依頼
警視庁を出ると電車に乗ってネット喫茶へと向かった。一刻も早く離れたかったということが大きかった。一ノ瀬との会話はもうしたくないと思った。警視庁へ行きたくなくてもいずれ行かないとならないことも百も承知ではある。真新しいビルに行き手続きをして個室に入った。電話をした。
「もしもし。」
「こちらは株式会社・・・。とかいうんでしたっけ?八木さん。」
「社長さんが出られるのはありがたいことです。そのほうがやりやすいことなんです。他に知られると事件どころじゃなくなるんでね。」
電話口で少し心配そうな声を出していた。社長は何度も来る八木について調べたのだ。誰もがうらやむ暮らしなどしていないのだと。被害者でもある事をひた隠しにして生きていくしかなかっただろう。
「エリア情報システム社長の黛清って知ってますか?」
「知ってますよ。同業者じゃないですけどね。裏で動いている奴ほど此処に届くんですよ。変わったところなんですよ。暴力団と政治家が組み合わさっているのは手を付けにくいですからね。その黛っていう屑とどうしろっていうんですか?」
「あって欲しいんです。DNAを取るために髪の毛とかをどうにかしないと無理なんです。警察に会うなんてことをしないんです。手が出せないですから力を貸してください。」
社長はそこまで深く悩むことはなかった。事件解決することに注ぐ熱意を感じ取ってきたから。
「いいですよ。企画で利用すればいいんですよ。記事にもして本当の事を隠して信ぴょう性を高めることは良いだましになりますから。」
「有難うございます。ずっと答え合わせをしているのに答えがない状態なんですよ。誰も貸してなんてくれないみたいにね。」
黛をひっかけるのは良いだろう。世の中は異論と持論を混ぜ合わせたような世界のようだ。警察としての威厳をしているのだ。
「貴方も息抜きをうまくしてくださいね。貴方みたいな人がいなくてしまうとこの世は壊れると思うんです。」
「持論ですか?社長さん。もともと警察は権力に屈しるような組織なんです。此処までたっているのが自分でも驚きですよ。けど、壊れはしないですよ。よくしてくれている仲間がいます。闘いを嫌うのはそうだと思ったんです。」
圭太の頭の中に浮かんだのは警視庁で言い放った言葉の事であった。胸が轟いているのを感じているのだ。沈黙が続くと社長が声をかけた。
「貴方は早まらないほうがいいですよ。もったいない。」
「わかってますよ。単純な世じゃないですし・・・。」




