言って頼まれれば出すといっているんですよ。大きさなんて絵には関係ないことですから。遠くでなきゃ見られないものだってあるのは事実ですからね。」

「貴方は優しい人です。画家を理解できない人は数多くいます。金にもならないといわれてやめる人も多いんです。お母さんが亡くなって立ち上がるのに苦労したのではないですか?」

熱いお茶をゆっくり飲んだ。体まで温かくなっていくのを感じた。画家に理解を示さないのではないだろう。一握りしかつかめない世界だからやめると決断させるのだろう。

「苦労だなんて・・・。末っ子で全く気付かなかったんですよ。兄貴がだいぶん苦労したと思いますよ。苦しい関係でしたからね。」

「そうよね。お父さんと次男の子は一緒に生活したとは思わなかったでしょう。同じ扱いを受けなくて良かったわね。」

奥さんは何処か同情のこもった言葉を言った。忘れていたのかもしれない。画家になる夢を追いかける兄貴を落胆させてはならないと思っていたから。

「こら。八木さんは刑事としてきてるんだ。邪魔してはならないだろう。」

「かまいませんよ。事件に追われて忘れかけることだって多いんですから。それに俺たちの事を詳しく知っている人も少なくなってきてますからね。」

机には大きな額縁で飾られた絵がおかれた。此処に何が隠されているのだろうか。隠さなければ殺されるようなものだろうか。

「私は邪魔なようなので・・・。」

「いればいいですよ。大した事はしないですから。」

その言葉に彼女ははにかんだ笑顔でソファに座った。

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