過去の伝言
八木はでかいだけが取り柄の建物についた。宇佐美史郎が残したものは事件に限りなく近づいた。鑑識へと向かうと榛原がコーヒーカップを持ったまま迎えた。
「調べてくれ。急ぎだ。」
「了解です。八木さんたちの急ぎは本当に急ぎますよ。出してください。」
鞄の中からビニールに入ったものが出てきた。榛原は戸惑うことはなかった。誰かに頼んでつかんだものであるのをわかっているから。
「誰に頼んだんですか?」
「宇佐美史郎のいた週刊誌の社長だ。黛に近づく坑口がないから作ってもらったんだ。アクセサリーはどうだ?」
「そうです。アクセサリーにシリアルナンバーが刻まれていたので店に行ったら拒まれたんですけど、押し通したらいけるものですね。DNA鑑定もするので時間がかかるのでその間見といてください。」
物々交換のようにビニールとリストをもらった。榛原は急ぎ足で別室へといった。新人の鑑識が高笑いとは言わないが笑っていた。八木はソファに座りリストを見た。ナンバーがわからないと探すことはできないだろうと思ったが紙の隅に小さく書かれていた。そのナンバーはまさしくとしか言えなかった。
「榛原さん。本当に尊敬しているんですよ。いくら反感のためであっても事件を解決してきた事実は消えないって言ってました。」
「俺はな、最初鑑識をバカにする感覚で口出しをしていたんだ。それで協力者が此処にいなくなれば、他に頼むしかなる。足が此処に残らないと思ってな。」
彼は何処からか出てくる本音を止めることはできなかった。週刊誌の社長に触発されたのだろうか。政治家に口の言いなりになるしかないのかと思ってしまうのだ。暴君が渦巻いているのに・・・。
「関係なかったんですよ。中は見えなくても外が綺麗であったから惚れたんだと思うんです。最初はそれでも八木さんは飽きられることなく指導していたでしょ。何処かで仲間を探していたんですよ。過去と今は違うんですから。」
違うといって通る事は限られているのだ。中がけがれていて外面は綺麗なフリをしているだけとではわけが違うのだ。驕る平家久しからず、よく言ったものだ。榛原は白衣が少し乱れているのすら興味がないように走ってきた。
「八木さん、待ってくださいね。リストと思った通りでしょう。その店は男向けの商品しか取り扱っていない高級店だということで有名で雑誌にも何度も載ったのも黛が融通を聞かせたとかオーナーが言ってたのを録音してあるので聞いてください。」
「仕事が早いと助かるよ。」
榛原や鑑識のものは照れ臭そうにはにかんだ。




