色に染まる
圭太はきらびやかとは程遠いネオンを感じた。ビル街で明かりでともされるのは闇ではなくて道だけだ。マンションにつくと重い空気を感じることなく入っていった。インターホンを鳴らすことはせずに合鍵で開けた。
「兄貴、いるか?」
「圭太。久しぶりだな。絵が届いたんだ。まだ、じっくりとは見ていないだ。ビール飲みながらするか?」
「仕事だっていうのにまぁいいか。」
リビングに入るとキャンパスが展示会のように置かれていた。あれているようでないため、安心した。個展が済んでからなので落ち着いてやれると思ったのだ。
「どうだ?個展成功したか?」
「したよ。ほとんど売れた。大半を下げて貰ってね。次の個展まで時間があるんだ。ギャラリーはお得意様と同じようなものだよ。」
缶ビールのはじけるような音が解放へと導くのだ。テーブルに2枚の絵を置いた。出されると区別がつかないのだ。似すぎていてわからない。
「これじゃあ俺でもわからないな。画家が同じように書いたとしても癖は出てくるものだからな。後は年代くらいかな。」
細かいところまで再現されてあった。それが実力なのだろう。『デスの悪魔』だけは何処か凸凹している感じが見受けられた。開けたところで手触りが再現されているわけではないが何かのヒントが落ちていた。
「鏡東映が書く絵じゃない。村沢巧が2枚とも書いている。少し変えているな。色を微妙に違う。これは近くで見ないとわからない。」
「『デスの悪魔』が事件解決へとつながるかもしれないということか。」
「そうだな。村沢は色に敏感だったと聞いているから出来ることだ。鏡改め阿部登は普通だったからな。特殊な手法でしかこれは出せないよ。」
行く価値のあるギャラリーへ再び行くことになりそうだ。テレビが騒音のように鳴り響いていた。流れるのは不正を嘘でかき消そうとする政治家の姿だ。人の批判と一体悪事がどうつながるのだろうか。調べるのは甘やかした態度だけだ。官僚もその渦に飲み込まれてしまったのだろう。個人のファイルまで調べずにしてなかったなどという戯言を披露しているのだ。見かけを大切にしているのだ。世界は壊れるだろう。自分しか見れていないものばかりがたまっているのだ。ヤンキーとかが集団行動でしか力を発揮できないのと同じなのだ。その地位におぼれて沈んでも助けに来ないだろう。その人の中身ではなく親とかの力であるのはわかり切っていることであるから。メンツだけが輝いているのだ。けがれたものだけが見えるのだろう。




